見出し画像

2020.01.13_Mon:規約改訂比較表の作り方

1. 前回のエントリーに引き続いて、管理組合業務に役立つIT講座である(笑)。今回は、管理組合の規約細則の変更方法についてのテクニックの話。最も,内容をどういう風に改訂するかという話ではない、それを始めると本が1冊書けるからね。

焦点を当てるのは、規約細則の改訂前後の比較をどのように見せるか? という話である。いわば、管理組合総会議案の別表(新旧比較表)の作り方だ。こういう表は、表計算ソフトで作成した方が後々便利。規約細則の改訂作業自体は、変更履歴が必須なのでワープロソフトを使うことになる。

新旧比較表と言えば、「読みやすさ」を優先すべきと言う議論が目立つが、改訂する側からすると、「作りやすさ」が最優先だ。うちでいうと、200ページ近い規約細則を、
1) 内容全部見直して、
2) 用語を統一し、
3) リファレンスチェックして、
4) レイアウトをあわせ、
5) 新旧比較表を作り、
6) 改訂場所の解説書いて、
7) 議案書にまとめる
という作業を行う必要がある。慣れた私でも2ヶ月はかかる。

経験ない人はもっとかかる。それなのに、「誤字脱字がある。もっとちゃんとやれ!」なんて上から目線の区分所有者がいて、「そんなにいうのなら、おまえやれよ!」と言いたくなる(このあたり、個人の偏見と愚痴)。大人だから、いわないけどね。

以前に弁護士さんに報酬聞いたら、「内容見直しだけで、60万円は、もらいところですね」といっていたので、全部外注すると、200万円くらいの作業かな。

さて、ネットで検索してみると、そのものズバリではないが、似たような事例を扱っている法令の改訂解説のサイトはある。参考になることも多いが、やはり法令と管理組合規約は違うので、わかりやすく表示するには、いろいろと工夫が必要だ。とはいえ、参考になる部分を少し引用してみよう。

2. 改訂後の文章だけを示すという方法がある。俗に「改め文」という。一部を改訂する法令が、『第○条中「△△△」を「×××」に改める。』というように規定されることから生まれたのだが、一部改訂は、「改める」だけではなく、「削る」、「加える」ことによっても行われるので、その総称でもある。また、法令では一覧表を添付するやり方もある。次の例での1)が「改め文」である。

1) 「『』・・・・・・理事または監事(以下、理事と監事をあわせて「役員」という)になる・・・・・・』という部分を、『・・・・・・役員になる・・・・・・」と改める、
2) 本文は、「改め文」であるが、一覧表を別表として添付する
という2つのやり方がある。以下では、一覧表前提として議論を進めていく。

一覧表はFig. 1のようになることが多いと思われる(思われるというのは、私は使わないから)。すなわち、現規約と改訂案両方をべた書きにするのである。

Fig. 1

画像1


この欠点は、「どの箇所を、どういう風に改訂したのか、一見しただけではわからない」ということで、読む方が比較しなければならない。

作る方は楽だが、その分読む方に負担を強いているのである。「不親切だ」と言われても仕方ないだろう。この方法を行政等がまだ用いているとすれば、傲慢だと非難されてもやむを得ないと思う。

3. これを改良したのが、Fig. 2である。改訂案に改訂箇所をまとめて表記することによって、わかりやすくするという方法である。

Fig. 2

画像2


1)削除場所は打ち消し線を引き、
2)追加部分には下線を引いて、明示している。

さすがに一つのカラムに両方あるとうるさいという感じは否めない。作る側とすれば、ワープロソフトの変更履歴を残したまま、改訂案のコラムに貼り付ければ良いので、楽なんだけどねえ。

4. やはり新旧対照表を用いる方法では、訂正前の条文と訂正後の条文を比較して、どこをどう訂正したのか、わかりやすく表記するのが良い。

作り方についてのある自治体のガイドラインを引用してみよう。
1) 追加:文中に文言を追加した時は、追加した文言に下線を引き、備考欄に(追加)と記載する
2) 変更:文中に文言を変更した時は、新条文と旧条文の変更した文言両方に下線を引き、備考欄に(変更)と記載する
3) 削除:文中に文言を削除した時は、新条文と旧条文の削除した部分に(削除)と記載し下線を引く。また、備考欄に(削除)と記載する。
4) 新設:文中に新規で一文を追加した時は、追加した一文全体に下線を引き、備考欄に(新設)と記載する。
5) 省略:文中の文言に変更がない場合は新条文、旧条文、備考欄それぞれに(略)と記載する。

この書き方のサンプルを探してみると、Fig.3が見つかった。行政のサイトではないが、上記ガイドラインを忠実に再現した表と言って良い。(ただし、新旧記載欄が逆。個人的には旧を左側に、新を右側に持ってきた方が、読み手の視線が左から右に動いて楽だ。右から左に視線を動かすように要求する横書き文書の作り方は、不合理だと思える)
http://shinkyutaishohyo.com/write.html

Fig. 3

画像3

この形式の問題点としては、以下を指摘しておく。
1)変更前と変更後の改訂場所に両方とも同じ下線を引くだけで、それが削除なのか、追加なのかは備考欄を見なければわからない。
2)「備考欄」記入が面倒。しかも、どういう改訂かを分類しなければならない。
3)前記1)のために、視線が左右に行き来するので、読む側としては混乱する。
4)作る側としても、ワープロの変更履歴の仕様を変更しなければならない。

さらに、備考欄に「追加、変更、削除、新設、省略」などを書いてもうるさいだけで、ちゃんとした表になっていれば、一目瞭然だと思う。どうも行政というのは、「帯に短し、襷に長し」としか思えないような基準が多すぎる。

5. そこで、工夫して
1)現規約側には削除する箇所だけを、
2)改訂案の方には削除部分は削除し追加・改訂した
状態で一覧表にすると、Fig. 4の用になる。実は、うちのマンションの新旧比較表はこの方式が長かった。これは、見やすくかつ改訂案のところが新たな条文になるので、そこだけ読んでいけばいいという利点がある。

Fig. 4

画像4


欠点もある。作るのが面倒だ。作り方としては、
1)ワープロソフトの変更履歴を示したまま、現規約・改訂案両方のカラムにコピーする。
2)削除部分を一括して削除できるマクロはあるので、改訂案を得るには楽だ。
ところが、下線部分を一括して削除できるマクロがいくら探しても見つからない。

削除部分を一括して削除できるマクロで、削除部分の代わりに下線部分を指定すればできると思って、改造してみたが下線部分だけではなく、セル全体が消えてしまう。いろいろ探したが、見つからなかった。

となると、少なくとも下線部分は手作業で削除せざるを得ない。10行くらいならともかく、A4で200ページに渡るような作業の時は、面倒。実際、2019.06の民法改正対応のための管理規約細則の改訂作業の時に、管理会社のフロントに作業させたが、全然できなくて(それも不思議だが)、結局自分がやる羽目になった。しんどかった。

では、作る側にとって最善の方法はあるのか? 考え出したのが、次の方法である。

(ここから有料)

ここから先は

616字 / 1画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?