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デンマークで学んだ「ビジネスとの向き合い方」|カチノデ代表森とプランナー江坂の対談インタビュー

ライター・デザイナー・ビデオグラファーの複数のプロダクションから成るフリーランスクリエイター経済圏『mics(ミックス)』。WEBメディア、ブランディング、デザイン、映像など、さまざまなジャンルのクリエイティブ領域を横断して、名古屋スタートアップ株式会社チームどみにおん株式会社カチノデが合同で事業を行っています。

カチノデ代表・森とプランナー・江坂は、2018年11月にTongaliアイデアピッチコンテスト(※)に出場し、「デンマークデザイン思考研修への挑戦権」を獲得しました。デンマーク研修で2人は何を学んだのか、学びを個人およびmicsでの活動にどう生かすのかをうかがいました。

▼Tongaliアイデアピッチコンテストの詳細はこちら
http://tongali.aip.nagoya-u.ac.jp/pitch-contest/

森 一浩|プロフィール
1995年生まれ、愛知県名古屋市出身。愛知県立芸術大学在学中に、名古屋大学発ベンチャー「Tier IV」のグループ会社としてクリエイティブデザインオフィス「株式会社カチノデ」を設立。グループ会社のデザイン以外にも多数のクライアントワークを展開している。2018年、『mics(ミックス)』の創業メンバー&クリエイティブディレクターとして、ベンチャー・スタートアップ/第二創業を中心にデザイン/広報・PR/ブランディングなど、多角的にクリエイティブ領域でのサポートを行っている。

江坂 大樹|プロフィール
1994年生まれ、愛知県刈谷市出身。名古屋大学情報文化学部在学中。2年間の休学を経て、現在は4年生。株式会社カチノデおよび『mics(ミックス)』では、ディレクター、プランナーを担う。雰囲気の良いバーのような空間で行うもくもく会「micsPub」の企画・運営も行う。「せなか広告」、YouTubeでの発信(個人チャンネルコメントクラブ)、からあげのHP運営、デイリーポータルZへの寄稿、WEB制作など、個人での活動も盛ん。

デンマーク研修を獲得した2人のアイデア

(写真:左から江坂、森)

ーTongaliアイデアピッチコンテストに出したおふたりのビジネスアイデアについて教えてください。

森:私が考えた「adlib」を一言でいうと、「大喜利で広告を制作する企画」。WEB上でランダムに出てくる2つのお題をかけ合わせて広告を制作します。制作した広告はSNS連携で発信され、より多くシェアされてランキングで上位になると、賞金が得られるという仕組みです。

例えば、『養老の滝』と『お母さん』がお題だったらこんな感じの広告とか。

(画像:『養老の滝』と『お母さん』をお題とした「adlib」の広告の例)

ー江坂さんのビジネスアイデアについて教えてください。

江坂:私が考えた「せなか広告」は、普段背負っているかばんに広告をつけるというアイデアです。もともとお金が好きじゃなかったので、「せなか広告」をお金稼ぎに使うつもりはなかったんですけど、今後はちゃんとビジネスにしようと考えています。

ーそのように考え方が変わった経緯を教えてください。

江坂:私は人が偏愛でつくったモノが好きです。しかし、市場では世の中のためになる方が売れる。だからお金を価値基準にモノを捉えるのが嫌だったんです。

お金に対する考え方が変わったのは、あるインターンに行ったのがきっかけです。そこにはお金に固執しない私の理想の暮らしがありました。しかし、私は理想であるはずの暮らしに満足できませんでした。もっとお金のことも他の人間のことも知りたくなったんです。そうしてインターンを終えて、自分が持っているサービス「せなか広告」をマネタイズしてみようと思いました。

ーTongaliアイデアピッチコンテストに参加したきっかけを教えてください。

森:私がたまたまコンテストの存在を知って、江坂を「adlib」で一緒に出ないかと誘いました。「adlib」はもともと私と森の2人で始めた企画だったので。そしたら、江坂が…(笑)。

江坂:ごねたんですよ(笑)。「adlib」に対する興味が薄れていたので。どうせ出すなら、自分だけのアイデア「せなか広告」で出そうと思いました。

ー最終的には別々のアイデアでの発表になったわけですね。お互いのアイデアについてどう思いますか?

江坂:森は初期のころから、「せなか広告」にとても興味を持ってくれていました。

森:私はアイデアはシンプルなほど良いものだと思っています。なぜなら、シンプルなアイデアは人に理解されやすい。さらに、コストが低く再現性が高いため、多くの人にとって課題を解決するためのより良い手段になります。

「せなか広告」は「かばんに広告を貼るだけ」とかなりシンプルなところが私は好きですね。

江坂:私としては、「気に入られて終わり」になっている部分を改善したいと思っているんですけどね。アイデアを仕組み化するのが苦手なんです。

森:江坂はアイデアを思いつくことは得意なので、面白いことを次々とやっていきたいと意識しているんだなと感じます。

ー江坂さんは「adlib」についてどう思いますか?

江坂:広告の仕組みが良いと思っています。

私は広告に対して「お金を払って無理やり広める」というイメージがあり、変だなとずっと感じていました。それに対し、個人の制作物をSNSでアップして「いいね」が集まったりリツイートで拡散される状態は、自然なモノの広まり方だと思います。「adlib」はそういう仕組みで成り立っているところが好きです。

英語で学んだからこそ、ビジネスの進め方をシンプルに理解できた

(写真:CIIDのメンバー・AndrewさんによるCIIDの説明の様子)

ー4日間のデンマーク研修について教えてください。

森:1日目は導入と、Tongaliアイデアピッチコンテストで出した各自のアイデアのプレゼン。2日目はビジネスモデルデザイン。3日目はデザインシンキングのワークショップ。そして、最終日の4日目はデンマークのベンチャー企業を見学しました。

ーデンマーク研修を受けて気づいたことはありましたか?

森:私の場合、デンマーク研修で学んだことはすべて経験済みの内容でしたが新しい気づきに繋がったんです。英語だと語彙が少ないのでシンプルに考えることができ、しかも英語自体がシンプルな言語なので、今まで複雑に考えていたことをシンプルに理解できました。

また、現地の学生のプレゼンを聞いて、良い点・悪い点がわかるようになっていました。出発前にプレゼンを練習したので、いつの間にか他者のプレゼンを評価できるようになっていたんです。

江坂:デンマークは日本と比べてビジネスを学ぶ環境が非常に整っていると感じました。デンマーク研修を受けた「CIID」というデザインに特化した調査・研究・教育を行う施設は、メンターがつき、学生のモチベーションも高かったです。特に「SingularityU Nordic」という複数のスタートアップがシェアオフィスとしても利用している施設がすばらしかったです。FABスペース、ジム、シェフがいる食堂まであり感動しました。

また、「せなか広告」はデンマークでやった方がむしろ面白いのかもしれないと気づきました。というのも、デンマークは日本でいう京都のように、広告が街中にあまり見られません。そのため、看板を背負っている人がデンマークには結構いたんですよ。

森:「せなか広告」は京都やヨーロッパなどの景観を大事にする街で展開できそうですよね。

(写真:ビジネスのロジックをつくるワーク後の発表の様子)

ーこれからどのように、自分のビジネスアイデアを改善していくのでしょうか。

森:仮説検証のサイクルを早くしようと思いました。「お客さまは誰なのか」「どういうサービスを提供するのか」など、ビジネスをつくるときに設定することはたくさんあります。それらが成立するか、ひたすら検証します。

江坂:せなか広告がどれほどの価値を生むかを裏付けるデータを取る予定です。「1日何人が『せなか広告』を見るか」「一般的に広告の予算はどのくらいか」など、いろいろな数字を集めます。

デンマーク研修を経て、新たに見えた目標

ービジネスアイデアを考える上で大切なことはなんですか?

森:私にとって、ビジネスモデルをつくることはあくまで手段。「自分が何をして、どういう世界をつくりたいのか」という最終的なビジョンに対して、真剣に向き合えていることが重要です。これができていないとビジネスを回せず、仮説検証もできません。

江坂:私はビジネスには根気が大事だと思います。ビジネスをつくるのは難しくて大変な作業なので、アイデアがあっても途中で辞めてしまう人が多いです。「ビジネスをつくるために、やれることなのにやってない状態」は結構あると思うんですよ。「やれること」を全部やると形は変わるかもしれないですが、ビジネスにはなります。その根気があるかが問題なんです。

ー「やれること」というのは?

江坂:ビジネスの種類や状況によって「やれること」は変わってくると思うのですが、例えば、市場をたった1人の人間に設定して徹底的に調べることなどです。その人が普段何を考えているのか、職業は何か、最近買ったものは何か…。

森:そこまでやれる人がなかなかいないから、デンマーク研修の内容はビジネスをつくるスピードを速くする1つの考え方なんですよ。

ーデンマーク研修で学んだことをmicsでの活動にどう生かしますか?

森:micsでの活動だと、「micsworkshop」に生かせると思います。ビジネスを始めたい人向けに、私たちが学んだ内容を、2時間くらいに濃縮して伝えるんです。

江坂:デンマーク研修に向けてたくさん練習したので、ピッチプレゼンのレクチャーもできると思います。

ー個人の活動にはどう生かしますか?

江坂:人の背中を使って何かやりたい人を集めて、広告だけでなく他のこともやっていきたいです。

森:私は「クリエイターが楽しんで活動できる世界をつくりたい」と思っています。その手段として「adlib」をブランド化していきたいです。カチノデも手段の1つであって、クリエイターがハッピーに働くにはどうすればいいのかなどを仮説検証する場としています。仮説検証をより深めて、私の理想の世界に近づきたいです。

ーありがとうございました。

micsには、多様なメンバー、スキル、ナレッジが集まっています。なんだかおもしろそう、ちょっと興味がある。そんな方は、社外向けに開催しているイベントにぜひ遊びにきてください。今回、対談インタビューをしたカチノデ代表森とプランナー江坂の個人インタビューはこちらからどうぞ。

#デザイナー #カチノデ

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