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冬木 遼太郎 「お出汁の空気」 焼津市 滞在(1日目)

はじめまして。冬木遼太郎と申します。
私は現代美術という分野でアーティストとして、主に大阪や京都を中心に活動しています。(HP:https://ryotarofuyuki.tumblr.com/

今回このマイクロアートワーケーションに応募したのは、企画趣旨にも書かれている“未来”という不確定なものを含めて、地域やコミュニティについて考えてみたいと思ったからです。

例えば、保育所や幼稚園が足りていない等の待機児童に関する問題は、保育所を新たにつくる、コミュニティの中で相互に助け合う仕組みをつくる、あるいは制度を見直すなど、今すぐに対処してゆくなら、“いま”取るべき具体的なアプローチがあります。けれど、それが30年後の未来を見据えたとき、考えるための要素やアプローチは自ずと変化してゆきます。そして、アートが関わる可能性もまたそこにあるのではないかと思っています。

そういった未来を係数に含めて街を見るために、これから一週間焼津の街を徘徊します。焼津の皆さん、どうぞよろしくお願いします。

冬木 遼太郎


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1日目

朝11時頃、ホテルを出る。街を30分ほど散歩してから、今回の旅のホストである一般社団法人トリナスの拠点「みんなの図書館さんかく」に行く。トリナスで代表理事をされている土肥 潤也さんが出迎えてくれる。

(土肥さんについてはこちら

程なくして、もう一人のワーケーション参加者 カトウ マキさんと、焼津地域おこし協力隊として活動されているスズキさん(通称 ぎんちゃん)も来られて挨拶の後、さっそくお昼ごはんを食べに行く。道すがら、目に入った建物や産業とその歴史について教えてもらいながら歩く。ところが、近くの料理屋さんがどこも満席で、なかなかお店が見つからない。そして、「かなり好き嫌いの分かれるディープなお店があるんですけれど。。」と土肥さんが連れて行ってくれたのが「カレー ステーキ ちゃぼす」というお店。なかなか気合の入った外観。土肥さんが子供の頃から来ているというだけあって、かなり年季がはいっている。

土肥さんとぎんちゃん

土肥さん(左)とぎんちゃん(右)

「量が結構すごいんです」という土肥さんの話から、大盛りのカレーを想像していたので、チキンカツカレーのハーフを注文する。が、まず前菜が凄かった。ポテトサラダ、きんぴら、卵焼き等の盛り合わせが一人一皿ずつ提供される。そしてカレーもなかなかの量。トッピングはチキンカツだけでなく、コロッケや焼き野菜もデフォルトで盛られていて、カレールウと併せてホワイトソースと餡のようなものがかかっている。この時点で既にお腹はいっぱいだったが、最後にデザートが3種盛で出てくる。770円。

カレー

店主さんが一人で切り盛りされていて、メニューからお店の内観までオリジナルな感じがとても良い。例えば床もかなり時間を経た状態であるが、その上に何重にもビニールテープで補修がされていて、見たことのない柄になっている。そんな店内で、店主さんに注文をしたりお茶のおかわりをお願いすると「わかった!」と言って、元気よく厨房に戻って行かれる。土肥さんによると、デザートも季節やその時々によって変わるらしく、献立を変えながら毎日何種類かのデザートを作り続ける手間を考えると、店主の方は本当に料理やつくることが好きなのだろうな、と想像する。

床


昼食後に防災避難の高台に立ち寄る。関西人の自分は、富士山が見えること自体に驚く。気温が高い夏は見にくくなってしまうため、冬の方が映えるらしい。

フジ


一旦さんかくに戻り、向かいのPLAY BALL! Cafe(プレイボールカフェ)でコーヒーを頂く。“さんかく”はいろいろな人が入れ替わりでお店番をして運営されているそうで、今日の午後はイラストを描かれている作家さんが、娘さんを連れてお店に立たれていた。彼女は土肥さんやぎんちゃんともだいぶ前からの顔馴染みらしく、さながら図書館の看板娘らしい。この商店街に集まっている人たちが、みんなで子供を見守っているような空気はとても素晴らしい。

さんかく外観

地図ごっこ

宝の地図ごっこ

ミッキー

歯磨きをしてから地図のふとんで寝るミッキー


カフェで雑談をしながら休憩をとった後、車で石津海岸公園に行く。ここからも富士は綺麗に見え、駿河湾越しに伊豆の方まで見渡せる。この海岸は砂ではなくすべて丸石の砂利で出来ていた。自分は普通の砂浜しか見たことがなかったので驚いた。ぎんちゃんの話では、この湾は水深が急に深くなっていて、浅瀬がほとんどないらしい。言われてみると、海水浴場で見るような水色や薄い緑色の部分が全くないことに気づく。浜の際まで厚みのある紺色をしている。

砂利

海岸

海岸2


更に南下し、ディスカバリーパーク焼津天文科学館の周辺へと向かう。車を降りると、空気が出汁の匂いであることにかなり驚く。カツオなどの水産加工業者が市内に幾つもあるらしく、お二人の話では焼津の街中で匂いが不意にすることは珍しくないらしい。風の関係で、比較的市内の北側に位置する焼津駅の辺りでも匂いがすることはあるという。お出汁の匂いがする空気に包まれていたら、ちょっと嫌なことがあっても腹が立たなかったり、ケンカも起きにくいのではないか、と考える。もし諍いのタネになりそうなことがあったとしても、排気ガスの混じった空気とお出汁の空気では、本当に全然ちがうと思う。

夕焼け

焼津市の南側、大井川の地域をぐるりと回ってさんかくに戻ってくる。漠然とではあるが、焼津市の南北の規模感を感じることができた初日だった。

車内


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