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町田有理「椿と人魚と死なない私(4日目)」


【is 稲取_007 椿と人魚と死なない私】
この日曜日、稲取はイベントが目白押しだった。しかし私は今日、朝の4時からなかなかパソコンを離れられなかった。それならば今日は一日、リモートワーカーのイメージで暮らそう。なんとなくそう決めて朝、「ダイロクキッチン」の古本市に行く。

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「ダイロクキッチン」は、消防団の元活動拠点。現在は、地元の方々の運営するカフェになっている。抹茶ラテをいただきながら、地元の方と稲取の話に。

「稲取は細い道を、地図を持たずに歩くのがいいの」

稲取の道は、扇状ではない。強いて言うならば、あみだくじだ。それも、絶対にくじのゴールが想像出来ないように画策して横線を引いたあみだくじ。

なので、待ち合わせの時間などがあるとつい、グーグルマップでルート検索してしまうのだけれど、初日の夜に宿までの道を教えていただいた時点で、それがいかにつまらない事かは、それとなく感じとっていた。

見るべきポイントはトタン屋根と、おじいちゃんおばあちゃんの暮らしぶり。おすすめは、海辺のシーグラス拾いとのこと。


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古本市では、元々読みたいと思っていた本が、無料提供の箱に入っていて驚く。しかも、昨晩の歓迎会でお世話になったIさんの旦那さまの元蔵書だそうだ。この組み合わせ、今日は神社巡りをすると、何か独特な1日が過ごせるかもしれないと思う。

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八幡神社。源の頼朝が水ごりをした、という謂れがあると聞いた。

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八幡神社の狛犬は珍しく眼と口に赤が挿してある。つるし飾りのうさぎの赤い眼には厄除けの意味があると聞いたので、おそらく辟邪の意味なのだろうと思うが、それにしても結構、びっくりした。

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それから急な坂を上がり、どんつく神社へ。

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稲取岬の灯台近くから見た海はパール色で、眩しい。朝市で金目鯛の釜飯を食べたかったのに、散歩が止まらない。「愛恋岬の歌碑」の横を抜けて、ホストの方に教えていただいたおすすめスポットへ。

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ダイロクカフェで聞いた通り、手前の屋根はトタン屋根だった。

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トトロのめいちゃんが迷い込んだような、そそられる道。

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一旦宿へ戻り、自家製ハヤトウリの浅漬けを食べる。一昨日に「山田書店」でいただいた「稲取東区の道祖神石像について」という記事を読む。

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夕方に蕎麦屋「ほてい」に行く途中で、記事にあった道祖神と八百比丘尼の石像に遭遇。今はわからなくなっているが、折口信夫が『古代研究』を記した当時は、腕に椿の花を持った姿が確認できたそう。全国的に珍しい「伊豆型道祖神」の中でも、唯一の貴重な石像なのだという。八百比丘尼といえば、誤って人魚の肉を食べ、不老不死になった娘の諸国巡礼伝説だ。横にイルカの供養塔があるのを見ると、「あ、やっぱり、人魚ってイルカなのだな」と感慨深かった。

記事によれば、八百比丘尼を伝えた口承文芸は、日本文学の発生に大きく関係しているそうだ。日本文学と言えば...と思い、記事の執筆者を見ると、今朝いただいた2冊の本の持ち主。つまりIさんの旦那さまだった。

ちょっと感動。

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予定通り「ほてい」でお蕎麦を食べ、満腹でぼぅっとしながら、どことなく八百比丘尼もどきの体で夜の路地を散策。

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明日のハロウィンを先取りしたような、そんな1日だった。