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芸大入試の対策、こんなことやってた。〜本質の基礎〜

この間、東京芸術大学の学生がテレビにたくさん出てましたね。さんまさんのやつ。


芸術大学がテレビにあのような形で紹介されるくらいですから、やはり皆さん興味があるのでしょうか。

かく言う私も、仕事終わりの眠たい目をこすりながらあの番組を見ていました。懐かしいなぁ、なんて。


そんな私ですが、東京芸術大学のような超一流の大学には進学しておりませんが、一応芸術大学には進学しました。

今回は、芸術大学へ進学しようと思ったきかっけと、高校時代で学んだことをお話をしたいと思います。



進学のきっかけ

芸術大学を目指そうと思ったのは、将来なりたい職業がデザイナーだったからです。芸術家になりたかったわけではなく、デザイナーになりたくて芸術大学に進学しようと考えていました。

小さい頃から絵を描くのが好きで、学校の休み時間はずっと絵を描いていました。将来の夢と聞かれれば、その時々で変わってはいたものの、絵や創造に関わるような職業ばかり言っていた覚えがあります。アニメーターとか、ファッションデザイナーとか。


でも、自分にはプロになれるような画力がありませんでした。絵が上手いわけではなくて、いつも周りには、自分よりも才能のある人たちがいました。

アーティストになることは早々に諦めてしまって、それでも芸術系の仕事には就きたくて、そこでたどり着いたのが、デザインだったのです。

そして、デザイナーになるには、やはり早い段階の学習が必要だと感じ、それでも遅めのスタートで、高校1年生の秋から本格的に進路を芸術大学に絞りました。



いつから対策を始めたか

芸術大学に進学したい、と両親に話したのは高校一年生の夏頃。そして、行動を起こしたのはその年の秋でした。両親は割と、「お前の好きなようにしろ」というタイプだったので、言い出せばすぐに行動に起こせた環境でした。今思ってもありがたい限りです。



週一、画塾へ通い始める

芸術大学の入試は実技です。私が受けたい、受けた大学の入試にはデッサンと色彩構成、そして立体がありました。

当然入試ですから、対策をしなくてはなりません。でも、私が通っていた高校は普通の進学校。それも、東京大学や京都大学への進学を目指すような人たちが多い学校だったため、美術始め、音楽などの教育には疎い学校でした。


そこで、同じく芸術大学を目指す同級生に勧められたのが画塾でした。

画塾、と言っていますが、一般的には美術予備校でしょうか。美術系の大学に進学するための実技の対策ができる学校です。



画塾で学んだこと① ものの“本質”を捉える訓練

最初の1〜2年くらいは石膏デッサンと色彩構成の基礎をしていました。

私はデザイン学科志望だったので、入試では静物デッサンが課題として出されるのですが、まずは構図だけ考えられる、そして、形を純粋に観察できる石膏デッサンを徹底的に行いました。

石膏デッサンは全ての基本です。これは誇張でもなんでもなく、石膏像には本質がシンプルに存在しています。


石膏像は全て真っ白です。無駄な着色がありません。そして、鉄や木のように過度な特徴的質感もありません。これは、光と影と陰を観察しやすく、物の形と関係性を理解するのにはとてもシンプルで良い教材なのです。

まずは石膏デッサンで、物の形を正確に捉え、そして、それを色と形で紙に落とし込む訓練をしました。



画塾で学んだこと② 色の常識を身につける

同時に進めていたのは、色彩感覚の訓練です。色のバランスや美しい組み合わせとは何か、というのを、これまた色と形だけで表現します。

私がはじめにやった課題は、こんな感じでした。

①正方形を3×5=15で並べたマスをかく。

②正方形を白黒の濃淡を使い分けて、美しく構成する。
※必ず真っ白なマスと真っ黒なマスを一つずつ入れること

③その濃淡に合わせて色彩で「春夏秋冬」の中から2つ季節を選び、その季節を表現する。

というもの。(実際に枠を用意しますので、皆さんもやってみてください。)

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ここで学んだことは、一般的な色のイメージを学ぶことと、一体感、そして、美しい色の組み合わせでした。

最初の白黒の濃淡だけで正方形を塗り分けるのは、3×5で構成された長方形を、「きちんと長方形として一体感を持たせて表現できるか」ということが重要でした。

一つの画面として、一部が欠けているように見えたり、また、一部分だけ浮いて見えたりしてはいけません。15マスが一つのものとして見えるようにすること、その感覚を身につけることをしました。


そして、春夏秋冬を色で表現するというステップでは、春夏秋冬「らしさ」をきちんと感覚としてつかめているのか、ということを見られました。要するに、自分の感覚と一般的な色の感覚があっているのか、そして、それを美しく表現できるのか、ということです。

私はこの時、秋と冬を選択しましたが、冬を表現するのに、青と黄色しか使いませんでした。冬の夜空の澄んだ感じが好きだから、という理由です。

しかし、それは私の感覚でしかなく、一般的に冬とは、冷たい青色や、木枯らしをイメージさせるような青みがかった茶色などが該当するかと思います。


こういった一般的に共感できる色彩感覚を、このような課題を通じて研ぎ澄ませていきました。



画塾で学んだこと③ ものそれぞれのらしさを表現する

石膏デッサンにだいぶ慣れ始めたら、受験前の1年半くらい前から静物デッサンをはじめました。静物デッサンでは、石膏デッサンの構図光・影・陰以外にも構成の組み方を考えなくてはなりません。

石膏デッサンは、モチーフはたったの一つです。白い石膏像をどのように美しく画面に収めるのか、そこに注力すればいいだけです。しかし、静物デッサンは、モチーフが複数個あります。

構成は、その複数個あるモチーフを美しく自然に配置することです。モチーフ同士の関係性、そして画面の中に美しく収めることを考えなければなりませんでした。

この、「自然に」というのがミソです。モチーフ同士が理路整然と並んでいると、かえって不自然で違和感を感じます。モチーフ同士が平行に並んでいたり、画面内で正三角形のような配置になっていたり、そうした、人為的な配置は不自然で美しくない、とのことです。


そして、題字にある「それぞれのらしさ」を表現することも学びました。


私が今でも印象的に覚えているのは、モチーフに軍手が出されたことでした。

軍手は、白い作業用の手袋です。軍手のらしさとは、なんでしょうか?他の、普通の防寒具の手袋とは何が違うのでしょう?

もし手元に軍手をお持ちなら、一度よく観察してみてください。防寒具の手袋とは違って、少し硬めの意図が、細かく細かく三つ編みのように編まれています。そして、それが溝となって、規則正しく並んでいます。

指の付け根はどうでしょうか。そして、はめる口の部分は?そうした細かいところにたくさんの「そのものらしさ」を象徴する要素が織り込まれています。

そのものらしさを捉えて、色と形で表現する。その難しさに大変苦戦しました。



画塾で学んだこと④ 中心を生かすための優先順位の考え方

静物デッサン、そして、モチーフを利用した色彩構成も制作しました。モチーフを利用した色彩構成とは、これも静物デッサンと同じなのですが、レモンと紙皿と紙コップなど、複数のモチーフを画面上に構成して色彩構成します。デザイン画を描くようなイメージです。


ここでは、上記の「モチーフらしさ」を表現することに加えて、中心を生かす構成の仕方を学びました。

静物デッサンでももちろんこの考え方をします。複数あるモチーフの中で、そして、画面の中での中心とはどこなのか?まずは見せたいモチーフを画面の中心に配置する。そしてそれを生かすために周りの要素を組み合わせる。

画面の中心とは物理的な中心ではなく、一番に目が行く場所、という意味です。大体左上、右上、左下とかになります。一概には言えませんが。


これはもろにデザインの考え方です。チラシを制作するとき、たくさんの情報がありますが、その中でも何を一番に伝えたいのか、ということをまず考えます。そして、その伝えたいことを正確に、一番印象に残るように、他の情報の配置を考えるのです。情報の主張の仕方や、レイアウト、色など。

優先順位をつけることはとても大切です。一つのテーマ、目的に絞ることで、全ての要素が活きてくるのです。



まとめ〜本質を捉える基礎力の向上〜

画塾の先生は、常に「本質とは何か」と言っていました。

それは、モチーフの形、硬さ、空間などの「物の存在の本質」と、何がしたいのか、何のためにしているのか、という本質的な目的思考の両方のことを指していたのだろうと思います。

物を見る目、物を考える力をここではたくさん学びました。

実技試験では、もちろん技術が必要です。しかし、実技試験を突破するための対策ではなく、もっと先の、本質を見る力、というのを意識して学ぶことが大切です。先を見据えた学習をしましょう。



筆者紹介

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関西圏内でデザイナー/カメラマンとして週末フリーランスをする23歳、女。スターバックスのコーヒーを飲みながらスターバックスで仕事をするのが好き。

もちろん高校時代は勉強もしてました。センター試験7割くらい?だった記憶がなんとなく。

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