見出し画像

ここから時間を費やすべきは本当に "オンライン授業(ティーチング)"?休校中に学校や教師に担ってほしい《4つの役割》

長期化する休校・遅れる対応

子どもたちが、生徒が、学校に来ない。「何をしていいか分からない、と時間を持て余している同僚が多い」という声が聞こえてくる。もう一方で、教育委員会や首長の判断で、また個々人の先生が「何かできることはないか」との思いから、youtubeにUPする授業動画の作成に四苦八苦しながら取り組んでいるという状況も聞こえてくる。

この期に及んで、まだオンラインを活用するために柔軟に対応をとらない教育委員会や学校の多さに悲しく憤っている毎日だが、おそらくじわじわとゆっくりとでも学校機能をオンラインでどうにかしようという方向には進んでいかざるをえないはず。ただ、懸念もある。

文科省調査によれば、オンラインを活用で今のところなされていることは、独自の授業動画配信、デジタル教科書・教材の活用(あとテレビ放送)であるようだ。内実はよくわからないが。※こちらの文科省の資料参照。

画像1

でも、それは宿題プリントを配ってあとは家庭任せ、というのと本質的にはあまり大きくは変わらないのではないかと私は思う。実際のところ、一方通行の授業動画がガンガン流され、それを見て課題をこなさないといけなくなれば、子どもたちと保護者には過重なストレスがのしかかることになる。授業を動画で見るというのは実はとても負担が大きい。youtubeなどで見やすく楽しく編集された動画コンテンツを見慣れている子どもたちにとって先生(動画づくりにおいては素人)がつくった一斉指導の授業動画を1日に何時間も見ることになればそれは、かなり苦痛だと思う。多くの子が脱落する。もしくは最初からやらない。それをどうにかこなさせないといけないと思う保護者は追い詰められる。子どもは叱責され、家庭内はさらにギスギスしていく。大袈裟ではなく、教育虐待を誘発することになると思う。

今、一番重要なのは、子どもたちや家庭との「つながり」「やりとり」を取り戻すことではないだろうか。保護者と話していても、「宿題プリント渡されただけで、電話もなくて、メルマガ送ってくるだけ。放置されすぎじゃない?」と思っている人はとても多い。「学校は家庭のことを、考えてくれてるんだな」「先生は、学校がなくても僕らのことを気にしてくれてるんだな」と思えるだけで救われる子や家庭は多いはずだ。そして、会えない・遊べない友達とのコミュニケーションをできる範囲でつなぎ直すことも、重要度は高いと思う。つまりは、心の居場所をつくること。

そもそも、学校がもっている機能ってなんだっけ?

「学校は、勉強だけするところではない」と思っている人は多い。では、実際にどんな機能を持っているのだろうか。

改めて考えてみたが、大きく「学び」・「コミュニケーション(社会活動)」・「ケアとセーフティネット」に大別できるのではないかと思った。これらの機能が、重なり合うようなかたちで、いろんな取り組みが行われ、出来事が起こり、人が育っていくのが学校ではないだろうか。

画像2

この休校期間を「自分たちの仕事(授業や生活指導)は子どもたちが学校に来てはじめてできるのだから、今はできることがほぼない」とか、「夏休みと同じような状況なので自主研修や教材研修をしておこう」とか、そういうふうに捉えてはいけない。今は、本来保障されているべき時期に、これらの機能が、基本的にはすべて失われてしまっているという異常事態・緊急事態だ。できる限り、これらを保障するのが教職員の職務であると思う。ある先生は「みんなまだ“先生スイッチ”が入ってないのかも」と言った。なるほど、そうかぁ、と思った。4月以降の休校は、子どもたちと出会う前に春休みが延びたようなかたちで延長になってしまったことで、具体的な「あの子」のイメージも湧きにくく心配な気持ちも持ちにくい状況は確かにある。でも、それでも、まだ見ぬ生徒たちはあなたの生徒だし、あなたの学校の生徒だ、とも思う。
コロナの影響で社会活動が制限され、セーフティネットも脆弱化している中で、ストレスにさらされ、勉強がストップし、場合によっては虐待を受けたり、家庭が困窮しているかもしれない子どもたちに対して、手を差し伸べることができる、その最前線が学校のはずだ。

休校中、先生に担ってほしい 《4つの役割 》

改めて、タイトルの内容に戻る。今遠隔オンライン授業が盛り上がってきているけれど、労力を使うべきはきっとそこではない。前述のように子どもや保護者の負荷が大きいし、先生の労力がものすごくかかるわりに効果が薄いし(今無料で公開されている質の高い授業動画や教材は山ほどあるのでそれを使えばいいし、別に課題は紙ベースでも構わない)、一方通行なので「やれる子だけがやっている」状態になる。教師の役割は「教授(ティーチング)」だと思っている先生は今でも多いと思うが、少なくとも今は、それよりもっと重要なことがある。

画像3

▶︎ケアラー:心身の健康状態を気にかける

1つ目は、「ケア」の役割。「カウンセラー」という方が分かりやすかったかもしれない。子ども本人や保護者の状態を、ツールは何でもいいので、やりとりをする中で把握して、しんどそうな時は共感して一緒に考えたり、励ましたり。「ホッ」とできる時間をつくる。特に、今この状況にあっては、気持ち・感情を聴いて寄り添うことが本当に大事だと思う。

●オンラインの場合
☑︎ 遠隔ビデオツールで個別面談やホームルームや保護者会
 (まずは顔見て手を振るだけでも。おーい、元気?とか言いながら。)
☑︎ メールやチャットでやりとり など
 
●アナログの場合
☑︎ 日記などに気持ちが書ける工夫をし、コメントをして返す
☑︎ 定期的に電話をかける
☑︎ 手紙のやりとり など

参考になるかも?と過去記事を貼っておく。

▶︎コーディネーター:ニーズを汲み取り、資源を届ける

保護者や子どもたちが今何に困っているのか、何を求めているのかをキャッチし、限られた環境の中で、それに応える方法を考え、工夫して調整し、実行すること。そのためにも、今世の中に出回っている学びのお役立ち情報やセーフティネットになるような情報を収集。そのうえで、知恵を絞る。1つ1つの課題解決が難しくても、せめて有益な情報を、ホームページや学校便りや学級通信などを通して家庭に届ける。学習動画については、自作するよりこの方法が絶対にいい。

▶︎コーチ:子どもたちが「自分で学ぶ」のを手助け

動画を流しても、プリントを配っても、「自分で学ぶ」力が十分にない場合にとっては、取り組むこと自体がむずかしい。しかも今回は、出された課題を「やったかどうかチェックされない(学校再開の際に回収するのかもしれないが、それがいつか不明)」「フィードバックが返ってこない」状態になっている。大人でもその状態で仕事に取り組めるだろうか?(私だったらできる自信がない)。計画を立てるサポートをし、定期的に連絡をとって進捗状況を聞き取り、難しさを抱えているとしたらそのハードルをどう越えうるのか一緒に考える。モチベーションを維持したり、セルフコントロールを手助けすること。

●オンラインの場合
☑︎ 遠隔ビデオツールで話をする
☑︎ メールやチャットでやりとり(できた課題を写メでUP → コメント) など
  
●アナログの場合
☑︎ 定期的にプリント課題を回収し、コメントやフィードバックをつけて返す
(学校ポストに入れてもらう、家のポストまで回収に行く、など)
☑︎ 定期的に電話をかける
☑︎ 手紙のやりとり など

▶︎ファシリテーター:子どもたちがつながり合う橋渡し

今は、友達と気軽に会えない、遊べない状況。特に仲の良い子とは連絡し合ったり、会ったりしていても、「クラスメイト」を意識することはほとんどないのではないか。子どもたちがクラスを意識する時間を生み出し、学校再開後にコミュニティづくりがスムーズにいくためにも、先生が橋渡し役として、子ども同士をつなげることは意味があるはず。
 
●オンラインの場合
☑︎ 遠隔ビデオツールでみんなで顔を合わせられる場をつくる
☑︎ メーリングリストやグループチャットでやりとり
 (雑談や、できた課題を写メでUP → コメントし合う) など
  
●アナログの場合
☑︎ 学級通信上で子どもたちが相互に交流できる仕組みをつくり定期配布
☑︎ 手紙のやりとり など

4つの役割を担えるための方策を考えよう。オンラインが断然効率的だけど、アナログでもできることはある。

私の知り合いのある先生は、子どもの安全・安心と学びの保障の観点から、早くからオンライン活用を校内で提案していたが、いろんな反対やダメ出しでことごとく実現せず、「もうアナログでいく」と腹を括ったようだ。
オンライン活用が進まないことは私自身、現場の先生たちの声を聞きながら胃が痛い思いでいるが、アナログでも、大事なことが何もできないわけではない。「オンライン環境がないからやらない」よりは、「アナログでもできることを最大限やる」ほうがずっといい
 
☑︎ とにかく定期的に電話をかける
 (完全在宅勤務じゃない限り週に数日は出勤してるはず)
☑︎ オンラインの学習教材は伝えつつ、自作の課題の質を上げる
(頭を使うものだけでなく、体験的なもの、五感を使うもの、コミュニケーションを伴うもの、気持ちを表現できるものをたくさん入れられるとよいと思う)
☑︎ 小中学校であれば、課題は自転車で届けるなり、
 回収時は学校に持ってきてポストインもらうなりして「やりとり」する
☑︎ 日記や作文を学級通信にまとめ、誌面上交流をする   etc....
  
普段からそうだけれど、今こそ「発信過多」から脱却し、アンテナを立てて子どもや保護者の声やニーズを「受信」する感度を大事にしたい。
オンライン動画は、ネット上にあるものでいい。先生にしかできないことは、「受信」をともなう、この4つの役割ではないだろうか。

最後まで読んでくださってありがとうございました。 よろしければ、フォロー・サポートなどしていただけると、活動していくうえでとても励みになります^^