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『僕の好きなおじさん』の秘密の楽しみ

 先日、ありがたくお声を掛けて頂いた中間小説アンソロジー『爆弾低気圧』vol.3に寄稿した『僕の好きなおじさん』には実は秘密があります。 

 といっても勿論たいした秘密ではなく、おじさんの本名は橘朔太郎です。ベタに有名詩人の萩原朔太郎が由来です。字面がお金持ちのボンボンぽいからよさげと思ったからです。
 が、実は今回、案はいろいろ浮かぶのに筆が進まず、ピンチのあまり試しに好きな詩からイメージを膨らましてそれをストーリーの種にしてみようと、手元に好き詩を置いて長時間眺めておりました。それが萩原朔太郎の「殺人事件」(『月に吠える』)でした。(*ご興味ある方は末尾をご覧ください)

 できあがった「僕の好きなおじさん」は、一応「探偵」物?な作風になり、ストーリーや設定にも「探偵」が登場するので、まるっきり関係がないわけではないのですが、この詩のイメージとはほぼ別世界な作品になりました。
 詩を参考にしたし、そもそも大好きな詩人なので、図々しくお名前をお借りしました。
 尚、つい魔が差し、おじさんの台詞に、ベタに中原中也の超有名な詩のフレーズも混ぜ込んでみました。
分かったところでなんのこっちゃな投稿で、本当すみません。

が、さておきなによりとにかく大事なことは、
『爆弾低気圧』vol.3は当方の作品はさておき、他の執筆陣の作品がめちゃ面白いので、ぜひお手にとってお読みいただけますと幸いです。

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どうぞよろしくお願い申し上げます。

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朔太郎のこの詩はとても好きなので、ご参考に紹介いたします。


「殺人事件」萩原朔太郎(「月に吠える」より)

とほい空でぴすとるが鳴る。
またぴすとるが鳴る。
ああ私の探偵は玻璃の衣裳をきて、
こひびとの窓からしのびこむ、
床は晶玉、
ゆびとゆびとのあひだから、
まつさをの血がながれてゐる、
かなしい女の屍体のうへで、
つめたいきりぎりすが鳴いてゐる。

しもつき上旬はじめのある朝、
探偵は玻璃の衣裳をきて、
街の十字巷路よつつじを曲つた。
十字巷路に秋のふんすゐ、
はやひとり探偵はうれひをかんず。

みよ、遠いさびしい大理石の歩道を、
曲者くせものはいつさんにすべつてゆく。


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