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押入れはお仕置きにならない


小学校一、二年の頃だっただろうか。
とても可愛がっていたぬいぐるみがあった。何の変哲もない茶色い犬のぬいぐるみだった。
友達と遊ぶ時はリカちゃん人形を取り出してきても、ひとりになるとその犬のぬいぐるみをおもちゃ箱から出してきて抱っこしていた気がする。

子供のころおもちゃ箱は押入れの中にあった。上の段には布団があり、下の段にはいくつかのおもちゃ箱が置かれていた。そこの中からなんだかんだ持ちだして遊んでいた。
姉からのお下がりのおもちゃや、弟のおもちゃ。ごちゃごちゃと入った大きな箱が押入れの中に置かれていた。

いけない事をしてこっぴどく叱られた時、お仕置きとして「押入れに入っていなさい!」というのが昔の親の常套句だったように思う。

我が家は押入れの中におもちゃ箱があった。お仕置きがお仕置きにならない。やんちゃ坊主の弟は自ら進んで押入れに入っていた。ただ囲まれていたいのだ。
外に出してきたいくつかのおもちゃでは無く、真っ暗で遊ぶことが思うようにできなくても、ただおもちゃというものに囲まれる瞬間は、わくわくするものだ。

お仕置き最高!

慣れてしまえば押入れの暗がりなど怖くない。
かくれんぼでは、わたしも先ずは押入れだ。そこにしまわれているおもちゃと自分だけの空間は、ある意味特別だった。

わたしはお母さんが困らないようにいつも気を配っていたお姉さんだったから、親に押入れに入れられた事は無い。本当は暗がりの中で、黙ってぬいぐるみを抱っこしていたかった時が何度もあった。ボロになっても針と糸を使って自分で繕った。
大きくなっていく何処で、ぼろぼろになり過ぎてさよならしたぬいぐるみだった。

昔々大好きだった犬のぬいぐるみに、かなり似たもが売られていた。見つけた時は、ちょっと泣きそうになった。これは電池式でとことこ歩くおもちゃだったが、色や顔の感じがそっくり。
なんだか嬉しくなって……

買ってしまった(笑)

あんまり買いたいものって無いけれど、釘付けだった。
もしかしたら、また来てくれたのかな(*´ー`*)

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