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ガラスの動物園

昭和のアングラ演劇を甦らせるような演出でさすが上村聡史先生だ!と感じました。
登場人物それぞれが沸点に達した時に、それを超えてしまうのではなく、一旦音楽で抑えるといった演出が取られており、観客は気持ちを整理しながら話を追うことができました。
そして、美術も音楽も照明も最高でした。
照明の沢田祐二先生の照明は、芸術的で、水色や茶色が融合して照らされた舞台自体が絵画のように美しかったです。
また、岡田将生さんや堅山隼太さんは本物のタバコを吸っており、そのタバコの臭いもが作品の一部のなっている所が、アングラ演劇を生で感じた気がしました。
本当の家族を愛していても、分かち合えない家族の葛藤を表現したテネシーウィリアムズのこの戯曲そもそもがとても素敵な作品ですが、その人間のもがき苦しむ所まで美しく見えてしまうのは、俳優たちの演技、演出、照明、美術、音響といった芸術が組み合わされるからこそだと改めて感じました。

岡田将生さん
まず、生で岡田将生さんを観ることができて嬉しかったです!
一つ一つの仕草から、家を出たいけれど、姉ローラの事を一番に想う弟トムの本来の美しい心が表現されていました。
母と言い争いになり家を出ようとするが、それを見て泣き崩れる姉を見て蹲ってしまうシーンを観て、心が熱くなりました。彼のセリフから自由、幸せとは何かについて考えさせられました。

倉科カナさん
倉科さんが演じるローラは、幼い頃から足が不自由な事から、自分を過小評価してしまい何事もすぐに諦めてしまう少女ですが、ガラスの動物たちには心を開きます。
しかし、ガラスの動物たちの世界、彼女が考える世界はとても狭く、誰も彼女の足の障がいを気にしていない。
それを知った彼女が、だんだん心を開いていく倉科さんのローラに心打たれました。

麻美れいさん
宝塚歌劇団のトップスターの品格で、存在感が凄かったです。
子供たちを深く愛しすぎる故に、子供たちを束縛していく母親の葛藤が伝わり、衝撃を受けました。
麻美さん演じるアマンダの「人生って上手くいかないものね」というセリフが人間の生きにくさを観客に訴えており、深く印象に残りました。

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