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長谷部勇人「天竜川の静かな音(まとめ)」

エスノミュージコロジーという言葉を知っていますか?僕は以前、自作楽器についての活動を英会話の先生に自己紹介した時にこの単語を教わりました。訳すと民族音楽学であり、つまり国や地域によって異なる信仰や風俗における音楽表現やその楽器を研究する分野というわけです。それについての難しい話はわかりませんが、僕は当たり前のように日本の音楽を好きで聴きますし、最近は韓国の音楽もよく耳にします。洋楽はギターバンドが好きだったから、最近、ビリー・アイリッシュみたいにギターが入っていない音楽には驚きました。学術的な専門知識はなくとも、音楽の国や地域性は誰の耳にも慣れ親しんでいて、楽しめるものですよね。

天竜区龍山町の場合は、どんな音楽になるか想像してみてください。地産のヒノキでギターができたら、木材の新しい活用方法として地域の魅力を探求することにつながります。ここを実際に車でドライブすると静かな場所であることがわかりますから、演奏する音楽は天竜川を流れる風や水のザーッというサスティーンが聞いた静かなノイズを発生させます。うーん…振り返るとスタートはこれで良いのかもしれませんが、何か物足りなさを感じています。

僕はこれまでに地域アートの企画などで、漁師さんから鹿の角、漁業組合から牡蠣の貝殻、養蜂所から蜜蝋をいただいたりして自作楽器を作ってきました。しかし、やっぱり「地元」っていう言葉がいつも強い存在に感じて、余所者による地域の特色を取って付けただけの貧弱さを自身の表現に感じていました。けれど、今回、マイクロアートワーケーションに参加してみて、龍山町の出身やここに住む人が町の内部から表現を模索していることも知れましたし、僕のように旅人として外部から表現のヒント求めていることを理解していただき、お互いの可能性の接点を見つけられて、これまでと考え方が変わりました。

静岡とアートはやっぱり関係性が深いですね。僕もこれまでに「静岡市文化・クリエイティブ産業振興センター(CCC)」、「UNMANNED 無人駅の芸術祭/大井川」、「鴨江アートセンター」の作品展示に参加させていただいたことがあります。コロナ禍も関係あったのでしょうか、1週間以内に限定された滞在を企画されたアーツカウンシルしずおかさんのアイデアはあってなかったようなものです。静岡県一帯に多くのホストが集まったことに感心しています。

旅は終わりましたが、これから「天竜のギター」を制作して再びこの地を訪れ、展示や演奏をすることを約束しました。帰宅後、街中の雑音が耳を悩ませますが、また秋には静かな龍山町を訪れることができる期待で胸いっぱいです。

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