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町田有理「げんなり(2日目)」

げんなり。何というタイトルだろう。稲取では、食べ物のメニューに時たま「げんなり」がついている。しかし、これは反語法なのだ。

昨日、ホストの方々から、「げんなり」とは稲取の言葉で「量が多く、胃が重くなる食べ物に使う表現」だと教えていただいた。それが今日「美味しいので、つい食べすぎてしまう食べ物に使う表現」だというふうに解像度が上がった。ついつい平らげてしまう食べ物に「げんなりする」だなんて、何という贅沢。何というツンデレ。

そんな訳で今日は、私の稲取「げんなり」食レポ記だ。

【is 稲取_005 げんなり】
今朝、私道さんと一緒に「おばあちゃんち」に朝食を食べに行く道すがら見つけた、おにぎり屋さん「たけや」のお品書きに釘付けになる。

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そういえば昨日、ホストの方々に案内していただいたハワイアンレストランの「KAHANA」にも「げんなりポテト(1kg)」というメニューがあった。

「KAHANA」のポテトはとても美味しかった。だからきっと「げんなりずし」も美味しいに違いない。そう考えて、つい「おばあちゃんち」で、美味しいご飯をお腹いっぱい食べたにもかかわらず(いや、そのためか)つい暖簾をくぐってしまった。お店の中で、おばあちゃんが、手で型に寿司めしをぎゅうぎゅう詰めている。

「げんなりは、もう終わってしまいましたか?」

「げんなりは、今からそぼろかけるんでいいんだったらいいですけど。金目鯛のそぼろ」

金目鯛のそぼろ、と聞いて好奇心が止まらなくなる。それください、と言って、おばあちゃんがそぼろをふりかけるのをじっくり見させていただいた。

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近くのつるし飾りの工房で、げんなりずしを買った話しをしたところ、「げんなりずし」と「つるし飾り」は、共に桃の節句の風物詩とのこと。昔の子供は学校から帰ると家事を手伝っていたけれど、3月3日は1日中、家事を手伝わなくてもよかったそう。子供たちは磯弁当を持って浜に遊びに行き、帰ってくるとつるし飾り(と雛人形)が飾ってある状態だった。その磯弁当が今のげんなりずしの原型なのだそうだ。

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つるし飾りとげんなりずしの雰囲気は、本当によく似ている。

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お昼過ぎに私道さんと合流して、「ふたつぼり」へみかん狩りに出かける。宿の近くまでマイクロバスで迎えにきてくれるのだが、みかんを狩りに行く自分が狩られているのかもしれない、と思うくらい運転手さんが意気揚々とされていて、なんだか嬉しくなってしまった。

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今のシーズンは早生みかんのみだが、12月の下旬からは、様々な種類のみかんを食べることができるようになるそう。7個ほど食べて、だいぶ「げんなり」した!(意訳:美味しくて食べすぎた。)ひとつ失敗すると、甘いみかんを選ぶ眼が育つようだ。

みかん狩りスコア:○◎△○○○○(2022.10.28)


みかん狩りから帰ってきてやっと、「げんなり寿司」を食べる。
もうすごく「げんなり」だった...!

甘いお酢の染み込んだご飯と、パラパラと乾いているようでいて、噛むとジューシーなそぼろにときめくまま、ペロリと平らげてしまった。

もっと「げんなり」したい!と思うくらい笑

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夜は稲取温泉に浸かり、帰りに「末広」で、稲取名物の肉チャーハンを食す。

噂に聞く「げんなり」...!!(美味)

改めて誤解のないように書くけれど、稲取の「げんなり」とは反語で、その実態は「美味しいので、つい食べすぎてしまう食べ物」のことだ。

もしかすると、旅人にはあまり教えたくなくて「げんなり」と書くのかもしれない。