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石黒健一「宇佐美まちまるごとライブラリー、吉正のいなり寿司、壺中天の本と珈琲、ISOLA、聚楽院伊東別院、VISIONARY INSTITUTE(6日目)」

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朝再びヤマモトコーヒー一番館へ。昨日お話を伺ったお母さんに重岡さんのご様子を報告しに行く。その道中で風呂めぐりのポスターを見つける。伊東には源泉掛け流しの公衆浴場が七つあり、それぞれが七福神にかけた名称になっている。あまり知られていないが、実は伊東温泉は別府、湯布院温泉に次ぐ湯量を誇り、1分間の湧出量はなんと約32,500リットル!という静岡県下一を誇る温泉地である。普段温泉と聞けば寝食を忘れて飛びつく私が、残念ながらこの滞在では一つも浴場を回れなかったので、また改めて浴場巡りだけで再訪したい。

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食後チェックアウトをし、薄羽さんと合流して宇佐美地区へ。ヒロ画廊での交流会にも来て下さっていた鈴木真紀子さんが発足した地域活性団体「うさみみ」による「宇佐美まちまるごとライブラリー」という街歩きのワークショップに参加する。「境界線」をテーマにこの宇佐美の街を案内してくれる。

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最初の出発地点は宇佐美で唯一の書店の文化堂。店主の遠藤さんから店舗の説明と店先にあるエロ本自動販売機を見せていただく。今年の9月に県の条例に基づき自販機での成人雑誌販売が中止となったことをきっかけに、この販売機を活用できないかと考え生み出されたのが「エロ本自販機ギャラリー」

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現在はギャラリーがオープンして最初の企画が開催されていて、この販売機の由来に相応しく「アートとエロの境界線」をテーマに、荒木経惟の写真集や「日本エロ本全史」、「エロ本自販機探訪記」といった書籍が展示されている。アラーキーの写真集は伊東出身の女優・鈴木いずみをモデルとしたものが選ばれるなど街の文脈とも結びつけられていて、四段ある階層を巧に使い、非常によく練られた企画であった。

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文化堂の店内では、ギャラリーに展示されていた本を実際に手に取ってみることができたり、書籍販売の他に駄菓子なども置いてあり、地域に密着した様子が窺えた。

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その後ビーチを歩き、対岸の江戸城石垣石丁場を臨む。

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真ん中の石は運ばれずに置いてかれた石材。セリ矢のための穴が直線上にあいているのが見える。奥には4120のサンハトヤ。

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道中に参加者の皆さんとお話しする。アーツカウンシルしずおかの若葉さん、立石さんともやっとお会いすることができた。日本昔ばなしにも登場する春日神社の大楠。

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宇佐美駅前の案内板の足元にあるストーンペイント。正体不明のVEGOという方がいつの間にか設置しているそう。伊東のバンクシーVEGO。

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最後は喫茶・食堂やまふじで感想会。なぜか流れで参加者全員でフロート。
これまで祖父母のいた修善寺へ向かう途中の通過地点という認識しかなかった宇佐美の街が、ライブラリーという視点から紐解こうとする鈴木さんたちうさみみの活動に参加したことで大きく印象が変わることになった。

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エロ本自販機ギャラリーにはじまり、街歩きでの宇佐美の歴史についてのレクチャー、昔からの八百屋店をキッチンも有するイベントスペースへとリノベーションした「やおやの内野」など、車で通り過ぎるだけではわからなかった街での様々な人の活動や歴史に触れ、シャッター街などの地方都市が抱える共通の問題を自身が得意とするものを通して街を開いていこうとする人々の活動が点と点を結ぶようにして宇佐美の街をより多様な輪郭を作り上げる姿を見て大いに触発された。

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ここ宇佐美も北緯35線上の街。一宮での日々を思い出す。

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お昼ご飯は伊豆高原の吉正のいなり寿司をテイクアウト。人気で昼過ぎには売り切れ。

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ヒロ画廊の交流会でお会いした舘野茂樹さんのお店「壺中天の本と珈琲」へ。

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なんと旅人の周さんはこちらのスペースで来年4月に展示することに。展示の打ち合わせも兼ねて皆でお邪魔した。

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壺中天でいなりと唐揚げのお弁当をいただく。ほどよい甘味の皮、優しい酸味のシンプルな酢飯に癒される。

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アトリエワン設計による建築は円弧状にカーブした不思議な形。この曲面の壁と本棚中央のスペースで周さんは展示を行う。

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本と珈琲という名前の通り、舘野さんによるハンドドリップコーヒーを片手に美術関連の豊富な書籍をゆっくりと読むことができる静かなスペース。過去のドクメンタや最新の展覧会のカタログまで充実した内容の本棚から手に取る本に非常に悩む。

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この度最後となるお宿「ISOLA」にチェックインした後、薄羽さんの特別な計らいで夕暮れの聚楽院伊東別院へ。吉村順三の遺作と言われるこのモダニズム建築的な様相の寺院は京都大徳寺の塔頭として建設された。

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1997年に岡崎重代によって寄進された当院は、以前は三千家が交代で毎月28日に行う利休忌法要として茶会と月一回の坐禅会が行われる茶禅のための実践道場として創建された。

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夜の特別拝観ならではの風景が広がる。モダニズム建築らしい大型のガラス窓に反射する室内の様子が幽玄さを醸し出している。

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千住博の襖絵には氏のアイコンとなる滝以外に砂漠や龍も描かれている。茶室は京都の聚光院本堂にある閑隠席の内装を再現した写しであり、伊東別院の内部はさながら美術館のようであった。

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この晩のディナーに薄羽さんの研究所VISONARY INSUTITUTEへご招待いただく。
リサさんが自家菜園のサラダやパスタを振舞ってくれた。外側がカリッと、中はしっとりふわっとした無添加のパンがとても香り高く印象深い味わいだった。

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ここ伊東・東伊豆でのワーケーションの振り返りやそれぞれが現在の活動まで辿りつくまでの物語など様々な話が広がった。

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ディナーの後、歩いてISOLAまで。薄羽さんが送ってくれる。明日で伊東を離れるのがとても名残惜しい。