合同会社so-an「虫の目、鳥の目、魚の目」

MAWのホストになるのは2回目になります。合同会社so-anの荒武です。

弊社は自分たちの暮らす港町、伊豆稲取をフィールドに地域の未来を創造すべく、日夜空き家の利活用を通した事業を展開しています。

人口が20年後には現在の半分まで減少するという推計が出ているこの土地の港町の風情を地域に関わる人たちの力を合わせて、未来を見据えて維持・更新していくことが私たちのミッションです。

多様な視点を地域に入れることが、これからの選択肢を増やすことにつながると考えMAWのホストに参画させてもらっています。

前回のMAWを経て、旅人のみなさんが残してくれたヒントを手繰りながら自社にて運営する宿泊施設の滞在プラン「風待ちステイ」を開発しました。


風待ちステイとは…港町稲取の暮らしや情緒を体感しながら、ご自身の内省を深めていただくためのこの土地独自の滞在スタイルを探求するための宿泊プランです。

風待ちステイでは、旅の初めに弊社スタッフや港町の住人たちと対話をしながら、旅人の心境に合わせて滞在期間内の過ごし方をコーディネートします。

一回目のMAWを経て得られた学びとして、同じ町への滞在でも旅人によって町の見え方が様々であるという点で、ある人は子連れでお子様の変化を通してこの町を見てくれたり、ある人は音の風景「サウンドスケープ」に地域の独自性を見出してくれたりと、私達がただ暮らしているだけでは知り得なかった様々な“稲取”を見出してくださったことがヒントとなりました。

旅人の視点を借りて一緒に旅を疑似体験しながら自分たちの町を暮らしてみる。
そこから新しい地域の可能性を見出すことができるのではないか?という仮説に行き着き、滞在プラン化しました。

※2022年6月〜8月に実験的に運用しました。次回開催は未定です。
(リンク:https://www.so-an.co.jp/kazemachistay/

2回目となるMAWでもホスト団体に選んでいただいた我々ですが、今回は旅人のみなさんとどのようなコミュニケーションが生まれ、自分たち自身にどのような変化が起こるのか、稲取でのホスト力を一年間磨き続けてきた自分たちだからこそ、新たに稲取に訪れる旅人のみなさんに見出してもらえるであろう地域の新しい可能性に期待が高まっていました。

そして迎えたMAW初日。
今回は同時期に4名の旅人の受け入れをさせてもらうという計画で、初日はオリエンテーションも兼ねて全員同じ行程で町をご案内。
初日の地域案内も終盤に差し掛かり、旅人たちのMAWについてのディスカッションに耳を傾けていると…
「MAWとは他のアートプログラムのようにアウトプットが要求されない、指定の土地に滞在すること自体が目的というなんとも余白が大きな逆に考えさせられるプログラムだよね。」
といった話が交わされており、ホストである自分の目線で旅人たちを案内することが本当に正しいことなのかどうかがわからなくなってしまいました。
旅人たちに自分のフィルターという先入観を作ってしまうのではないか、それはこれから始まるMAWでの稲取滞在に大きな作為性を与えてしまい、旅人たちの滞在に影響を及ぼしてしまうのではないかと急に地域のことを話すことが怖くなってしまいました。

そんな体験もあって初日以降は、旅人のみなさんとは距離感を保ちながらみなさんの滞在をサポートできたらと考えを改め、随時滞在記録であるnoteの記事を拝読しながら、自分ができる立ち回りを模索させていただきました。

しかし記事を見る限り、地元民である我々では到底考えられない場所まで徒歩で辿り着いている旅人や、町の人達からの聞き取りなどのリサーチから地域を読み解く旅人など、縦横無尽に町を探索する旅人の皆さんの挙動を見ているうちに、初日の夜に自分が抱いた不安は杞憂であったことが明らかになってきました。
百聞は一見にしかずという言葉があるように、自分が短時間で提供できる情報に左右されることなく、それぞれの旅人がそれぞれの視点から稲取という町を深堀りしてくれていて、毎日更新される記事をその翌日の朝一に読むことを心がけていましたが、旅人たちの記事はディープで濃密な内容に富み、一日の始まりから胃がもたれてしまうくらいの読み応えでした…(笑)

旅人たちが見た景色や、地元の人たちと交わした会話は当たり前にいつもこの町にあるものなはずなのに、それぞれのみなさんの受け止め方に特徴があって新鮮な印象を受けました。
旅人のみなさんが見たこの稲取という港町を追いかけることで、日々の足元の暮らしに向きがちな目線がいかに多くのものを見落としてしまっているのか、見えなくなっているかを思い知らされたと同時に、固定概念に囚われてしまっている自分自身の視点を疑い続けることの大切さを再認識する機会となりました。

今回MAWにて稲取を訪ねてくださった、戸井田さん、菅原さん、町田さん、私道さん、みなさんが滞在中に残してくださったこの町の見方は私たちにとって新しい気づきの宝庫でした。
この気づきをしっかり地域の糧とさせてもらうことがホストである私たちの役目だと思っているので今後も稲取に注目していただけると幸いです。
これからも私たちはたくさんの目をこの港町に引き込んで、ここで起ころうとしている衰退の未来を変えていきたいと思います。