米原晶子「じっくりと語る」(3日目)
今の午前は共に静岡中部に滞在している折田千秋さんと共に、静岡市 観光交流文化局 まちは劇場推進課の多々良さんより課の取り組みについて、たっぷりとお話を伺う。2016年頃から市の構想で明言され始め、2018年に担当課が設立された「まちは劇場」というキーワードは、実は大道芸フェスティバルを実施してきた方々の中ではずっと前から愛言葉のように使われていた、というエピソードは、昨日の旧東海道の歴史と現在の街並みの重なりと変化を味わいながら歩いた翌日に聞いたせいか、なんだか妙に、そして勝手ながら感じ入ってしまう。新しい動きというのは、きっといつだって突然変異の様に起きるのではなく、誰かがどこかで取り組んできたことの積み重ねがあってこそある時目に見える形で浮きがってくるのだろう。静岡市の取り組みは、私自身が長年活動の拠点としている豊島区と重なる部分も多く、とても興味深く勉強になる。引き続き、情報をキャッチして学び続けていきたい。
その後食事を取りつつ2時間ほど、折田千秋さんと静岡で感じたことや日々の活動の中で考えていることを、あれこれ語り合う。そして折田さんの作品についても、詳しくお話を伺う。リサーチを通してその町の誰もが知っている風景を写真に撮り、その町で暮らす人たちがその場所の色をどう捉えているかインタビューをし、人々の印象の違いや幅を作品に落とし込むCollective imageというシリーズのお話を聞き、民主主義ってこういうことでもあるはずだよね、と思い至る。
マイクロ・アート・ワーケーションは、滞在の最後に作品やプレゼンなどのアウトプットを要求されないレジデンス企画。だからこそ今日の様に、この地で出会った人々がそもそも何を考えていて、それに対して自分自身は何を思うのか、を掘り続けることが許される。この贅沢な時間は、私にとっては期せずしてサバティカルを経験しているような日々でもある。