わたしの好きな字書きさん
「文章が好きだ」と言いながら、わたしはほとんど小説を読まない。芥川賞とか直木賞とかその他諸々、書店に推される話題作にもだいたい興味を惹かれなかった。
おそらくわたしが物語のストーリーをそれほど重視していないのが原因だろう。わたしは小説を読んでいるとき、登場人物の波乱万丈な人生を追うのではなく、その端々で飾られる美しい文を掘り探している感覚だ。
例えば作家がふと何気ない1行に、わたしの文章的嗜好ど真ん中を貫く文を入れてきただけでその作家のファンになれる。何度も何度もその1行