吉﨑裕哉MAW龍山町旅人日録まとめ

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今回旅人として天竜区龍山町に一週間滞在させていただきました。
元々この龍山町に興味を持ったきっかけは天竜川にまつわるコンテンポラリーダンス作品を踊ったことがきっかけでした。

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名前だけはよく知っていた天竜川、そのイメージは流れが急でクネクネしている、暴れ天竜でした。(実際はダムの建設により非常に穏やかでした)
そしてその天竜川に伝わる佐久間町の花祭りのように、この龍山にも何か昔から受け継がれている伝統的な神楽があるのではないか、そこに自分も関わることはできないかという興味を持ち応募させていただきました。

当初ホストの鈴木のぞみさんから龍山町白倉という場所に伝わる今はもう担い手のいない「白倉囃子」についてリサーチ、もしくは踊ってみてはどうかというお話をいただいていました。
僕もとても乗り気で、ただ白倉囃子をそのままやるのではなく、古典に敬意を払いつつ現代の解釈を加えて「新しい白倉囃子」を作り地域で発表することはできないかと相談し、よしやってみようかということになりました。

しかしいざリサーチの段階になってみて元踊り手の方やお囃子奏者の方々が既にご高齢ということもあり体力的にも現在のコロナ情勢的にもご教授いただくのが困難になってしまい今回はあえなく断念する運びとなりました。

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↑白倉峡にて

さて、では舞踊家として僕は一体何をしようか...と考えた時に、コロナ流行後に取り組み始めた映像製作で地域に貢献するのはどうだろうかと思いました。
ただ既に龍山町では地域PR用の素晴らしい動画が何本もあり、正直こういった観光促進を今さら僕がやる意味もないなと思い、違う方向から映像製作をすることになりました。

僕は映像作品を作る時に2つのキーワードをとっかかりとします。それは
「人の記憶」

「土地の記憶」
です。
今回「人の記憶」に関しては、地域に住む昔の龍山の姿を知っている方々のお話を伺うこと、「土地に記憶」に関しては龍山町に昔から伝わる民話や伝承をリサーチすること、として映像制作の素材集めを始めました。

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インタビューでは龍山町瀬尻から山を登ったところにあるポツンと一軒家の大野今子さんと今年93歳を迎える宮澤マキさんにお話を伺うことができました。

大野今子さんはお爺さんの代から現在のお宅に住んでいらっしゃり、ダム建設前の龍山の様子やご親族のことなどを写真を交えてお話してくださいました。
理路整然とした語り口で小学生の頃の記憶を事細かにお話してくださり、その記憶力の鮮明さに驚くとともに人の記憶力の尊さに気付かされました。
小学生の頃のお話をされているときは本当に小学生のような無邪気なお顔をされていらしゃって、かと思えば帰宅の際には孫に接するようにたくさんのご飯のお供を持たせてくださったりとこの龍山という地域の温かさを象徴するような素敵な方でした。

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↑大野今子さん宅にて

宮澤マキさんは今年93歳ですが元気に一人暮らしをされている方で、地元ではまきちゃという愛称で呼ばれているとっても可愛いおばあちゃんでした。
何よりこの龍山を愛していて、子供たちに会いに遠出することはあるけれどやっぱりこの龍山にいないと落ち着かないと話していらっしゃったのが印象的でした。
また僕に対して「いつかあなたの踊りを見せてね」と言っていただいたこともとても嬉しく、僕がこの地域でしたいことがまた一つ増えました。

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↑まきちゃと浜松山里いきいき応援隊(通称山いき隊)の長谷山さん、まきちゃ宅にて

その他にも、龍山ハーモニカバンドを主催している山田のおじさん、白山神社宮司の佐奈要介さん、NPO法人ほっと龍山の松下和明さんユミコさん夫妻、お隣のぬっきーさんゆうこさん夫妻、水窪にあるスーパーまきうちのモト君夫妻、龍山恊働センターの片倉さん、そして山いき隊の長谷山さんと千陽さん、ホストの鈴木のぞみさん、など滞在中出会った全ての方々に感謝申し上げます。

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そして「土地の記憶」では、龍山に伝わる民話伝承廻りをしました。
今回リサーチ対象としたのは
・白山神社の小仏様
・機織淵
・たか女と龍
・鮎釣りの地蔵様
数ある民話伝承の中から興味のあるものをピックアップして実際に訪れて見ました。

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前述の佐奈さんが宮司を務める白山神社。その隣にある住吉神社にて小仏様は御神体として祀られている。

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機織淵。陽の光によって水面が照らされると息を呑む美しさ。

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エメラルドグリーンの天竜川。ダム建設工事後は穏やかな川になったそうだ。

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案内板などもなく山道にふっと現れる鮎釣りの地蔵様。たくさんの人が敬意を持って訪れているのがわかる。

これらの場所を訪れ、多くのインスピレーションを得ることができました。
一見暗そうに見えるお話もありましたが実際に訪れてみるととても清々しい場所が多く居心地が良かった。それぞれの場所にしばし腰を据え、お話に関する妄想を広げ、実はこういうことだったのではないか?などと頭の中で勝手に話を広げて楽しんでいました。

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今回のMAWは成果物を求めるものではありませんが僕としては今回インプットしたものをどうしてもアウトプットしたいという欲が抑えることができず、ホストの鈴木さんにお願いして鈴木さんの曲の使用許可をいただき映像作品を作ることになりました。
僕が龍山から得たインスピレーションがどういった形になるのか、今から僕もとても楽しみです。
また龍山の方々がどういった感想を持たれるのか怖くもあり楽しみでもあります。

地域と芸術というテーマを考える素晴らしい機会をくださったアーツカウンシルしずおかの方々に感謝申し上げます。
今回の企画がより大きな実を結びますよう芸術家として引き続き頑張ってまいります。

舞踊家・振付家・映像作家
龍山町旅人
吉﨑裕哉

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