英語的表現:和文英訳の時には思いつかい英語っぽい表現

私の今年の目標は、英文記事/論文を読むことに対するアレルギーの軽減。好き嫌いは変えることはできないけれど、職業柄、英語で読むことに対する抵抗は少しでも減らさねばなりません。そこで、毎日最低一つはニュース記事を読むように心がけてます。

見出しから記事の内容が推察できるかどうかを訓練したり、知らない単語を拾い出して類語、同義語、反対語を調べてみたり、モチベーションはまちまちですが、単に横文字に目を慣らすだけではなく、英語学習の興味をそそるような事も追加して自分を奮い立たせています。

英文記事を読んでいると、なかなかこういう表現は自分では思いつかないなという文に出会うことがあります。A4 で2-3ページ2000語弱の記事の中でもせいぜい一握りの表現なのですが。

今日もコロナの話題。ブラジルは、P1という変異種が猛威を奮っているらしく、コロナ再感染による医療崩壊が問題になっています。今現在、世界で展開されているワクチンがこのP1にも効果があるのかは確認できていません。感染者から検体を採取して、ウイルス株を同定しないと、元の株なのか、イギリス株なのか南アフリカ株なのかブラジル株なのかがわからないからです。コロナ陽性を検査するだけでも追い付いていないのに、株の同定にまで手が回らない、ワクチン接種も進んでいない、ボルソナロ大統領はコロナを甘く見くびっている。既に十数か国で確認されているこのブラジルP1株が世界中に広まってしまう可能性も脅威です。

という内容の記事なので、全文を読みたいかたは下記のリンクからどうぞ。NYタイムズの記事です。https://www.nytimes.com/2021/03/03/world/americas/Brazil-covid-variant.html

例文1:No other nation that experienced such a major outbreak is still grappling with record-setting death tolls and a health care system on the brink of collapse.

こういうNoの使い方は英語特有ですね。私たちはつい Only Brazil is still grappling with record-setting death tolls とか Other nations are not grappling with record-setting death tolls any longer と書いてしまいそうです。Other nations are no longer grappling with record-setting death tolls. が思いつけば、すばらしい!のレベルです。それをNo other nationを主語にしてしまうのはさすがネイティブ。

例文2:That danger of new variants has not been lost on scientists around the world. 

ああ、この to be lost on (人)というイディオムは教科書には出てこなかったかも知れませんね。でもイディオムこそ上手につかうととても英語らしい表現にすることができます。"I'm lost.”(迷子になった)という表現は知ってますよね? "You lost me."(あなたの話について行かれなくなった、あたなの話が理解できなくなった)という表現も聞いたことがあるでしょう? You lost meは You were lost on meと書き換えることができますと言えば、種明かしになったでしょうか。私たちはつい Scientists around the world have not understood that danger of new ariants.と書いてしまいそうです。あえて受身形にしているのに、この英語らしさ! 主語の選び方の大切さについては、私の講義でよく強調するポイントの一つですが、その説明はまた別の機会に。(この例文をDeepLで和訳したら、『新しい亜種のその危険性は、世界中の科学者が失われていませんでした。』だったので、上級レベルの英語だったのかも知れません。)


例文3:... we stand to completely lose the hard-earned ground we've gained. 

このto lose groundも、英語らしいイディオムの例です。それがhard-earnedで更に強調されていて、しかも単にwe will lose the hard-earned ground やwe are likely to lose the hard-earned groundではなくwe stand to lose the hard-earned groundとしたところがさすがだなと思うわけです。私のようなノン・ネイティブには絶対に思いつかない表現です。

例文4:But limited resources for testing have kept them (scientists) behind the curve as they try to determine what role it (the variant) is playing.

behind the curveもイディオムですが、ここではkeepという使役動詞が英語らしさを強調しています。Have、keep、 make、 letなどの使役動詞が使えるようになると、英語らしさが格段にアップします。

Themとitを代名詞のままDeepLで和訳してみたら『しかし、テストのための限られたリソースは、それがどのような役割を果たしているかを判断しようとするために、カーブの後ろにそれらを維持しています。』となってしまいましたが、scientistsとthe variantで置き換えてみたら『しかし、テストのためのリソースが限られているため、科学者たちはバリアントがどのような役割を果たしているかを判断しようとしています。』と和訳結果が出ました。どちらも誤訳です。『科学者たちはその変異種が果たしている役割を突き止めようとはしていますが、テスト用のリソースが限られているため(その作業は)追い付ていません。』という意味です。

DeepLやGoogle翻訳、みらい翻訳などの機械翻訳とプロの翻訳との違いについては、また別な機会で議論しましょう。

この他にもto set the stageto curb contagionなどの表現も目に尽きました。今回は、なぜかイディオムが印象に残った記事でしたが、英文を読む時には内容の理解とともに、英語表現も参考にすると、英語学習のモチベーションが上がるかも知れません。


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