藤原佳奈「むすびめ(3日目)」
3日目。
元美術教師の土屋武彦さんに、蛍のビオトープに連れていってもらった。
嵐のせいで近くの川の川底の堆積物がごっそり流されてしまい、蛍の餌がなくなってしまったことから、嵐が来たとしても、蛍がやってこれるような場所を、と、山から降りてくる水路を作ったらしい。
蛍が飛び交う季節に、また来たくなった。
武彦さんはフジバカマの活動もされていて、武彦さんがフジバカマを植えたことで、2000キロも向こうから蝶もやってきて、こうして蛍もやってきて。
場づくりというのは、いてもいい、という場をつくること。
それだけのことで、それは人間も同じなよな、と、木々の中で考えた。
その後、お昼ご飯へ向かう途中に「藤原さん、足湯好きそうだから」と、「桜田公園」を紹介してもらった。
確かに足湯は好きなのだけど、足湯がある公園、ということ以上に、この公園は、地域のある方が発起人となって作られた手作りの公園だ、と聞いて興奮。
あとでお話をお伺いするアポイントを取って、一旦お昼ご飯へ。
お昼ご飯は、昨日お伺いした蔵らへ。
ここは、仕事をすること、創作することで活き活きと生活することをコンセプトに、何十人もの高齢者の方の手によって運営されているお店。手作り小物や、日替わりのお昼ご飯を販売している。
昨日、新聞の取材を受けているときにも蔵らさんでお茶をいただき、ちゃっかり手作りポシェットも購入したのだけれど、その時に「明日は、さんま寿司があるよ」と聞いて、食べてみたいな~と思っていた。
さんま寿司と、地域の野菜のあれこれ。とっても美味しかった。
そして、午後はお約束していた取材へ。
桜田公園を作った、武田さん。
お孫さんに遊ばせる公園が近くになく、遊び場を作ってやりたい、と思ったのが発端だそう。使っていない近くの畑の持ち主に相談したら、個人には貸せない、と言われたので、区を巻き込んだ形で公園づくりをできないか、と思い、動き始めたところから、区からの補助や、有志のボランティア、様々な人のアイディアと協力で4年前にできあがったのが、この公園らしい。
建設に携わった地域の協力者の名前が並ぶ。
入り口には、松崎町の名物、“桜葉漬け”に使った樽が使われている。
この子どもが(わたしも)入りたくなる入口、最高です。
取材中、「グア、グア」と声が聞こえる、と思ったら、公園の脇の水路に鴨がたくさんいた。合鴨農法で、雛の時に農地に放った鴨が、大きくなって行き場がない、というので、ここで放しているらしい。
これは、4年前、公園を作ったときに植えた桜の木。当時の苗木と植えた小学生の写真がそれぞれの木に飾ってある。
手作りのバイオトイレ。
これは、公園の付近で立小便をする人がいたので、作られた。
足湯。タオルがないと入らないという人がいるだろう、と、タオルまで設置してあったことに感動した。
と、足湯の横には“湯雨竹”という、高温の温泉の温度を竹を通すことで冷却する装置が、したしたと湯を流していた。竹にずっと水がきらめいて、色気があった。
これは、九州の温泉でやっている取り組みを知って、足湯だけよりもこういうのがあったほうがいいだろう、と、作ったらしい。
お金が足りないならば、丸太を置こう、フェンスが立てられないなら竹をめぐらそう、と、いたるとことに知恵と工夫がつまっていて、
それが、この場所の暖かい居心地になっていると思った。
武田さんは、毎日この公園に来て、足湯場所を掃除し、区から任される形で、管理を一人でやっている。本当にすごい。
武田さんによって、公園が生まれて、こうして、生きている。
子どもがやってきて、慣れた様子で遊び始めた。
武田さんは、“より道売店”という地場産の物の販売所も企画している。お店は賑わっていた。
虎のすべり台の上に寝っ転がって、ぼんやりしていた。
雲はずっと動いている。輪郭はない。ずっと動いているその姿を追いかけようと見つめていたら、いつの間にか眠ってしまった。
目を覚ますと、さっきの雲はなかった。
今日は、「むすぶ」について考える日だった。
武彦さんのフジバカマも蛍の場も、蔵らさんも、武田さんの公園も、より道売店も、むすぶ場が創られたことで、そこに蝶も蛍も、子どもも、お年寄も観光客も町の人も、集うことが許される。
むすぶ場をつくりたくなったとき、それをつくりやすい町こそ、居心地がいい町だろう、と思った。
そして、むすぶ、むすぶ、ということを考えながら、
もしかしてわたしは、「むすぶ」ということに何か大きな期待をしてきたんじゃないか、しているんじゃないか、ということにも気がついた。
何かをつくるとき、世界と自分の身体のむすびめを手繰り寄せている。
演劇作品を創ること自体も、いろんなイベントを企画することも、むすびめづくりだったのかもしれない。
それは、場づくり、よりもしっくりくる、今日感じた、新しい言葉だった。
夜は、山の家、という露天温泉に行った。
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