市川まや(龍山町2日目3/10)「山の道」
地域の人と交流する機会がなくなってしまった代わりに、「山の道」を案内して頂くことになった。
「秘密村」というキャンプ場のオーナーをされる川道さんが、猟や山の話を交え山歩きをするそうだ。
「タイミングよく鹿が入手出来たら、解体を見れるらしいが、抵抗は無いか?」というメールが事前に来た。
さて、どうだろう?少しビビってしまうだろうが、ここはひとまず「お願いします」と返信した。
龍山協働センターの会議室で、川道さんと会い、一緒にお弁当を食べながら話を聞く。
「山の知識は?」「車酔いはしないか?」と尋ねられ、全く無知の私はドキドキしながら終始「大丈夫です」と答える。
この時点で、どこまでの山歩きを想像出来ていたかと言われると、はっきり言って「全く」だった。
軽トラに乗り込むと、そこにはもう、ナイフが置いてある。
龍山は林業が盛んだったそうで、今より文明的だったそうだ。街には、映画館、パチンコ屋、遊郭まであったらしい。そして、この土地の人は、林業や茶摘みの仕事は他の土地の人に仕事として雇い、自分たちはその人たちを受け入れ、毎日忙しくもてなしていたそうだ。
川道さんは、龍山に移り住んできた「移住者」である。だからこそ、この土地のよさや大変さ、特殊さに気付く。ここに移るにあたって、そうやって外の人を受け入れてきた寛容さや、自分たちで生き抜く術を持っている人たちを尊敬できることが大きかったそうだ。
「山の道」は林業には欠かせない。地図を見せていただくと毛細血管のように細かく幾重にも分かれる道がたくさん山の中にある。
舗装されてない道はアトラクションのようにぐわんぐわんと上下し、水害で道がなくならないため、わざと溝が出来ており、より揺れが激しくなり笑いが止まらなくなる。
木が倒れ、それ以上車では進めないため、獣道をあるく。鹿が通る道だ。鹿は朝下まで降り、餌を食べたあと、昼間は寝ているそうだ。よく見ると足跡や、上りやすそうな場所に踏み固められた通り道が出来ている。
龍山の杉林は優秀でしっかりと間伐されている。そのため山の中でも、日の光が差し込む。そのコントラスが、鹿の子模様らしい。鹿が山にカモフラージュするためにそうなったとか。
鉄塔の周りは木が無いから見晴らしがよい。ウサギのフンもあった。土は粘土質で、スギとヒノキの葉が落ちふかふかしている。また落ちた枝が乾燥して踏みしめるとポキポキ折れる感触が非常に心地よい。スギの木の皮はスベスベしていて、ヒノキはケバケバしている。断面は真ん中がピンクの円になっているのがスギ。
冗談のように、わかりやすく書かれた「山の神」。どの地区にも祭ってあり、しっかりと手入れされている。石碑には「慶応」の文字が。
「散弾銃」を見せていただく。狩猟は獣害を守るためという風潮があるが、誤解を招かずにいうとしたら「大人の遊び」であるそうだ。確かに「白鳥の湖」のジークリフト王子がオデット姫に出会うのは狩猟に出かけたためだった。(たしか結婚を勧められ、くされて下部を連れて出かけたんだったかな。)9つに分散するタイプ、1つで攻めるタイプ、BB弾が飛び散るタイプがあるらしい。きっとジークリフトはBB弾を持って行ったに違いない。
「山の墓」と呼んでいる場所。カルスト台地みたいで、お気に入りになった。
下山すると、「解体見る?」
もちろん「はい」
(閲覧注意。という言葉を使いたくないが、「肉」になっていく過程の写真があります。)
3日くらい前にとった鹿を水に漬けたのがあったそうだ。今日は撃ってなかったからお目にかかれないと油断していたので動揺したが、ここではめいっぱい山の話を聞いた後だったので、怖さはなかった。
メスの鹿。きれいな顔。この時期、ダニは少ないらしい。
哺乳類なので、人間と同じ構造をしている。余分なものがが無く、あばらは薄い。一人で捌く川道さんをぼーっと突っ立ってみていたが、捌きにくそうだと思い、脚を手で掴む。美しい筋肉で、グロテスクさとは程遠い。解体ショーという言葉とも違う。ただ、命を頂く。捌く側も力仕事だ。筋膜から剥がして皮を取っていく。
肉になる。焼く。皮も利用する。
言葉にしてしまうと、とても簡単かもしれない。少し嘘っぽい気もする。
ただ、そこに、生きるための暮らしがある。
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