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滝に魅せられた話

「滝行って楽しそうじゃない?」
「いいねぇ!」
「どっか近くにないか探してみよ!」

友人と二人、軽いノリで探すと、高尾山の近くに滝行ができる場所があることがわかった。

「こことかどう? 滝行参加できるみたいよ!」
「いいねぇ!」

それはある団体が定期的にやっているものらしく、
詳しく調べずにただ滝行ができる! というだけで決めた。
メールで問い合わせたところ、先に申込書を郵送かデータで送って欲しいと言われた。
その後も何度かメールを交わしていたのに、前日までに申し込めばいいと勝手に思い込み、その後届いていた、

「この日までに申込書を送って下さい」

のメールに気づかずに滝行の前日を迎えていた。

「うわぁぁぁぁ、なんで私気づかんかったんやろう。やばいやばい。とっくに期限過ぎてるけど、とりあえず今日申込書写メで撮って送らな!!」

友達は多分すでに申し込んでるし、最悪、私滝行できなくても、行くって言ったし、カメラマンとしてついて行こう……。

半分諦めながら、藁にもすがる思いで、セブンイレブンにコピーしに行き、
その場で写メを送信した。

「どうか、誰か見てくれますように……!」

その思いが届いたのか、1時間ほど携帯を何度か見ていると、
「明日、お待ちしております。寒いので暖かくしてお越しください」
と優しい返事が返ってきた。


よかったぁぁぁぁ。これで滝行できる!!

その日、たまたま休日出勤していた人が、見つけてくれたおかげで、私も参加できたのだと、後になって教えてもらった。

あぶなぁぁ。
一人見ているだけなんて、きっと後悔の嵐だっただろうな。

無事(?)滝行行きが決まり、当日を迎えた。
現地最寄りの高尾駅で集合して、バスに乗り込む。そのバスの最後尾には、傘の柄を使って【最後尾】と書かれたプラカードを持った駅員さんがいた。

あまりの衝撃に、二人ともテンションが上がり、

「なんで傘の柄なんですか!?」
「この方が持ちやすいんですよ。このためだけに傘1本潰しました」
「ええー!? すごいですね!」
「写真撮ってもいいですか?」
「いいですよ(ニコニコ)」
と3人で盛り上がる。

くだらない会話すら楽しい。

バスに乗ったら乗ったで、友人が、

「なんか冷たい」
「え?」

見るとジーンズが濡れている。

「滝行する前に濡れるってどういうこと!?」
「なんやろう……あ! 水筒のキャップが違うやつやったかも!」
「えぇ!? 横にしたら漏れるんか!」

なんとか慌てて対策をして、ホッとしたのもつかの間。

「今度は反対側が濡れてきた!」
「え!? さっき締めてたよね!?」
「あったかいなぁと思ったら、も一個の水筒が漏れてたー!! カップヌードル用のお湯がぁ」
「何してんのw」

バスの中からすでに珍道中を繰り広げながら、ようやく到着すると、森が深いところだった。

「あかん、すでに寒いかもしれやん」
「これしか着てこなかったのに、滝に入ったらもっと寒いんちゃうん」

二人とも防寒着を大して着込まず、何も考えずに来てしまったことを少し後悔し始めた。

「でも、今更いうたところでどうにもならんから、諦めよう」
「そうやな、髪の毛乾かすドライヤーとかあったらいいなぁ」

そんなことを話しながら階段にたどり着く。

見上げると、なかなかの長さで、苔むした緑の階段はそれだけで神秘的だった。この先に事務所がある。先の見えない階段を登りながら、隣を歩いていたご婦人と話をした。

「こんにちは!」
「こんにちは、滝行は初めて?」
「そうなんです、階段大変ですね、これ」
「あー。この階段ね、今日は2往復するから、頑張ってね」

……ん? 2往復?

「え? も一回降りるんですか?」
「そうよ、滝は階段降りたところにあるから」

マジか。一気にテンションが下がった。
なかなか大変よ? この階段。みんなすごいわ。

受付とお祈りを終え、白装束に着替えた後、滝に向かう。

さぶっ!!
下着の上から、薄い白装束を1枚着ただけの心もとない格好で、下にはパンツ以外着るものがない。周りを見れば、水着着用、スパッツ着用の女性ばかりで、我ながらひどい格好。いや、黒色着ていいんかい! 勝手に白じゃないとダメだと思い込んでいた自分に笑えてくる。

「えい! さー えい! さー」
滝場に着くと、船漕ぎ運動をして体を温め、一人ずつ滝に入る。

一列になって、自分の順番が来るのを待つ。
私の前の男性が滝に打たれた瞬間、それまで普通だったのに、背中を丸め身を縮こませて震えていた。

うわー、大丈夫かな。寒そう……。
声出てないやん……。

ちょっとビビっている私を見かねたのか、

「深呼吸して! しっかり深呼吸したら、大丈夫だから! しっかり腹から声出して!」

滝行経験者の頼もしいアドバイスをもらい、深呼吸をして

「なんちゃらかんちゃら!(何かを唱える)」
「えい! いえ! えい!」

滝を人差し指で切り裂きながら、背中に滝を感じる。

ドドドドドドドドドド

あれ? 思ったより冷たくない?
それより何言うんだっけ?

隣に立ってくれてるおじさんの言う通り、繰り返しながら、腹から声を出す。
「けんしょうだいじんつうりき けんしょうだいじんつうりき 
けんしょうだいじんつうりき けんしょうだいじんつうりき……」

マントラを唱えながら、腹から腹からドスを効かせて叫ぶ。

「いえ! えい! いえ!」
この何かを切る動作って、どうしてこんなにワクワクするんだろう。


「楽しいいいいいいい!!!」

滝に入ると、何も考えられなかった。本当に無!
しかも全力で腹から声を出しながら、滝を浴びるなんて、全身で自然を感じるには最高すぎる体験だった。

「もう一回やりたい!」

と頼んでみたが、人数が多いからと断られた。

次に入った友人を撮影すべくカメラを向けていたが、
滝から上がってしばらくすると、寒くなって来た。

隣にいた人が、
「はい! 船漕ぎ運動するよ!」
とカメラ構えていた私と一緒にしてくれた。

えぇ!今!?撮影したいのに……!
と思う反面、断りきれず携帯を置いて体を温めてから、再度携帯で撮ろうとしたが、肝心の滝に打たれた写真は撮れず、音声のみ撮影成功w

二人とも早く着替えたいのに、更衣室が狭く、
順番を待っている間に本格的に冷えてきた。
立っているだけで体が冷えて、手足の感覚がなくなっていた。

やっぱりも一回滝に入る方があったかいんじゃないかと思う。

ようやく着替えられ、ほっと一息。
不思議と体の芯は暖かく、滝に入る前より温まっていることに気づいた。人間の体って不思議やなあ。

そしてまたあの階段が待っている。
隣を歩いていた参加者に、
「階段さっきより楽に登れるやろ。滝行のあとは、不思議と登りやすくなってるんよ」

確かに。2回目なのに足が軽く、すっすっすと足が上がる。
何度も来られてる方がそうおっしゃるのだから間違いないのだろう。

不思議な体験をしながら、また登り切ると、今度は感謝のマントラを唱えて、終了となった。

みんなカップラーメンを持参して、体を温めていたが、
何も考えずにきたので、先日大量に買ったパンとコーヒーで、少し寂しい昼ごはんになった。友人も、どこかで食べられるだろうと、味噌汁だけしか持ってきていなかった。

寂しいお昼ご飯に、見かねて主催者の方が、お供え物の野菜や、みかんや、海苔をくれた。

いや、ご飯ないねんw

ありがたくいただき、おにぎり求めて高尾山駅まで帰ってくると、カレーとカレーうどんがあり、美味しくいただきました。

ご飯がしみる・・・・。幸せ。

滝行行かれる方は、カップヌードルとおにぎりのセットを強くお勧めしますw

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