マガジンのカバー画像

創作「星に願いを」

3
シリーズを投稿順にまとめています。ひと続きではありませんが、ひと繋がりになったお話。幻想的。
運営しているクリエイター

2021年7月の記事一覧

創作|星廻りの天使

 きらり、と白い光を残して1等星が落ちていく。星座の端でぶら下がっていた星はたった今に軸を抜け、定められた座標から雫のように零れていった。  届きもしない手を伸ばす。しかと抱きしめ、守りたかった。守らなければいけない星だ。この手のひらも身体も翼もそのためにある。  春の宵闇、全天21あるはずの1等星が空からひとつ、姿を消した。  それを追いかけ、星廻りの天使がひとり、消息を絶つ。  次に目覚めた部屋の中は、決して明るいわけではなかった。窓枠には何枚もの木の板がぴったり打