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戸井田雄「稲取滞在まとめ(7日目)」

最終日の朝、地元の方から「イベント期間中でも早朝なら稲取高原に車で入れるよ」と聞き、三筋山の山頂に朝日を見に行きました。


(最終日だけ思ったことをそのまま書き表しやすいように、ですます調にて記載してます。)

朝日に染められたすすきの高原の先に見える、稲取の半島とまちは本当に美しく、日の光を待つ時間も含めて、最後まで良い時間でした。

途中で物音に振り返ると、鹿の親子がすすきの間を駆けており、滞在期間中に猿の親子に鹿の親子も見れて「小さいアニマルキングダムだったな」などと思い返し、ちゃんとしたアニマルキングダムにも改めて来たいし、まだまだ行けてない場所も多いな、、、なんて振り返りました。

右下に小さく父親らしきシカが映ってます

今回の滞在は、稲取の静寂の中で忘れてたことを思い出し、自分とまちの距離の取り方や関わり方を再認識し、そしてこれからの活動の方針の目処を立てることが出来た本当に貴重な機会でした。

まずはこの機会を作ってくれた、so-anの荒武一家と藤田さんに、east dockの利用者の皆さん、一緒に滞在してくださった旅人の私道さん・菅原さん・町田さん、稲取に暮らす方々と、アーツカウンシル静岡に御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

昨年、自分がMeets by Artsとしてホストを務めて、旅人の時間の過ごし方を羨ましく思い、今年は旅人で応募をしましたが、ホストと旅人の両側から見ても本当に良い事業だと思います。

まとめと振り返りに関しては、「事業として」「稲取とso-anに関して」「個人的な振り返り」の順番で記載をさせていただきます。

マイクロアートワーケーションに関して

今回のマイクロアートワーケションの事業に関しては、自由度が高く説明と成果が分かりづらいかもしれませんが、だからこそ本当に貴重な時間と気づきを生み出せる大切な事業だと思うので、長期的な継続が実現できることを祈りつつ、下記の2つが希望としては頭に浮かびました。

①旅人によっては、途中で一旦帰宅して、時間を空けての再度の訪問するスタイルも可能になると、自分のように考えを整理するのに時間がかかる人にはありがたいかと。

②1度体験したホストや旅人が、もう少し軽度の支援で活動を継続できる仕組みがあると有り難いと思っており、カウンシルほどでの支援は出来ないけど、地域の団体やアート関係者がMAWを実施したいと思ったときに、アートワーケーションを受け入れられる団体をサイトなどで紹介したり、旅人希望者とホスト希望者の常時の斡旋などが実現すると本当に理想的だと思いました。
(もしそれがあるなら、ホストと旅人の両方で登録したいという個人的な希望です。)

また、昨年の熱海でホストを務めた時にはコロナの関係で旅人の同時滞在が一部でしか実現出来ませんでしたが、今回の稲取では他の旅人と同時に稲取に滞在することが出来、ホストの負担は大きいかもしれませんが、自分以外の旅人の「まちの見方」や「関わり方(アプローチ)」からも気づきと学びを得ることが出来ました。

展覧会で作家と一緒になるときは、同じ展覧会に作品を出すというある種の決まった共有のゴールがありますが、今回の「目的は滞在することそのもの」という自由な時間で一緒になる機会は少なく、自由度が高い分、共有できる情報や考えの幅が広がり、本当にユニークで意義のある取り組みではないかと思い、今後の継続を切に願っています。

稲取のまちとホストのso-anに関して

稲取とso-anの印象としては、まずは受け入れてくださったことに感謝しつつ、ホストとして作家との関わりには少し悩んでいる(荒武さんの性格的に、実はあまり悩んでない可能性もある)のかなとも思いました。

印象的だったのはご飯を食べながらポロッと話した「滞在する旅人さんに、まちや自分たちの課題を話しちゃってもいいんですかね?」という言葉で、これは本当に作家によるので、随時ホストがカウンシルに気軽に相談出来る形があると良いのかもしれません。

その後の会話で、荒武さんがやりたいことの一つに「これからの(次の)稲取の風景を探している」(違ってたら本当にすみません。。。)という言葉があったので、自分から見た稲取の風景と感想を記載しておきます。

滞在してすぐの時は、稲取の静かさに関心を持ち、それがまちの魅力ではという仮説を持っていましたが、歴史を調べ、まちの人と話す中で、その静かさとは裏腹なまちの激しさが面白いと感じました。

漁業、若者の集まりとしきたり、昭和30年に入ってからの民間主導の温泉開発、戦火、みかんバブル、お祭り、金目鯛に特化した漁業、伝統産業の復活と観光資源化、若者の移住

ただ、それらがグラデーション的につながっているのではなく、分断的になっていて、それが現在進行形でまた新しい動きが起こっているような感じがしており、それは区ごとに仕切られたお祭りなどの影響や、海と山と温泉の産業の違いの影響にあるのか、今回はその気配を掴むだけで終わってしまったので、もう少し掘り下げてみたいという心残りはあります。

その分断は決して否定的な意味ではなく、だからこそ多文化を横断的に楽しめるような面白さもあるので、それが今後どうなるのかを楽しみに思いつつ、それが関係しているかは分かりませんが、建物的には統一感は特に感じられず、もし真鶴の「美の基準」的な何かしらの景観コードを作ろうとするなら、造形的なコードではなく、暮らし方のコードを作る感じになるのかな・・・などと妄想してました。

もう一つの確かめたかった稲取の仮説は、まちの伝統やつながりに「港町特有の若干の強制力(暴力性)」が感じられましたが、今までの他の地域や活動での経験として、強制力を持ったつながりで育ったコミュニティの方が、視野の広さと気配りが育つ可能性があると感じており、もしそうなら地域的に言葉やコミュニケーションは荒いですが、非常に優しいつながりで守られている地域の可能性もあり、もう少し時間があれば飲み歩きながら地域の人と関わってみても面白かったかと思っています。

今回は期間が短く、全体的に面白さの片鱗を感じるまでで、そこから深掘りながらより楽しむことは出来ませんでしたが、だからこそライトに多くの可能性を知れた側面もあり、それはそれで楽しい経験でした。

今回の滞在での個人的な振り返り

個人的な振り返りは冒頭と同じ文章となりますが、今回の滞在は稲取の静寂の中で忘れてたことを思い出し、久々の知らない街の長期滞在の中で、他の旅人と時間を共有する中で自分とまちの距離の取り方や関わり方を再認識し、そしてこれからの活動の方針の目処を立てることが出来た、本当に貴重な機会でした。

旅人が決まってから「事前にリサーチをした方が良いか?」など、今回の企画と地域との関わり方に悩み、自分が旅人の中でも「制作者」「企画者」「まちづくり人材」のどの立場でまちに関わるかに少し悩みがありました。

ただ、滞在を通じて、そこが悩めるということは、自分の中で複数の視点を持って、複眼的・多角的にまちが見れる利点だと思えたことは、今後の熱海のまちでの活動においても本当に大切な気づきだったと感謝しています。

前項で「最初は稲取の静寂さに関心があったが、違かった」と書きましたが、確かに風が吹けば様々な音も聞こえますが、そこにある音は都会の雑踏や車の音ではない風や海の音で、日が沈むと静かさと星の綺麗さに包まれるまちであり、そこでゆっくりと考える時間が作れたのは本当に贅沢な機会でした。

「静かさ・朝日・星空・温泉・美味しいご飯」、これだけ揃っている贅沢なまちに、「予算だけついて活動に口出しされない」という理想的な状況を付けて送り出されたことは本当に幸せで、この機会のきっかけになった、昨年熱海に滞在してくれた旅人の人たちにも感謝してます。

そして、もし前の稲取に関しての項目で記載した「港町だから荒い感じがするけど、実は気配りの人のまちかも」という仮説が正しいのであれば、こんなにも「悩むこと」に向いているまちはなく、位置的にも熱海からは1時間ほどで来れる程よい距離にあるので、定期的に頭の整理で通うという選択肢が頭をよぎっており、次来た時にまた一歩踏み込んで稲取を体感できるのを楽しみにしています。


最後に、本当は滞在が終了してから数日の時間を空けて、自分の中で記憶と感情が咀嚼されてから書いた方が良い気がしつつ、長らく空けていた熱海に戻ったら最後、まとめる時間もない気がしたので、最終日に即日書かさせていただきましたが、もし時間が空いて何か追記したいことや、考えが変わった場合には、また追記をさせていただきます。


レポート的に長々と記載しましたが、結論としては本当に良い事業で、最高の時間でした!!

本当にありがとうございました!!!!