見出し画像

西松秀祐 「子浦五十鈴川美術館 / 南伊豆5日目」

朝10時に友人で下田に住む作家の伊藤允彦さんと待ち合わせて、南伊豆を回ることになった。まず初めに岩殿寺窯で行われている陶芸市にむかった。昨日ハロウィンパーティーがあったエリアを抜けていったが、昼の上賀茂もとても雰囲気がよく、天気の良さ、風の清々しさもあるのだが、なんかとても澄んでいて気持ちかった。岩殿寺窯ではお店にはいるとまず、お土産といって紙に包まれたものを渡された。触った感じ確実に湯呑みで、なんというサービス精神なのかと驚愕した。店内はお客さん、陶芸家さんたちが結構いて、賑やかだった。醤油刺しがとてもかわいくて、購入しようとしたら、値段がはってなく非売なのか聞いてみると、それは陶芸の生徒さんのものだったのか、作者は売るのがまだ恥ずかしいと言って、売ってくれそうにない。でも周りの人たちの声がけなのか最終的に1000円で譲ってもらった。結局醤油刺し、小皿の2点を購入。すごい賑やかな雰囲気でお会計をしてもらった。

そのあとは昨日訪れたアート村の島川さんがいるギャラリー蔵を訪れた。島川さんに江戸時代からのあった蔵など案内してもらった。ギャラリーはその江戸時代の蔵と隣に連なっている民家など3スペースくらいあった。そして縄文土器や魚など島川さんの作品は外に展示されていた。個人的に面白かったのが、日詰遺跡(弥生時代の遺跡)の紹介などがされている場所に、現代版やよい土器をギャラリーに展示している作家たちが作ったものたちだった。外には島川さんの縄文、そして中には作家たちの弥生。昨日いただいた日詰遺跡から創作された絵本もそうだが、遺跡からの発掘物がなんかとても身近に感じるような想像力の使い方だなぁと見ていて面白かった。

その後他の作家の方たちと少し話をして、みかんをもらい、ここの作家さん達が出しているあいあい岬のお店にもよることにした。サンドイッチが美味しいからと、言われあいあい岬につくと、ものすごい風と、目の前に広がるGIO ジオ!!!みたいな迫力ある風景に圧倒された。幸せの鐘みたいなものもあり、カップルもいた。江戸時代の蔵からのギャップのある旅路を面白がりつつ、昼食。

伊藤さんは植生などについて詳しく、話をしながら面白かったのは、先駆植物(パイオニア植物)について、急にでかくなった木は風によってやられるが、全体としてちょっとずつ大きくなりつつ、でも大きくならなければ、日光に当たれないだからそれぞれがせめぎ合ってる感じなのか、、そうやって山を見ると、ぱっとみた山でもそのダイナミズムを感じることができたような気がした。

そして強風によって育つ木は成長がおそく、硬く、そして乾燥しやすい木材になる。その関係で造船史の中で伊豆という存在が際立ってくるのかどうかは分からないが、なくはないともとは思う。あいあい岬のあとは伊藤さんと塞の神巡りをした。

塞の神と樹木による境界線が一致している
畑の周りに花を植えるのもちらほら

車内では最近伊豆での目撃情報のある熊について話ながら人里、自然といった境界について話しながらドライブした。伊藤さんと町役場で別れ、私はひとまずポリネシア温泉へ向かった。そのあと今日の宿泊先で滞在1日目2日目に宿泊していたDajaさんへ。子浦に到着すると、ちょっと知っているその風景にどこかアットホーム感のようなほっとした気持ちになった。

到着して、まだ行けてなかった子浦五十鈴川美術館に行った。矢谷長治さんの展示は実際11/1から子浦五十鈴川美術館とTee Salon Kibiで開催される。美術館はやはり開いていなかった。それから矢谷長治さんの展示を見たKibiさんに電話をかけ、明日朝もう一度みることはできないか?確認すると、明日朝見に行けることになった。そして子浦五十鈴川美術館の方、矢谷さんのお弟子さんにもお電話をかけていただき、夜美術館に行っていいことになった。

お弟子さんの千景さんはすごい温かく迎えてくれた。昔アトリエとして使っていた茅葺の家のこと、長治さんとこの美術館をつくったこと、美術家内にある待庵を模した茶室、その漆喰について話をしてくれた。

なんで長治さんの作品が気になったの?と聞かれ、迷ったがこんな感じで答えた。

例えば画家の自画像をみるとき、鑑賞者とそれを描いた画家の立ち位置は物理的に一緒で、絵が鑑賞者を見返してくる感じが、すごい画家の存在というものを強く感じることがよくある気がするけれど、風景画をみて画家の存在みたいなものを考えることは少ないように思う。僕が見た矢谷長治さんは風景の写生が多かったけど、すごい矢谷長治さんの存在を感じたから。

お弟子さんで画家の千景さんに、感想を言うのは緊張したが、ただ正直に思ったことを伝えた。そして私がKibiではじめて長治さんの作品を見て、少し買おうか考えたすえ、まとまってどこかにあった方が良いような気がして思い切れなかったこと(市立、県立美術館などなど)、そんなことも話せてよかった。

帰り際、千景さんは今日は満月ですごい海面に反射する月が綺麗だから、行ってみてと、渋柿を手渡してくれた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?