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宇田奈緒「見送るもの、見送られるもの(3日目)」


ダイヤモンドプリンセス号

今日は朝から清水港にダイアモンドプリンセス号が入港していた。たくさんの海外のお客さんと道ですれ違うたびに「Hi!」と挨拶を交わしたり、お土産屋さんで「モチの入ったお菓子はこれだよ」と説明したりして、清水の新たな一面を目にする。以前、カナダでとある夫妻と話をしていた際に、「先月清水に行ってきた」と伺ったことがある。クルーズ旅行で立ち寄ったので滞在時間は短かったけれど、素晴らしい景色とシーフードに感動したとのことだった。

午後2時に出航式があるとの情報を教えていただき、皆様を見送ることにした。30分前から人が集まりだして、シャボン玉を飛ばしたり、デッキにいる方々に手を振ったりして出航を待つ。乗り降りのためのドアが閉まり、ロープが収納され、花火が上がり、汽笛を鳴らして船は出航した。

よく旅に出る私は、見送られる側になることが多い。初めて留学に行った時の空港や、遠くの町での滞在制作に向かうためのバスターミナル、祖父母の家から帰る時など、今まで何回見送ってもらったのだろう。今日船が出航する時、私は見送る側になった。英語と日本語で流れる「清水に来てくれてありがとうございました。また会えるのを楽しみにしています。お気をつけて!」というアナウンスを聞いていたら、なぜか涙が溢れ、旅人としてここにいるはずの私もまた、皆様の旅の安全を心から祈っていた。

この場所には、人が集まり、時を過ごし、またそれぞれの行き先に向かう。遠く離れたカナダで「清水は素敵な場所だったよ」と言われる、そんなこの町が好きだなと思った。

ダイヤモンドプリンセス号の出航


お見送り記念の缶バッジ

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