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細淵太麻紀 「下田はじめまして物語」 (2日目)

朝、カーテンから漏れる朝陽で目覚める。身支度をしていると同行N女史が向かいの部屋に宿泊している若い元気な女性と共用部で偶然出会い、高崎百合絵さんが私たちの部屋にやってきた。彼女は福岡市役所からの出向で「一般社団法人熱意ある地方創生ベンチャー連合」というみるからに面白そうな名前の組織に所属している。話を聞いたらやっぱりものすごく面白そうで、あっという間に打ち解ける。
お互いに連絡先を交換し、彼女が近くの市場の食堂に朝食に出かけるというので、我々も一緒に朝の散歩に出かける。高崎さんが道々、下田の色々な情報を教えてくださる。

高崎百合絵さん

散歩から戻り、毎日朝9時から11時の2時間しかやっていない美味しいコーヒーの店が近くにあるというので行ってみる。おがわ旅館という宿泊施設の一角に変形極狭建物が建っている。店主は祖父から引き継いだ旅館をリノベーションしながら運営し、同敷地内に下田ではレアなテイクアウトのドリップコーヒーの店「The Black Ship Coffee」を始めたのだという。コーヒーを待っている間、旅館のエントランスを見せていただく。受付カウンターの下に古い下田市街の写真があった。何年ごろの写真だろうか。

宿泊したLACをチェックアウト後、LACに宿泊した人が使えるワークスペースで少し仕事をさせてもらう。ワークスペースは近くのNanZ VILLAGEというところの一角にあって、敷地内の飲食店とともに中庭を取り囲むようにしてある。

スーツケースを駅のコインロッカーに預け昼食をすませてペリーロードを散策。土日しか開いていない「ひとりフリーマーケット」をやっている秋元さんと出会う。主に80〜90年代のアクセサリーや雑貨を販売しているが、店頭にある数枚のレコードについて質問すると、奥にたくさんのレコードがあると言って見せてくれる。秋元さんはもともとレコードコレクターで、奥様のご実家はレコード店。友人知人のいらなくなったレコードを大量に引き取ったりして、秋元さんの元にはたくさんのレコードが集まってくるのだそう。アクセサリーもレコードも価格はとても手頃なのだが、たまにブランドものやレアものなどのお宝も混じっている。下田に住んでいたら定期的にチェックしに来てしまいそうだ。

ちょうど今、日本における写真の開祖、下岡蓮杖の展覧会をやっているというので下田開国博物館に行ってみる。入館してすぐの常設展示のところにある下田太鼓まつりの人形の姿勢や表情、表現力の豊かさとその破壊力にまずやられてしまう。どうしてこういうことになったのか。いったいどんなまつりなのだろうか、逆に興味が湧いてしまう。

こわい、、

最後の方にやっとでてきた目的の下岡蓮杖の企画展示。下田で横浜の説明を受ける不思議。しかしこの地図の右下方の開業の場所は間違ってるみたい。たしか開業の地は野毛のはず。これは太田町の支店の位置なのではないかと思います。それはさておき、やはり下田と横浜の間には地理的、歴史的、文化的にも、深い縁があるのがわかる。

蓮杖が開いた写真館のあった横浜馬車道には「下岡蓮杖顕彰碑」があるのだが、下田にも下田公園に「下岡蓮杖翁の碑」があるというので行ってみた。左手に古い写真機を抱え、右手には蓮杖だけに蓮根の形の杖を持っている。

蓮杖翁に会ったあとは、そのまま下田公園の山道を北に歩き、志田ヶ浦展望台まで行ってみることにした。整備された公園のような歩道から下田城天守跡や空堀跡を経て、道幅もだんだん狭まり山道になっていく。少し汗ばんできたころに急に視界がひらけ、前方に太平洋がみえてくる。海に向かってベンチが配されているのだが、なんと前方は断崖絶壁のような急峻な山なのに柵などなくちょっとスリリング。海からの心地よい風を受けて滞在二日目も無事終了。N女史はひとり横浜へと帰路に着いた。明日からはひとり旅。


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