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『いい子のあくび』
芥川賞受賞第一作の『いい子のあくび』を読んだ。
「公私共にわたしは「いい子」。人よりもすこし先に気づくタイプ。わざとやってるんじゃなくて、いいことも、にこにこしちゃうのも、しちゃうから、しちゃうだけ。でも、歩きスマホをしてぶつかってくる人をよけてあげ続けるのは、なぜいつもわたしだけ?"割りに合わなさ"を訴える女性を描いた」---集英社hpから
割に合わない。
歩きスマホしてぶつかってくる人を避け続けて、面白くもない校長先生の話を聞いてるふりして、嫌いな上司に誘われた接待でニコニコ笑って、人にぶつかられたことのないような彼氏は結婚しようと言いながら浮気をして
何もかもが嫌いで、そんな自分が嫌い。
いい子にしてるから優しくされるし、好きでいてもらえる。
そんなのおかしいと思いながら、おかしいとは言わないし、言ってる人を見るとそんなこと言うなんて、と思う。
痛いほどの共感。
感じていたのはこれだった。
この本を私に薦めた彼は、わたしがこんな、ここまでとは言わずとも、この本を読んで私を思い出すように私を見ていたのか。
読了後、SNSで『いい子のあくび』を検索した。
「なんか怖い。嫌な気持ちになる。こんなふうに表面を上手に取り繕って誰も彼も嫌いでいるなんてどんな不幸なんだろう。一番嫌いなのは自分て呪いみたい。こんなに品性を下げて生きるなんて自分に申し訳なくて出来ない。」
と書かれた投稿を見た。
小中学校の学校司書さん。鍵のついてないアカウント。
そうだろうな。
と下品で、私に申し訳ない私が、笑った。
笑ってしまったことを、人にぶつかられたことのないような彼には、話さなかった。
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