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ホスト 鈴木千陽 「アーティストの審美眼」

こんにちは。
龍山町ホスト「龍山未来創造プロジェクト」の鈴木千陽です。
浜松市天竜区龍山町で地域おこし協力隊(浜松山里いきいき応援隊)として活動しています。

今年度、MAWへは実質的に2年目の参加となりました。
昨年度3月には舞踏家、楽器制作家、大学教授など4名を龍山へお招きし、その時の出会いが、11月現在、イベントや作品として実りつつあります。
このような貴重な機会をいただけたことにアーツカウンシルしずおか様へ感謝の意を述べるとともに、MAWの期間のみならず、その後も龍山に関わってくださるアーティストの皆様にも感謝の気持ちでいっぱいです。

今年度は、陶芸家 / 本原令子さん、音楽家 / 鈴木雄大さん、芸術家 / さとうなつみさんの3名が滞在されました。
昨年度滞在されたアーティストの方々は、「映像作品を作る」「楽器を作る」など、割としっかりと目的を持って滞在された印象でした。
一方今年度の皆さんは、成果物を強く意識せず滞在された印象で、これによってインプットに完全に集中することができていたように感じ、また成果物の提出を求めないMAWの良い点だと感じました。

今年度は比較的自由時間が多めの滞在スケジュールでした。
自由な時間が多いこの状況こそ、今回滞在されたアーティストの方々の魅力や得意なこと、やりたいことに合致していたように感じます。行動力やコミュニケーション能力の高さゆえ、ですが!
またMAWが短期間だからこそたくさんの人、物に積極的に触れて帰ろう、という意識を強く持たれていたのも印象的でした。

詳細の滞在内容についてはアーティストの皆さんのnoteをご覧いただくこととして、簡単に感想を述べさせていただきます。

【陶芸家 / 本原令子さん】

秋葉ダム / 建設された昭和32年9月からずっと変わらず使われている大きなパイプを見る本原さんとJ Power松本さん

本原さんの興味の中に上水や電力のことがあり、秋葉ダムを一緒に見学しました。
やはり印象に残っているのは「位置エネルギー」のお話。
東京の上水は「蛇口をひねるだけで電力を使う」「東京都上水局は東京電力の一番の顧客」というくらい、水を運ぶのに電力を使うのに対し、浜松の上水は土地の高低差を利用して水を運んでいるので電力消費が少ないのだそう。
秋葉ダムが、龍山が、ここにあるというだけでエネルギーを持っているということ。ハッとしました。

また秋葉ダムや電気のことを熱心に、誇らしげに語ってくださったJ Powerの松本さんや、現場で働いて私たちのインフラを支えてくださっている職人さんたちの頼もしさたるや。これは龍山の誇りでは?
「インフラ↔️アート」という一見かけ離れていそうなふたつですが、本原さんの視点のおかげで気づくことがありました。

【音楽家 / 鈴木雄大さん】

下平山農村公園 / 雄大さんと民話に詳しいひでさん

民話など地域のことに詳しいひでさんと一緒に、民話めぐりと称した地域めぐりをしました。
正直雄大さんのご希望に沿ったコンテンツになったか不安ではあります…が、これほどしっかりひでさんから、それぞれ現地でお話を聞く機会は今までなかったので、私自身さまざまな気づきがありました。
のちに滞在されたなつみさんの民話への興味も相まって、このときひでさんが話してくださったことの貴重性を強く感じたとともに、それが文献として残っていないことへの危機感を覚えました。

雄大さんは東北で地方創生に取り組まれていることもあり、懇親会や一緒にドラゴンママでお食事をした際にお伺いしたお話の中で、私自身の活動について考える際に参考になるお話・お言葉がたくさんありました。

【芸術家 / さとうなつみさん】

龍山協働センター / 職員に今回の滞在についてお話しするなつみさん

なつみさんの滞在は諸事情で本来の日程から延期して実施しました。
そのため提供できる内容が前者のお二人に比べ、かなりご本人任せなスケジュールとなってしまったように思います。
しかしなつみさんの行動力やコミュニケーション能力によって、とても濃い滞在であったように感じました。
ホストである私たち自身も、なんなら昔から住んでいる地域の人でも知らないような場所を、人伝に聞いて、実際に足を運ぶ。
なつみさんが滞在してくださったおかげで、風化する前に発見してもらえたものがたくさんありました。

お地蔵さんなど、昔の人々が手を合わせてきた場所に着目するというのがとても興味深く、また、親睦会で地域の人と話している中で色々な話が飛び出してきて「龍山は、昔話じゃなくてまだ民話が続いている」とおっしゃったのも印象的でした。


MAWについて第三者に簡潔に説明する際、「ホストはアーティストによって地域の魅力再発見と発信をしてもらえるし、アーティストは滞在を通して地域でインスピレーションを得られる」という説明の仕方をしてきました。
しかし、こちらこそ今後の活動に対するインスピレーションを受けている、というのが本当のところです。

埼玉県から移住して地域おこし協力隊をしている身として、日頃から外部から来た者の視点で地域の魅力を再発見しようと試みていますが、アーティストの皆さんの審美眼はすごいです。とても深い。(言葉が浅い…)

アーティスト・イン・レジデンスというものに触れ、その有用性を知るきっかけとなった2年でした。
これからも団体として続けていけたらと思います。

龍山未来創造プロジェクト / 浜松山里いきいき応援隊 鈴木千陽