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本原令子「丸太とアスパラ(3日目)」

10月21日(金)晴れ

宿泊先は龍山未来創造プロジェクトの音楽家・鈴木のぞみさん宅だ。外から鹿や鳥の鳴き声が聞こえ、階下から彼女の歌声や楽器の音がする。家の中に鼻歌を唄う人がいるって、いい。人らしいって言うか、人の営みっていいなと思う。

朝食後、近くのお寺まで歩いた。昨日の夕方、木々に覆われた道が暗くてびびって引き返した道を行くと、木漏れ日が綺麗で気持ちいい。途中、ハイキング姿のご夫婦とすれ違い、人の住んでない家が数軒あった。

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長谷山くんの運転で、白山神社へ向かう。細い道を登っていく途中、木が倒れたり、土砂が崩れているところがある。危ないから明日、この木を伐採するそう。14時頃に空気がひんやりとした神社へ着くと、宮司の佐奈さんが迎えてくれた。正式な参拝をさせていただき、由来などを聞く。神社とお寺さんが一緒になった様式。神様と仏様を分けようとした政治の話や天竜川に流れてきた仏様を祀っていることを聞きつつ、標高800メートルの場所、ここまで歩いてきた道のりそのものが信仰だったんだろうなと思った。来週、ここでお祭りがある。私も日曜日に草取りを手伝う予定。

ドラゴン03

その後、山を降りて地元のお母さんたちが運営する「ドラゴンママ」で味噌こんにゃくを食べた。手作りのこんにゃくに、柚子入りの味噌が美味しい。店の外で梅としそを干していて、ゆかりにする紫蘇を味見した。夕食は、4月に龍山町へ移住してきた I くんと一緒に作る。車で30分くらいのスーパーマーケットへ買い出しに行った。


【メニュー】

・炊き込みごはん(鶏肉/にんじん/油揚/しいたけ)

・のぞみさんが育てたバジルと牛肉炒め

・チヅコさんからもらった里芋煮ころがし

・アスパラとほたての蒸し豆腐

18時過ぎにIくんが到着。農学部で木材料を学び、龍山の林業と木材を扱う会社に勤めて半年になる彼は24歳。

M「こっちに暮らして、どう?」


I「うん。わりとうちの会社に昔からいる人たちって、佐久間とか水窪とか、それこそ白倉とかこっちの人が多いんですよ。そういう人たちと話すきっかけになれてるから。それはすごい楽しい。なんだろう、ここに住んでないとこうだよねぇとか、地元の人にしかできない話ってあるじゃないですか?」

M「通ってるんじゃなくて、住んでるからできるってのは、あるね。」


I「あんまり年齢関係ないって思ってきたけど、けっこう歳の近い人がいるといいなぁと正直思います。住む環境は申し分ないし、全然いいんだけど。同世代の人がいない、人がないってのがしみじみ感じてますね。人って大きい。同世代で腹を割って話せる人がいるかいないかって。そういうの求めて街に行くのかなって思いましたね、すごく。」

M「あ、これ、もうちょい細く切れる?」
I「や、まだ。長い目で見てください。炊き込みご飯初心者なんで!」

人口504人、平均年齢69.2歳の龍山町で3日目の夜。

磯貝くん03

*トップの写真は、「アスパラを4cmに切って、豆腐にぱらっと乗せて」と頼んだら「丸太って4メートルなんすよ。すげー職場みたい。」と、Iくんがアスパラを豆腐の上に並べた。