山田洋平「この町が作ってきたもの」龍山町4日目
毎日あちこちで通行止め・迂回路が出ているが、今の住民にとっては日常風景。近年は気候変動で台風や集中豪雨が増えているということ。
水害はダムができる前は多くあって、建物自体も洪水が起こるのを前提に作られていた歴史を持っている。
あまり人の入らない山に登ると杉が枝打ちされずに荒れている。
道も壊れているし、ヒトの通った僅かな跡を頼りに登っていくのは正直に言って怖い。ふと気を抜くと自分がどこを歩いてきたかがわからなくなる。動物の気配はなかったけれど、何かいるかも知れないと振り返ってしまう。
夜もランタン一つもって山を歩いてみる。
ランタンだからそれなりに前が見えたけれど、もしロウソクだったら自分は歩く自信はなかった。それに怖い。風の音や何かが落ちる音、何度も後ろを振り返ってしまう。
元々山や自然はヒトに優しくなんてなく、ただ山としてあるだけ。そこに人が住み、町を作ってきた。
段々畑やわずかな平地を広げて町を作ってきた人たちがいる。
この石積を見ていると一体どんな労苦を重ねて今の姿になったのだろうかと思う。石を砕いて、運んで、杭を打って石を積み、土を入れてわずかな畑を作って栽培する。
たった一段作るのにどれだけの労力があったのか。たった一段の茶畑でどれだけの収穫があるものなのか。一世代じゃとてもじゃないけれど作れるものではない。世代を超えて小さい頃から働いて積み重なって今の風景ができている。
日に日に今見てる風景は美しいだけでは語れない重厚さを感じてきている。
山の頂上では風に揺れる木同士がぶつかりあって音を出していた。
夜、山道を抜けたら住民の方々がグラウンドゴルフをしていた。
老年を迎えている皆さんは笑いあっていた。
今日拾ったもの
▶人の入らない山は怖い
▶がけ崩れで通行止めなんてあるあるだよ。
▶国勢調査の杭
▶草に埋もれた橋
▶崩れた山小屋
▶路肩が崩れた山道
▶杉の葉が散らばる道路
▶ひしゃげたガードレール
▶山の下から聞こえる車の音
▶山の上から聞こえる飛行機の音
▶うねった地層
▶水を逃がすためのホース
▶山の上の酒を飲んだ跡
▶誰かが補修した石の灯篭
▶生きて帰れるのかわからない
▶電波が届かないだけで不安になる
▶完全に自由であることの怖さと軽さ
▶人のいなくなった保養施設
▶草が生え放題のテニスコート
▶天然記念物はもう見れない
▶伐採された後に木を植えられていない山々
▶人を怖がらないキジバト夫婦
▶段々畑の一番上にある岩々
▶ある石積みだけに生えている植物
▶小学校の通学路跡
▶遊んだ遊具
▶グラウンドゴルフ・ソフトボール・武家凧
▶夜に沈んでいく町
▶商売は最低限
▶遊歩道からダンプカーの通り道へ
▶天竜川が見えると安心する
▶怖がりだけど臆病者ではないこと
▶肝が鍛えられること
▶慣れる事。
▶受け入れる事
▶おじいさんのランプ
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