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新造真人「向かいながら準備する(7日目・最終日)」

こんにちは、新造真人です。伊豆高原での滞在もいよいよ最終日。
行動とそれに伴って考えたことを書きましたので、よければご覧になってください。

J Gardenで起床→船本さん、品川さんと合流し南下→伊豆熱川温泉→伊豆白浜→爪木崎 水仙まつり→ふるさとで食事→伊豆高原駅→都内へ


J GARDEN

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朝はJ Gardenで目を覚ました。静かな高台に位置するこの宿からは、水平線を望むことができる。建物は大室山の溶岩などを用いて、オーナーの石井良彦さんが30年かけて全て作りあげたもの。熱帯植物に囲まれており、すごく遠くの土地に来たような思いを起こさせる不思議な空間である。

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伊豆熱川温泉

最終日の今日は、ホストである船本さん、書道家の品川さんと行動を共にする。船本さんの車で伊豆半島を南下し下田を目指す。途中、伊豆半島の中でも屈指の湯量を誇る伊豆熱川温泉に立ち寄った。江戸城を築城したことでも有名な太田道灌が発見したとされる。彼が深手を負った際に、傷を癒したとされる「奇跡の湯」とも呼ばれている。熱川温泉には13本の温泉櫓(日本一の数)があり、漂う湯けむりを眺めているだけでも楽しい。

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温泉には様々な効能があると言われるが、何がその水を「奇跡」と呼ばせたり、特別にしているのだろう。私は専門家ではないから温泉をこれまでの体験の総体としてか捉えることができない。そして、温泉を、その土地に流れる水に地面の成分が溶け出し、一定以上の温度のものだと捉えている。「大地が溶け出した水」や「柔らかい大地」とでも呼べるのかもしれない。気になり、何を温泉と呼べるのか、その定義を調べてみると、昭和23年にできた「温泉法」などがヒットした。

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熱川バナナワニ園のショップは素晴らしい。特にバニオ

温泉の定義については、この第二条で、"この法律で「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気、その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)である"と述べられていた。そこからさらに詳しい要項が書かれているが、地面が湧き出ており、硫黄や鉄、放射能を持つラドンなど、法律で規定されている成分のうちどれか一つだけでも一定量以上含まれている水であれば、法律上は温泉に該当することになる。これによると「大地が溶け出した水」というのは、的外れではないということがわかった。

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伊豆白浜

熱川温泉の後は、車を走らせ南下する。人生で初めて、伊豆白浜に着いた。白い砂が、青い空を美しく描き出す。こんなにも綺麗な海が近くにあったとは。知らなかった。思わず裸足になる。予想外の波の出現にコートが濡れたが、それも嬉しい。予想外は、楽しい。私は2年前から小田原に暮らし始めた。下田の噂は時々聞いており、2時間もあれば来れるのに一度も足を運ばなかった。東京へ行くのだって同じ時間かかる。こんなに明媚な風景があるのに、北にばかり足を向けていた。自分はバカだったんじゃないか。

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この気持ちを、この日、知ることが出来てよかった。これからの人生は、ことあるごとに、下田に来よう。春は桜に。夏はシュノーケルだ。とにかく、地道に足を運ぼう。今まで下田に行きたいと思ったのに、行動に移さなかった。どれくらいの距離だ。どれくらい時間がかかる。どれくらいの予算でいける。全て分かっていたのに、足を運ばなかった。バカは今日で卒業する。行動するアホになろう。踊るアホになろう。布団の中で、計画だけで立てて終える1日を、寒くても布団から飛び出して、知らない街に向かう1日に変えよう。今後は、調べたら、いつ行くのか、決める。その風景が、いつ失われてしまうか、わからないから。思い立ったが吉日。向かいながら、準備すればいい。

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爪木崎

そしてようやく、今日の旅の目的地。爪木崎にたどり着く。爪木崎では今日から水仙祭りが行われている。毎年12月20日がその開始日。たまたま訪れた日が、宴の始まりだというのは、なんだか嬉しい。歓迎された気持ちになる。今日はまつり初日なので3分咲きだったが、ピーク時には300万本の白い水仙が岬に咲くそう。群生地の中へ入ると、すでに甘い香りが漂っている。青い空と、朱色の花を咲かしたアロエと、爽快な海が組み合わさって、一体今が何月なのか忘れてしまいそうになる。

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爪木崎は、歩いていると、爪先から元気になる。花や海空の彩りがそうさせるのかもしれない。岩場をどんどん歩いて行くたくなる。洞窟のようなものが気になり入ってみると、筒になっていて、向こう側に行ける。そこでは非常に魅力的な形をした流木がいくつか落ちていた。船本さんに相談して、IZAIZUさんに置かせていただくことにした。つまり、また伊豆高原に足を運ぶ約束をしたということだ。

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爪木崎には、たくさんの面白い形があった。まずは、岩。どうしてこんな形のものが、というものがずらずらと。俵磯(たわらいそ)と呼ばれる柱状節理(ちゅうじょうせつり)。柱状節理とは、マグマや溶岩が冷え固まるときに形成されるもので、六角柱状の割れ目が特長。噴火が形成した伊豆半島ならではの景観と言える。柱状節理は伊豆高原の大淀小淀でも大淀小淀でも見ることができる。最初にその形に出会った時、これは自然の彫刻だと思った。他にも、剥がれ落ちたような岩がころがっていたり、自然の中にある様々な形に目をやっているだけで日が暮れそうだ。

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変ったチャーハン 「ふるさと」

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爪木崎を後にして、帰り道は北上する。途中、片瀬白田の中華料理屋「ふるさと」で食事をする事になった。初日は伊東市のご当地グルメ・納豆チャーハンを食べたので、最終日は稲取のご当地グルメ・肉チャーハンでこの旅を締めくくる。お店の暖簾には“変わったチャーハン”と書かれている。その名物チャーハンを食べ、腹を満たして、次の目的地、東京に向かう。いい店名、いい店構え、いいお味だった。チャーハンに始まり、チャーハンに終わる。

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「山脈を持ち運ぶ」着想

旅の終盤、新しい作品の構想が浮かんだ。

数年前から、自分の腕を被写体に写真を撮っている。人物のポートレート写真は、簡単に言えば、他者を撮るわけだが、撮りたい!という欲求が働いた時に必ずしも、被写体となる他の人間がいるわけではない。だから、カメラを持つ手とは別の手を被写体に撮影をしている。伊豆に滞在中も何度も腕を被写体に撮影していたが、そこに「他者が存在しないから」以上の強い理由がなかった。がしかし、爪木崎で、強い太陽光を遮るために腕をかざして撮影して見たところ、途端にアイディアが浮かんだ。指先の動きの向こう側に強い光源がある。そこに伸びる片腕、そして腕がまとっている服の様相が、山脈のように感じられた。すると、この写真は、後光に照らされた山として捉えることが出来、私は片腕に持ち運び、携帯することのできる山脈を携えていることになる。なんとも素晴らしい飛躍だろう。伊豆に来て、大室山、噴火、溶岩、海、温泉などについて考えていたが、その思考の流れが、この腕を被写体とした写真で表現できる。そんな確信を、滞在最終日に獲得することが出来た。

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新造真人 / Makoto SHINZO
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