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連載小説 マリアと呼ばれた子ども 第23回

「では、ライアーを製作する木の精霊と繋がる瞑想中に、どんな映像が見えたり何を感じられたか、お一人ずつ、シェアして行きましょうね。」
参加者は幸子に促されて、順番にシェアして行った。
僕の番が回って来た。僕は先程メモに認めた、ケヤキの大木が切り倒されるまで過ごしてた、森の中での一生について、見えたことをシェアした。森の奥深いところで生を受けたケヤキの木は、大地と水と空気、陽の光に育まれた。ケヤキの木は切り倒されるその日まで、森の一部として、他の木々や小鳥たち、虫たちといった他の生命と共生していたのだ。
僕が受け取ったことをシェアし終わると、幸子はもちろん、参加者からも拍手が起こった。
「ありがとうございます。ケヤキの木の一生について、映像でたくさん情報を受け取っておられたのですね。では、マリアちゃん、お願いします。」
マリアが訥々と、シェアを始めた。
マリアはね、幸子さんがタオライアーを弾く前から、目を瞑らなくてもケヤキの木の精霊さんが見えました。今でも見ようと思うと見えるんですが、見ないようにしています。
マリアはね、ケヤキの木の精霊さんに、聞いたの。森の奥深くで静かに暮らしていて、毎日小鳥さんや虫さんや動物たちと楽しく暮らしながら大きく大きく育っていたのに、突然切り倒されて。。。それから小さく小さくバラバラに切られて、群馬県の山奥からこんなに遠くの海側まで運ばれて、心細くないですかって。
そしたら、木の精霊さんはこう言ったの。
それは、突然切り倒された時はビックリしたよ。毎日楽しく会話して遊んでいた、小鳥や虫や動物と離されるなんて思いも寄らなかったし。でもね、小鳥や虫や動物とは会おうと思えば、いつでも会えるんだよ。っていうか、今でも繋がっているんだ。生きているものはみんな、いつでもどこでも繋がっているんだよ。だから、マリアちゃん、安心してね。
マリアちゃんが言うように、群馬県の森の奥からある日突然切り出されて、小さく小さく切られて、こんなに遠くの海側まで運ばれて来たけど、マリアちゃんたち親子に喜んで受け入れてもらえて、幸せなんだよ。
これからマリアちゃんたちが心を込めて手を掛けて、タオライアーとして完成してくれたら、今度はいろんなところに旅をして、いろんな人たちと響き合って楽しく暮らして行けるから。その日が来ると思うと、嬉しくて嬉しくて。今から待ち遠しいくらいなんだ。
木の精霊さんとこんな風にお話できて、マリアは安心したの。ケヤキの木は森の奥から切り出されて、小鳥や虫や動物と別れて、こんなに遠くの海側まで運ばれて来たけど、寂しくないんだ。いつでもどこでも繋がっているから。
幸子さん、マリアは心を込めてタオライアーに仕上げるので、これからよろしくお願いします。タオライアーと一緒にいろんなところに旅をして、いろんな人たちに会えて、響き合えたらいいな、その日が来るのが今から楽しみです。
マリアのシェアが終わった。
幸子も僕も参加者も一瞬、凍りついたように静まり返っていたが、突然割れるような拍手が起こった。
幸子もミッチーも僕もマリアに歩み寄って肩を抱いた。

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