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清水玲「雨のはじまり」(1日目)

スタジオのある湯河原から雨の135号線を南下して1時間半。 

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雨がよく似合う港町伊豆稲取の路地裏に佇む一軒家「錆御納戸」の引戸を開けると、今回の稲取滞在のホストである合同会社so-an(湊庵)の荒武さんと藤田さんが待ってくれていた。

荒武さんたちは「稲取の暮らしを旅する」をコンセプトに、まちなかの空き家を複数軒、町宿としてリノベーション・運営している。稲取の人たちにとって当たり前な出来事と出会い、体験する宿。湊(港、人が集まる場所、稲取の昔ながらの情景)庵(小さな住居、日常から切り離された空間)というわけだ。

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チェックインをすませ、お互いにあらためて自己紹介(昨年10月のオンライン説明会以来)。これまでの自分の取り組みや今回の滞在の大まかな予定などを話す。

はいま、昨年2月に中伊豆で開催された「Cliff Edge Project -躍動する山河-」展で制作・発表した私の個人史と伊豆半島の地形の成り立ちとの重なりをテーマにした映像作品の再構成・再撮影に試みている。

約2000万年前まで遡る半島の成り立ち(海底火山時代から本州との衝突、陸上大型火山時代から伊豆東部火山群と呼ばれる時代区分)や伊豆半島に残る伊豆辺路・峰辺路とよばれる古道などを参照しながら、独自の旅路を作成し、伊豆半島の誕生からプロジェクトの起点となったカワゴ平噴火までの痕跡を辿る撮影の旅を続けている。

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伊豆の噴火年表

荷物の整理をしているうちに外の雷雨もおさまり小雨になったので、少しだけ散歩に出かける。高低差のある特異な地形にめぐらされた路地、雨雲で太陽の位置もわからず、西側に見えるはずの天城山系の稜線も雲の中。稲取の地図は頭に入れてきたつもりだったが、方向感覚が定まらない。路地から野良猫がひょこっと現れ、ちらりとこちらを見ては消えていく。猫に導かれて辿り着いたのが「金目鯛の味噌漬け」という文字、魚屋(加藤ひもの・みそ漬け店)だった。

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路地を抜けて海に出る。海岸線を西に歩き志津摩海岸へ。

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約80万年~20万年前に噴火を繰り返していた天城火山の溶岩流が割れて磨かれたゴロタが続く。

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そこからさらに南に進むと岩脈が立ちふさがり、ぽっかりと穴の空いた海蝕洞。ここは稲取で撮影したいと思っていた場所の一つ。場所の確認ができたところですっかり暗くなってきたのでひきあげて宿に戻る。

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