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宇田奈緒「受け継いでいくこと(4日目)」

今日は清水から少し足を伸ばして、三島市のベルナール・ビュフェ美術館に行った。同じクレマチスの丘にあるIZU PHOTO MUSEUMに行きたいと前々から思っていたのだが、ここ数年は休館中で、近くのヴァンジ彫刻庭園美術館も昨年閉館となったらしい。

銀行家だった創設者の岡野喜一郎氏が戦後にビュフェの作品に魅せられ、長い年月を費やして2000点もの作品を収蔵されたのだという。ビュフェ本人との交流も盛んで、肖像画のモデルとなったり、日本に招いたりもした。日本を旅したビュフェは相撲を観戦したり、富士山や奈良を見たりして、その思い出を絵にした作品が今ではこの美術館に飾られている。

1973年に開館したこの美術館は、作品はもちろん、展示空間や館内のレストラン、ミュージアムショップも素晴らしく、これまでビュフェの作品の一部しか知らなかった私もその魅力を味わうことができた。美術館の公式ウェブサイトに岡野氏の想いが綴られている。

創設者がビュフェの作品と出会ったのは、第二次世界大戦の荒廃が残る1950年代の前半でした。戦後の虚無感や不安感を描き出した表現は、彼の心に深く刻まれました。その後、各年代の代表作の蒐集を続けた岡野は、この稀有な画家を20世紀の時代の証人として残すため、「ひとりの天才の才能を通じ、この大地に文化の花咲くことをのぞむ」という願いのもと、故郷に近いこの地に美術館の創設を決意しました。

https://www.buffet-museum.jp/about/

そして15時半ごろに最寄りの三島駅まで戻ろうとしたところ、路線バスは既に最終便が出ており、近くのタクシー会社の車は全て呼び出されてしまっているため、30分ほど離れた別のバス停まで徒歩で行くことになった。以前はシャトルバスが運行されていたようだが、美術館に足を運ぶ人が減り、バスは廃止となったらしい。同じ地域にあるいくつかの美術館は経営が難しくなり、閉館となった。

アートとは、一体誰のために、そして何のためにあるのだろうと考える。ある時代を生きた人たち、今の時代を生きている人たちが人生をかけて様々なことを考え、命をかけて生み出した作品は、きっと、私たちが悩んだ時や嬉しい時、悲しい時や仲間が欲しい時に何らかのヒントをくれるのではないかと思う。

皆が気軽に足を運べ、観たい時に作品を楽しめる、そんな環境をいつまでも受け継いでいくために、私には何ができるのだろう。

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