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1月17日(火)はこびの源泉

朝10時に「蛸みこし研究センター 吉原支部」となる予定のシェアオフィスで野口さん、田村と待ち合わせ。瀧瀬は遅れ、車で吉原に来たビデオグラファー中島さんを駐車場所へ案内したあと一緒に向かう。到着すると、野口さんがシェアオフィス内の壁に設置されたボルダリングに軽やかに登っていた。

中島さんとYCCC田村

このシェオフィスの正式名称は「橘香堂近藤薬局 / WORX Mt.Fuji」。富士市内に数店舗展開している近藤薬局の吉原本店横に長らく空き店舗となっていた場所に昨年暮れプレオープンした(シェアオフィスWORXは近藤さん以外にも静岡県内各所に展開されている) 以前はパチンコ屋だっただけに、特に奥行きがとてもある。メインストリートに面したガラス面から見える人工芝とボルダリング壁もこの場所を何かと気にさせる要素だ。

蛸みこしに用いる竹は最長5メートルほどあり、YCCCメンバーがオフィス/店を構える場所で制作・保管するには限界があるし、せっかくなら街行く人々の目に触れるグラウンドレベルのガラス張りの場所が良いとかねてから考えていた。そんなときに偶然、近藤薬局さんが街のキーマン的存在な田村に場所の活用方法を相談したことがきっかけで今回貸していただくことになった。YCCCと野口竜平、もってるなあ〜。

野口さんが持ってきたスケッチブックと本数冊ですでに研究拠点感が出てる丸テーブルを囲み、中島さん、YCCCと今日の予定について打ち合わせる。中島さんは大きなマイク付きカメラを構えて撮影者に徹する。
「ふだんは人に見せないんですけどね」と言いながら野口さんが文字が書かれたA4の紙を差し出す。今朝書いた日記とのこと。自動記述的に、ただ頭に浮かんだことを書くことで頭の中をデトックスする野口流日記を、今回は人に見せる前提で書き、タコセンにも展示していくと言う。そこに書かれているのは滞在制作という目的に繋がるような繋がらないような、しかし時間と経験を経ると蜘蛛の巣のように何かを作り出す伏線となり得そうな「何か」。なにより野口さんの芸術探検家としての態度があらわれていて、いい。

その後、前回の滞在でも竹を染めさせてもらった東海染工さんへご挨拶に伺う。最近できた「蛸みこしんぶん」を渡しながら、改めて蛸みこしの近況を伝える野口さん。


東海染工は繊維染色を主に扱っているが、竹の内部まで染料を染み込ませ発色よく染める技術もお持ちの、100年以上の歴史を持つ老舗だ。今回の滞在前も竹を染める方法についてあれこれ様々に検討いただいた。
野口さんは蛸みこしをかぐや姫の光り輝く竹のように黄色く染めたいらしい。しかし1月は大量注文が入り竹を染める釜自体が埋まっており、作業の確約はできないとのこと。万が一工期が早まる可能性もあるので、今後も連絡を取り合う約束をして別れる。

お昼は田村が営むピザ屋Birdで中島さん、野口さん、瀧瀬でピザを食べる。メニューが来る前に、現在の制作プランをささっとドローイング。このあとは中島さんの車で竹採公園へ向かうことになった。前回滞在で電話番号を交換した岡田さんに電話で一報を入れる野口さん「わたくし秋に竹採公園で番号をいただいた芸術家の野口と申しますけれども」声の真摯な響きが、目の前で聞いていて実にきもちいい。

その後瀧瀬は夕方にかけて仕事の用事があり離脱。竹採公園では、19日に改めて竹を採る約束をしたようだ。
野口さんはこの日東京に向かい一泊した。やりとりが膠着した仕事があるため、相手と直接会って飲みながら話したほうがよさそうと思い向かったそう。野口さんのこういうところが「はこび」を生むのだよな、と思う1日だった。

(YCCC瀧瀬 記)