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宇田奈緒「言葉にならないこと(6日目)」


清水港の様子 (フェルケール博物館)

今日は、旅人アーティスト3人で集まって清水港に面する広場にパソコンを持ち込み、地元の方々がおすすめしてくださった1957年制作の次郎長映画「任侠清水港」を観た。

近年は制作数が減っているらしいが、次郎長さんについての映画やドラマは200作以上存在するのだという。そこまで人を魅了し、何度も語られ、皆に共有されてきたのは、一体どのような物語なのだろうと不思議に思っていたが、それは多くを語らずに自ら行動することで道を切り開き、時代に合わせて変化しながら長い人生を歩んできた次郎長さんの姿への憧れのようなものなのかもしれない。

普段は海外でアーティストとして生活をしている私は、外から日本について考えたり、日本について質問されることも多いが、「義理人情」が何かと聞かれたら、おそらく言葉ではうまく説明できないだろうと思う。それでも、この映画の中で、登場人物たちがどうしても言葉にできないことを瞳を使って相手に伝える姿を見て、その相手を大切に思う気持ちの中にあるのが「義理人情」なのではないかと思うようになった。

何でも言葉で伝えることが重要だと思われる時代だからこそ、あえて言葉にしないところに意味があるのかもしれない。人が生きていく中では、どうしたって言葉にできないうれしさや悲しさ、やるせなさがあって、それを何も言わなくても伝えられるアートの優しさに何度も救われてきたし、これからもずっと大切にしていきたいと思う。


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