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天翔ける馬の轟き



神話部お題 【馬】

お懐かしゅうございます。
いつぞやの星祭り以来でございましょうか。
ここでまたひとつ、おばばのよもやま話にお付き合いくださいまし。

それはそれは古い時代の事にございます。
突然夜空に雷鳴が響き渡りまして、川辺にいらした賀茂玉依比売命の手元に、矢が落ちてきなさった。何やら不思議な力を感じたのでございましょう、玉依比売命は矢を持ち帰り祀ったところ、これがなんと腹に御子を授かりましたのじゃ。
ええ、そりゃあなた、夜伽無しの懐妊ですので上へ下への大騒ぎ。玉依比売命は正真正銘のお清。おばばと同じで……

さてさて生まれた御子は御子神として大切に育てられましたのじゃ。
ところが時が流れて元服の折、一族の長である賀茂建角身命に向かって御子はこう仰った。
「我が父は天津神である」
そしてみるみるうちに天に昇っておしまいになりましたのじゃ。
それはそれは嘆き悲しんだ玉依比売命でございましたが、ある夜夢枕に御子が現れ「天羽衣をつくり、火を焚いて鉾を捧げ、走り馬を用意してください。葵楓のかずらを装い、祭を行って私のことを待っていてください」とお告げになったそうな。
そこでさっそく祭を行ったところ、立派な成人の姿となった御子が轟く雷鳴と共に神馬を駆り、賀茂山に降臨されたとの由。賀茂別雷大神にございます。

これが上賀茂神社の起源であると伝えられておりまして、それが故に、上賀茂神社においては馬は神様の乗り物として大切にされておりますのじゃ。

長々とお話しして参りましたが、あと暫くお付き合いくだされ。
実はこの上賀茂神社では毎年賀茂競馬くらべうまが行われておりますのじゃ。
それはそれはおばばは毎年楽しみにしておりましてのう。
舞楽装束を付けた乗尻(騎手)がふたり。右方と左方が一対となって馬を走らせ速さを競うのでございます。それはそれは勇ましい姿ですぞ。
これは五穀豊穣を祈願して行われると、言われておりますが…… ここからは、良いですか、余談ですぞ。
小耳に挟んだところによると、何やらノミ賭けがあるとか無いとか……🤐🤐
まさかねぇ、そんな……
え、馬の名ですって?

右方 イズモスサノオー
左方 アカネヌカタオー

いえいえまさかそんな。おばばは何ひとつ知りませんぞ。懐はほれ、このように寒うございます。
きっとマキバオーの夢でも見たのかと……

相も変わらず年寄りは余計な口が滑るものでございますなぁ。

【おしまい】


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇

語り物の掌編もどき。
おばばは最近認知に傷が(笑)
この競馬、元は宮中行事だったとか。二頭で競われるようです。

*十市皇女の母額田王は、正しくはぬかたのおおきみもしくはぬかたのきみと読みます。また、額田部姫王とする場合もあります。

#mymyth202311 #神話部 #ストーリア  

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