高野ゆらこ「9月7日曇り一時雨3189文字(6日目)」
朝6時起床。
日曜に乗ったEバイクの筋肉痛が今頃バキバキにきた。
肩背中お尻がもれなく痛い。これはまずい。
体中にタイガーバーム的なものを塗りたくり、ホスト和田さんが迎えに来てくれたので車に乗り込む。
「これ、持ってってー!」
宿のお母さんがおやつを渡してくださる。優しい。
「頑張ってねー!」
さて、本日のミッションは。
わ さ び 収 穫 !
事前に、和田さんから「河津でしたいことはありますか?」と聞かれた際、もともと自分が区民農園を借りて野菜を作ったり、福島県相馬市で田んぼアート活動をしていることもあって農作業が好きなので、農家の方のお手伝いなどしながらおしゃべりできたらいいな、などふわっとしたことをお伝えしたところ、
「せっかく河津なので、わさびの収穫しませんか?」
という願ってもないチャンスに即答で
「ぜひ!!!!!」
とお願いしたという経緯。
トイレは済ませておくように、とわさびのおじさんに念押しされたけど、
最悪もよおしちゃったらもう仕方ない、よね…なんて会話する車内。
(後から調べたら、トイレに関してこんな記事を発見。綺麗な水を守るためにはなるべく用も足さないほうがいいみたいです🚽)
町から山の方へぐんぐん進む。
河津七滝(かわづななだる)という、河津の観光名所がありそこの名物が「わさび丼」。いくつかお店があるのだけど、その中で『孤独のグルメ』で紹介されたのが「かどや」さん。
店主の稲葉さんのご好意で、収穫作業のお手伝いをさせてもらえるのです。
ワーケーション最高!
「おはようございまーす!」
「おう。トイレは大丈夫か?」
口調はそっけないけど、絶対優しい人だ。そう確信する。
(ていうか、そもそも収穫『お手伝い』なんて全然戦力にならない人の面倒見てくれるって優しいに決まってる)
かどやを出発して、天城の山の方へ。
雨、降りそうだなあ…なんとか午前中だけでももってくれたらいいけど。
車を停め、山道を入って行く。
そういえば、意見交換会のとき町長(誕生日)が河津のおすすめスポットに
『天城トンネルの旧道から町まで歩く(約5時間?)』
というなかなかハードなアクティビティをあげてくださったのだけど、期せずしてそれをほんの少し体験できてる!確かに、めちゃくちゃ気持ちがいい道。
そしてわさび田に到着。
簡単に自己紹介をして、早速収穫のレクチャーを受ける。
稲葉さんは簡単にやっていくけど、わさびの葉っぱが結構長くて、それを折らないように持つのがなかなか難しい。
収穫の手順は、
根元をしっかり持ってゆっくり抜く→隣の株と重なった部分の葉が折れないように持ち上げる→5つくらいずつの束になるように山を作っていく
この繰り返し。
どれも少しずつ細かいポイントがあって、山を作るときはわさびの位置を揃えておくとか、持ち上げるのは上じゃなくて前方向とか。
その通りにやると作業効率が上がるのが嬉しい。
そしてある程度収穫したら次は根やコブ、産毛をとっていわゆる売り物のわさびの形に整えていく作業。
和田さんと、この作業を『脱毛』と呼ぶことにする。
収穫の大変さを1としたら脱毛は5だ。
根やコブを取るのは生えてる向きを見ながら親指人差し指の第一関節をうまく使って、と簡単そうにポキポキ整えていく稲葉さん。
同じようにやってみると、え、全然うまくできない…。
力加減もそうだけど、苗作りから栽培期間を経て収穫までおよそ2年かかった大事な作物を、最後の最後にわたしという素人のせいで折れたり削ったりして売り物にならなくなってしまったら…という不安のせいで力を込めづらい、というのもある。
「小さいのから練習しな」
稲葉さんが、収穫の際によけていた小さなわさびを私たちの前に置いてくださる。あーやっぱ優しいなあ。
人差し指くらいのサイズのわさびに生えた根っこを取ってキレイに整えると…あ、これスーパーでみる「伊豆の生わさび」だ!!
練習を続け、徐々に脱毛作業に慣れていく。
「見てください、イケメンに仕上がりました!」
和田さんがわたしに整えたわさびを見せてくる。……イケメン?
でもなんか分からなくもない。
わたしが収穫お手伝いするにあたって、せっかくなので一緒にやりますと言ってくださった和田さん。無理してたら申し訳ないなと思っていたのだけど楽しそうでよかった。
雨が降ってくる。
ついに降っちまったかー、と思うけどわさび田はそもそも足元が水なのであまり気にならない。稲葉さんの軽妙なおしゃべりに相槌と質問をしながら作業を進めていく。
同じ場所で栽培しても水の質が変わると味も変わること、台湾から冷凍で運ばれてきたわさびがほんの少し入っているだけでも『本わさび入り』という表示で販売されていること、あとは過去に農作業の研修で行ったアメリカでのお話や、これまでに出演したテレビや雑誌のお話しなど。
(わたしよりテレビ出てるな、稲葉さん…)
雨が少し強くなり、作業もいい感じに終わったので片付けて収穫物をみんなで運ぶ。
「ゆっくり運べよ〜。二人で持っていいぞ〜」
って、わたしたちそこそこ大人なんだけどな。ものすごく非力な小娘ちゃんに見えてるのかしら。全然大丈夫でーす!と言って1コンテナずつ持って運ぶ。
あ、モノレールだ!!!
収穫したわさびは箱に入れてモノレールに乗せて車道まで運ぶそう。
「これで上まで乗ってくか?」
もちろんYES!!!!
わさびを運ぶ前に、女子二人、乗せてもらいました。
山の中、急斜面をゆっくり進んでいく。山との一体感がすごい!
かどやに戻り、みんなで昼食タイム。
かまどで白米炊くぞ!と言って、火おこししたあと「はじめちょろちょろ中パッパ」だからな、と言って車でどっか行ってしまった稲葉さん。
ごめんなさい、焦がしました。
かまどの火加減なんてわかんないっす!
「焦げ臭いな!」と言いながら戻ってきてかまどから慌ててお釜を下ろす稲葉さん。
中身が全部炭になってたらどうしよう…と不安に思いつつ蒸らすこと15分くらい。
フタを取ると、外側は確実に焦げてるけどなんとか、ギリ、いけそう。
はーーよかった。
「まあでも俺がちゃんと教えなかったからな。俺のせいだな。」
はい優しい!
「どうも〜〜〜」
意見交換会でお会いした副町長(よし坊)登場。
この間「いけたら行きます〜」と言っていたけど、ご飯の時間に合わせてなんて、タイミングのよきこと。
稲葉さんと副町長(よし坊)は大の仲良し。チャキチャキ話す稲葉さんにいい感じで合いの手入れる副町長(よし坊)。見てるとホッコリ。
さあ、みんなでいただきます。
炊き立てのご飯に鰹節、すりたてのわさびに醤油。シンプルだけど美味しい!!
卸金によって、辛味と香りが全然違う。ザリザリ感のあるやつが一番刺激が強くて、脳みそ揺れるくらい辛かった。鮫肌のは泡のようにふんわりして、香りが立って優しい辛さ。
自家製の梅干しや新生姜漬け、わさび漬けに茎の三杯酢、わさび味噌とわさび海苔もあって
「お茶漬けもできるぞ〜」ああ、ここは、天国。
ちゃんと食べ過ぎました。
お土産に生わさびをなんと2本もいただき、何から何まで出来損ないのわたしを受け入れてくださった稲葉さん、大感謝です。
わたしも稲葉さんと同じくらいテレビ出られるように頑張ります!
井原コロさんから「温泉の割引クーポン余ってるんですけど、つかいますか?作業の汗流します?」とLINE。
生かされてる、わたし…。
温泉会館の受付で名前言ったら半額で入れるようにしときましたので、って段取り神がかってる。
全方位にありがとうございます。温泉で生き返りました。
宿に戻ると、かなりの本降り。
雨は降られたけど、ここまでじゃなくてよかったなあ。
写真を見返してニヤニヤして、一気に今日の日記を仕上げて。
今夜はラストナイト。
あそこで待ち合わせしよね、とみんなで約束する。
体は疲れてるけど、心がずっとワクワクしてる。
いよいよ明日は最終日だ。