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渡邉帆南美「これやってるの僕、一人なんですよ。〜世界に一人の修善寺和紙職人〜(5日目)」

前日に戸田に行こうとして修善寺まで行ってフライヤーを見かけたことによって、
修善寺和紙の存在に気づき、
舛田拓人さんの工房である「修善寺紙谷和紙工房」へ。
工房に不在のことも多いそうですが、
私の場合、無計画にその日にご連絡しているので余計に一か八かで、
会えるかわからないまま、出発する。
そんな感じも逆に良いと思いながら、行って参りました。

修善寺温泉に到着。

橋が渡月橋で、川が桂川など、京都を意識したようなものと同じ名前なのが面白い。

工房はこの場所から離れているのでどんどん歩く。

なんとなく懐かしい感じがするのは、なぜでしょう。
街の雰囲気がよく、穏やかな気分になる。熊本と京都を混ぜたような感覚。

修善寺温泉から徒歩で25分。
私には全く苦痛はなく、穏やかな気分で工房につきました。

待ち合わせの17時過ぎより早い到着。まだ、来られてなかったのでのんびり
待つことに。外からの雰囲気でもうすでに期待値が上がっております。

しばらくすると、舛田さんが来られ、工房を開け、電気をつけてくださいました。

空間も美しい。何かが始まる予感がするし、昔の感じと今の美しさがうまく折り重なるような。とても素敵な工房の雰囲気に心が躍ります。


原材料になるミツマタという植物です。
枝が三つのまたに別れているからこの名がつけられたとのこと。

三年ごとに刈り取りますが、わきからまた生えてくるとのこと。
和紙を作る前に原料からお造りになってるので、僕は、ほとんど農家のような作業をしていますよ。と舛田さん。


お次は、和紙の行程のご説明をしていただきました。


下で火を焚いて、樽やシートなどを被せて、三時間ほど蒸していきます。


蒸すと皮が剥がせるのですが、中からは白い木が出てきますが、
使うのは皮の方です。



はいだ皮を乾燥させるとすごく固くなっています。
このままでは黒いので、黒いと紙が黒くなるので黒いのを剥いでいきます。
こするとどんどん取れるので、普通はお水に一晩ほどつけてふやけるとナイフで取れるので取った白いものがこちら。




お水と薬品と白い皮を入れて窯で三時間くらい煮ます。
すると干瓢みたいにふにゃふにゃになります。




引っ張ると繊維がよくわかるまで煮る。腐るので冷蔵庫で保存してます。
この後いっぱい行程はありますが黒い剥ぎ残しがあると、紙が汚れちゃうので、
その黒いのをまだ取っていきます。ここまで聞いてもかなりすごく手間がかかっているのがわかりますが、まだまだ行程は続きます。

これを打解機に入れ、餅つきのように叩くことでほぐれていきます。



そしてこのようになり、これが紙の原料になります。




これを水と一緒に入れて、
枠にすだれみたいなのを載せて、

入れると水だけが下に落ちて、紙の繊維が溜まっていく。その溜まったものが紙になる。

この後も行程はいっぱいあるそうで、
水を使っているので、プレスして水を絞る。半日ほどかけて水を切ります。

それを板があるので、そこに貼っていく。


自分でやること想像したら、気が遠くなりそうなかなりの行程を経て作られる
とてつもない紙だということが本当にわかりますね。



また、歴史のこともお伺いしました。こちらは、徳川家康から当時紙すきだった人にお手紙が送られていたとのこと。
レプリカですが、本物は修善寺に宝物庫にあるそうで、家康公からお墨付きを得ていたという歴史のある紙である証拠だそうです。鎌倉時代から江戸時代くらいまでは名の通っていた紙だったとのこと。

「昔はここが3、40件くらい紙の集落だったのですが、今はここしかないし、僕一人だけなんですよ。」と舛田さん。え!?そうなんですか!?とかなりびっくりしてしまいました。とんでもない人に出会っています。奇跡に感謝・・・。

一回、歴史上明治あたりで途絶えたことがあるそうですが、地元の有志の方がもったいないよねということで昭和の終わりにもう一度作り始めたそうです。そして少子高齢化により、後継者が途絶えてしまうので、後継者を呼ぼうということになり募集があって、舛田さんが来られたとのことです。来た当時はこの工房も倉庫状態だったそうです。すごく大変なこともあったかもしれませんが、とてもやりがいのある仕事なのだろうと感じました。

お話を伺っていて、舛田さんは、とても人当たりの良い感じの方だったので、地元の方も素敵な後継者の方がいて、本当に良かったなあと聞きながら思っていました。

気になる書き心地ですが、コウゾの紙と比べてミツマタは滲みが少ないらしいのです。それが逆に描くものによっては有効になる場合もあるので、好みの問題ですが、書きごごちは引っ掛かりがなくてとても良いのだそうです。かな文字とかにすごく合うそうです。


コウゾの紙は丈夫ですが、引っ掛かりがあり滲みやすい、
ミツマタの紙は繊維が短く細いので、柔らかく、艶があり、引っ掛かりが少ないという違いがあるそうです。
触るとよく違いがわかりました。

コウゾの方が作るのは簡単で、何より収穫の問題だそうで、
コウゾは一年で収穫できますが、ミツマタは三年で収穫するそうですので、その段階から違いがあり、コウゾの方がゴミを取るのも取りやすいのだそうです。

ここの土地に根付いてるものなので、大事にしたいとのことで、
昔は白い紙が貴重でしたが、現在は逆で、いっぱい白い紙は溢れている
この様に植物の良さが生きた味のある色味の紙の良さというものが
逆に価値を持ってきます。

今まで私のような活動をする人は、一般的にはキャンバスや普通の紙に絵を描くということが多いかもしれません。耐久性で1000年耐えるという和紙と、一点一点の温もりとか、そういう歴史的な背景とか、そういったものを思考にもう一度取り入れながら、紙を見てみたり、作品の大事な要素として、選んでみるということの面白さや、可能性が何かあるのじゃないかとすごく魅力を感じました。

以前、私が紙を選ぶときは、実はライトを当てるマジックトラベルシリーズの作品を作る時に一度考え、わざわざ特定の成分の入ってない紙などを選んだことはありました。しかし、アクリル画などを描くとき、さほど気にしてはいません。


ライトを当てる特質上、紙を選ばざるを得なかった、マジックトラベルシリーズの作品

作品が残ることというのはかなり問われることが多い問題ではありますが、そういう選択肢を考える中でも非常に良い和紙だそうですので、今後どのような作品展開ができるのか考え、また、作品自身へのダメージなどを気にする際に有効かもしれません。

今回ご丁寧に色々教えてくださったので、かなり学ぶことがありまして、
自分自身がアナログとデジタルで活動するので、一点ものと複製物の関係や有形と無形の関係などを気にしていることもあり、

すごく気になっているので、本当に修善寺和紙を使った可能性は
具体的にないだろうかと今後の可能性の一つの選択肢として
大きなヒントを得ることができました。

一人の人が一人で作っている魅力。

また、このほかにも活動などをする際の運営の難しさなどのお話にもなりました。
どこもすごく大変だと、沼津に来て色んな人に言われていましたが、
こういった価値のある文化が残る社会であって欲しいです。

私も、具体的に、何か、もしかしたら展開を考えれたらと思います。
今回の旅で得たものを活かし活動をして、再びこの地に戻り、またこの地にお返ししたいという気持ちが高まりました。

舛田さん、この度は、歴史の話や、和紙の作り方など、ご丁寧に教えてくださり、
本当に素晴らしい充実した時間を
本当に、ありがとうございました。

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