見出し画像

清水玲「南伊豆歩道(入間-中木-石廊崎)、地域交流会(6日目)」

画像1


4:30に起床。一昨日から日中の気温が高くなってはいるものの夜明け前は肌寒い。昨夜炊いたご飯を少し温めてふりかけと梅干しを乗せて食べ、食後にコーヒーを飲むと体が温まってきた。荷物を片付けて5:30過ぎに入間に向けて出発。

画像2

画像3

少しずつ空が明るくなってきたが、山道に入るとまだ暗い。思いのほか道が荒れてて、倒木をくぐったり樹々の枝をかき分けたりしながら登る。こんなに荒れてるものなのかなと少し疑問に思ったが、どう見ても山道らしい人の手が入った石段や土留めなどがあるし、ルートを示すピンクリボンも見かけるのでそのまま足を進める。

画像4

登り切ったところに火山角礫岩の切り通しがあり、間違いなく人が通る道だと思ったが、やはり何だか様子がおかしい。そこから下り坂になり、道はしっかりと続いているが海から遠ざかる方向に向かっている。とは言え今更引き返しても時間のロスなのでそのまま中木方面に向かって山を下ることにした。

画像5

下り道の途中、目の前を猪の群れが猛烈なスピードで駆け抜けて行く。こんなに速いのかと驚いているうちに視界から消えてしまい、またしても写真を撮ることが出来なかった。しばらく行くと沢に出た。海沿いを歩く予定がまさかの沢下り。昼前から下賀茂で交流会もあるのでずぶ濡れになるわけにも行かず、水に入らないように岩をつたって川を下る。

画像6

無事に道路(下田石廊松崎線)に下りることができ、中木港に到着。予定外の道を歩くことになってしまったが時間的なロスもなかったのでよしとする。漁師たちが集まって焚火を囲みながら網を束ねたりしながら談笑している。中木港は渡し船のシーズンが終わったとは言え、週末だからか朝の7時だというのに駐車場にはかなり車が停まっていた。(水曜日に潜りにきた時はガラガラだった。)

画像7

画像8

中木にはトガイ浜まで続く迫力のある大規模な柱状節理や海蝕洞があるが、落石の危険回避のためか現在は立ち入り禁止になっている。(上の2枚の写真は2年前に撮影したもの)

画像9

画像10

中木から石廊崎までの道は、長津路歩道という名称に変わる。石丁場跡の大きな洞窟や、四国八十八ヶ所供養塔や方角石跡があり、昔から様々な時代毎に人の手が入っていることを実感できる。

画像11

8時過ぎに石廊崎に到着。9:02発の下田・下賀茂方面に向かうバスが来るまでひと休み。
妻良から石廊崎まで沿面距離23kmほど、累積標高は2,455m。ゆっくりと歩きながら風景と自身の内面と向き合う貴重な時間を過ごすことができた。

画像12

画像13


10:40頃にローカル×ローカルに戻ったら、すでに交流会に参加される方々が集まっていて自己紹介を始めた頃だった。「カタルタ」というカードを使った自己紹介。トランプの絵柄に、「だから」「少なくとも」「さすがに」といった接続詞や副詞などの文をつなぐ言葉が書いてあり、自己紹介をひとしきり話し終えたところでカタルタを引き、引いたカードの言葉に従って話をつなげる。これがけっこう面白くてかたくなりがちな場の空気を和ませてくれる。

交流会には、役場の方や飲食店を経営されている方、ジオガイドをされている方など地元の方々と、アーツカウンシルしずおかの立石さんと若菜さん、僕を含めた3人の旅人が参加して、南伊豆のことや今回の滞在のことなどを中心に意見交換。意見交換というよりは参加者それぞれの視点で楽しく話す、という雰囲気だった。

意見交換会についてはまとめの記事であらためて書こうと思うが、役場で勤めながらも副業申請を出して空家を使って簡易居酒屋やゲストハウスを手づくりで運営されている話や、広い土地と古民家を自分で手を入れながら自給自足の生活を試みようとしている話、今回の、MAWの企画、あるいはアートと地域のつながりについて地元の方から質問が出たりして、1時間半ほどの会だったが、南伊豆での滞在経験と交流会での会話が交感するような濃い時間だった。

交流会のあと、ジオガイドのたまさんに、自分が今朝歩いた入間から中木に抜けるもう一つの道について聞いてみたら、たまさんは子供の頃によく通ってたけど今ではすっかりどこだったか分からなくて気になっていたの、という話になって盛りあがり、今度ぜひ一緒に歩きましょうという約束をした。

交流会の後は、イッテツさん、アーツカウンシルの立石さんと若菜さん、旅人の西本さんと関根さんという顔ぶれで商店街通りにあるベトナム料理屋で昼食をとりながら、交流会や今回の旅を振り返るような話を中心に意見交換。

画像14


14時頃に解散となり、荷物をまとめ今晩の宿泊に向けての準備をする。「道の駅 下賀茂温泉 湯の花」まで歩き、地元の野菜や「大喜米」という農薬不使用栽培のお米、パン、猪肉、サザエや鮑、金目鯛と鯵のひらき等を購入。買い出しがひとしきり終わった頃に、家族たちが車で合流。5日ぶりに見る子どもたちは少し大きくなったように見えた。

今晩の宿泊先、蓑掛岩や石廊崎を望む岩礁の真ん前にたつ一棟貸しの別荘「銀の海 しおさい」へ。

画像15

部屋に入るとちょうど夕暮れ時で、海を望むテラスに出る窓を開けると、穏やかで少し肌寒い海風と日中の陽射しで温められた室内の空気が混ざりあい心地よかった。火を起こし、南伊豆の食材を楽しむ。歩いてきた海岸沿いの風景を眺めながら。

画像16

画像17

画像18