(読書)おつかれ、今日の私。 ジェーン・スー
ジェーン・スーさん。
友人は、彼女を「時のひと」と呼ぶ。
わたしは、時のひと、というブームでは終わらないひとのようにおもうがどうだろう。
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スーさんのエッセイを読むのは、今回が初めてかも。
以前、「生きるとか、死ぬとか、父親とか」を読んだけれどあれはエッセイというよりものがたりだとおもう。
今作品は、時はコロナ前からコロナ禍。
だからか、前半と後半の語り口調や内容がずいぶん違う。
あとがきによる『後半』は、労りの気持ちを込め、読み手の隣に座っているような、背中をさすっているように書いた。とあった。(うろ覚え)
わたしは、後半の部分がすきだ。
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実は、わたしは、スーさんをあまり知らない。
桜林直子さんと一緒におしゃべりしている「となりの雑談」を聞いているだけだから。
スーさんの書いている文章は、おしゃべりの時と同じリズムだった。
だけど、おしゃべりの時のように感じる、パワーみなぎる感じではない。
自分のダメなところや醜いところ、おそらく人が隠したがるようなことをあえて書くひとだ。
それがどこかでこの本を読んでいるひとの心にコミットする。
わたしもそのひとり。
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本書で印象に残ったのは、『疲れ』と『弱り』の違いについて書かれていたこと。
わたしにとって、疲れと弱りはイコールだ、と思っていた。
けれど
スーさんは、ちがうと説く。
疲れは、肉体的なものや精神的なもので、休めば回復できるけれど、
弱りというのは、いくら休んだところで回復しないというのだ。
確かにわたしはこの夏、ある出来事から回復できずにいた。
その時は、傷つきすぎて疲れたのだ、とおもっていたのだけど、
この本を読んでから傷跡を眺めると、弱りだったのだな、とわかった。
『弱り』
なかなか疲れと見分けがつかないらしい。
また
それに対して効果的なものはないらしく、
ズバリ効くのは、「自分を甘やかす」ことなんだそう。
スーさんのお気に入りの方法は、ちょっと贅沢なバスソルトでゆっくりお風呂に浸かって、その後いい匂いのするボディローションで身体をやさしくマッサージして、清潔なお布団にくるまって休むのだとか。
じぶんのために「自分を甘やかす」方法をいくつか見つけて、用意しておいたほうがいい。とも書いている。
なるほど、やってみる。
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スーさんは、わたしよりもずっと年上なのかと思っていたら、案外年が近かった。
スーさんの明るさとパワーのなかに秘められた繊細さがすてきだ。
これからも読みたい作家さんのひとり。