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高野ゆらこ「9月5日晴れ3072文字(4日目)」

朝。右目のものもらいの調子がだいぶよくなっている。
温泉のおかげか、平安仏像館でおびんずる様(なでぼとけ)の右目をしこたま撫でくりまわしたおかげか。
いずれにせよ、目の不快感がなくなって嬉しい。

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このnote、わたしは自分のSNSでも日々リンクを紹介しているのだけど、そしたら俳優のお友達(M子)から嬉しい報告。
「note読んでるよ!河津に住んでる友達にも読んでもらった〜〜」
友達M子と、河津で宿の女将さんやってるSさん、元々は東京でダンス仲間だったそうで。
えーー会いたい!となったけど、Sさん女将業の他に地元でダンスを教えてらっしゃったり、アテンドもされていたりめちゃくちゃ多忙で予定繰り合わせられず。
ホストの和田さんとSさんもお友達のようで、世間狭いねー!となった。
Sさんと会えなかったのは残念だけど、Sさんから

『逢えない時間が愛育てますよ、きっと』

とLINEがきたので、あーもう好き、絶対会うぞ、と思った。

さて今日は、2日目にお話ししたつるし雛を作ってらっしゃるマダムと、午前中からみっちり吊るし飾り作りの予定。
朝10時、「おはようございまーす」
そういえば何時間くらいかかるかしらと思っていたところ、

「今日、何時までいられるの?」
「ええと、午後4時半から役場で意見交換会があって…」
「じゃあそれまでには、ウサギとみかんが作れるわね」

まさかの6時間コースでした。

じっくり腰を据えてやるにあたり、改めて自己紹介しつつ。
マダムは河津町の文化協会の会長職を長く務めていらして、町のどこに行っても「つるし雛の静子さん」と言ったら「ああ!会長さんね」となるくらい有名な方。
河津の町を文化芸術の側面から盛り上げたいという、町に対する愛が深い方だなあという印象。

おそらく、女性である静子さんは、男性社会の町の中で色々衝突したりもあったんだろう。
それは男性とだけでなく、同性側からも突出した部分をやっかまれたり、『出る者』の苦労がかなりあったように思う。
それでもケラケラと笑いながらおしゃべりする静子さんはとても強くて、その原動力は「河津が盛り上がらないと!」と何度もおっしゃってたのが印象的だった。

実は、河津に滞在するにあたりHPを見ると町会議員さんが全員男性だったのがずっと気になっていた。
静子さんに聞いてみる。

「静子さんは町会議員にならないんですか?」
「町会議員になったら、みんなの意見を聞く側でしょう。わたしはね、外側から意見を言いたいのよ。それに今は自分のことで手一杯!」

「でもね、わたしが立候補したらトップ当選よ。なんたって河津の文化協会の会長だもの」

フフッ、と笑う静子さん。痺れました。

そんな深いおしゃべりをしながら完成させたのがこちら。
はい可愛い〜〜〜〜〜〜〜

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うさぎ2匹、みかん2種。温州みかんと伊豆名産ニューサマーオレンジ。
なんで2つずつかというと、吊るし雛は必ず対にしなければいけないんですって。
できの良い生徒ではなかったので、何度も静子さんのお力を借りました。
特に、一旦中表に縫ったものを「鉗子」でひっくり返すのは全くできなかった…手芸用鉗子らしいけど、見た目はほぼ手術用のものと変わらない気が。

鉗子使いの静子、かっこいい。

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でも、手のひらに乗せながら
「ウサギは目鼻が難しいのよ。この子は可愛いわねえ」
と目を細めながら、わたしの作ったほんの少し不恰好なウサギを優しく見つめる静子さんは少女のように可愛かった。

結局ギリギリまで静子さんレクチャーを受けていたので、和田さんに車でピックアップしてもらって急いで役場へ。

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マイクロアートワーケーション滞在中に一度、旅人3人とホストの方と、アーツカウンシルの方、あと町の方3人とでざっくばらんに町のことなどお話しする意見交換会。

町の方は…町長、副町長、イベントごとなどに携わる企画調整課の課長さん。
役場の応接室で…って、全然ざっくばらんじゃない!!!

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名刺交換タイムからの自己紹介タイム。
トップバッター、目の前には町長。
ひえー、と思いつつ、とにかく笑顔で!
ここ何日かで得た『自分が笑顔になるほど周りの人が心を開いてくれる』を信じて。

うん、空気いいぞ!
井原さん、柴田さん、自分の作品集とか見せちゃってる。かっこいい!

これは、いけるんじゃないか…?
と、なんとなく考えてた作戦をぶつけてみる。

「演劇の現場やワークショップでやる簡単なコミュニケーションゲーム、みんなでやりませんか??」

「ええっ…!!??」

そうだよね、そうなるよね。でも負けない。引き下がらないよもう言っちゃったから。

「自分の呼ばれたいあだ名を全員言いましょう。わたしは、ゆらちゃんで。」

井原さんがおずおずと「あ、じゃあ、コロで…」

「わたしは、ばしで…」柴田さん。

「わたしは、ちゃんわか」アーツカウンシル若菜さん。

「わたしは、普通なんですけど、さおりんで」アーツカウンシル立石さん。

「わたしは、わーちゃん」ホスト和田さん〜〜

「じゃあ、よっちゃんで」課長!

「よし坊にします」副町長!

「じゃあ僕はね、ちょっと変わったところで、今日誕生日なんですよ」

町長の、驚きの発言に全員固まる。
え??どゆこと?

「えっと、じゃあ、あだ名は『誕生日』でいいですか…?」

わたし、このゲーム色んなところで色んな人とやってきたけど、ガチで、初めてです。自分のあだ名「誕生日」にした人。
それが、河津町長。最高すぎる。おめでとうございます。

ゲームは、あだ名を呼び合って一本のルートを作る。
わたしから始まって→よっちゃん→ばし→わーちゃん→誕生日…みたいな感じで最後の人は→ゆらちゃん、に戻る。これが一つ目のルート。
さらに指パッチンのルートをもう一つ作る。これは、さっきあだ名を読んだ人とは別の人に指パッチンする。こうすると、2つのルートが出来上がって、それをぐるぐる回していき、うまいこといくと4つくらいまでルートを作れる。3つ目は移動しながら相手にタッチする、とか、ボールを投げる、とか。

わたし以外初めての方だったので2ルート回せたらいいほうかなーと思ったのだけど、2ルート、なかなか回らなかったな〜〜。
でも皆さん、おそらく?夢中で一つになれていたし、河津でやってみたいこととして例えばこういうゲーム的なことを通して、おそらく俳優の技能である「相手に心を開くこと」を伝えられるようなワークショップとか…なんてぼんやり考えていたので、そのとっかかりをまずは町長(誕生日)に知ってもらえたのはよかった。
…不安だったけど!!!

会が終わり、役場を出てアーツカウンシルの方々(ちゃんわか、さおりん)と少しおしゃべり。

「ぶっ込みましたね〜〜!」とみんなから口々に言われる。
大丈夫でしたかね…???
「いやー、よかったですよ!」

ああ、よかった…。でも、この何日かで、旅人アンドホストチームが絶対にバックアップしてくれるっていう信頼もあったからできたんだと思う。
流石に一人きりでは勇気出なかったと思うし。

さ、今夜はイノシシ食べよ!と、ばしとコロが滞在するなごみの里へ。
キッチンででかい肉を切る。難しい!でも楽しい!

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スーパーで買ってきたお刺身とか、わさび味噌つけた野菜とか、押し寿司とか、全部全部美味しくて、思い返しても「誕生日」のくだりは面白すぎて笑い転げて、コロさんが持ち込んだ激ウマ酒『作』を飲んだりして、

…まー、そりゃ、日記書くの次の日になるね。
日々、お酒を飲むか飲まないか、赤裸々に言っているのでもう今夜のことを予告してしまうと、今日は、絶対、飲みません!

さ、午前の遅れを取り返さなきゃ。