この感じ何かに似てる2選

電車の中でスマホを見るのにも飽きた時。ドアにもたれて立ちながら、みっちり埋まった座席の端からパッと見で勝手にご年齢を順に唱えるという、非常に失礼な暇つぶしを行うことがある。
一人あたり大体1.5秒でメトロノームのようにテンポ良く、考察は厳禁。誰かといるときには行ってはいけない、完全に一人遊びである。
目視できる範囲が終わると2巡目を行うのであるが、おそらくさっきと同じ数字を唱えられてはいない。そのことに、何て適当なこと考えてるんやろう、と笑えてくる。

この感じ何かに似てるな。

あっ、検診やわ。

私は歯科医師として、歯科検診のバイトに出向くことがある。
企業などの社員さんを診る場合は比較的ゆるやかなのだが、学校検診は結構大変なのだ。
何百人という学生さんが次々並び、数時間ぶっ通しで歯しか見ないので、目がしぱしぱしてきて、まじで歯がゲシュタルト崩壊してくる。

明らかに虫歯が一本もない綺麗な場合、そして明らかに大穴があいた虫歯と言える場合は楽なのだが。
大体ミラーしか置いてないから、お昼ごはんであろう黒ゴマみたいなんが詰まってる時。これは除去可能か否か。
奥歯の溝が黒い時も判断に困る。虫歯としてしまうか、要観察にするか。

その場限りの見た目だけで、しかもまさにメトロノームのようにテンポを崩さず判断しなければいけない。それが歯科検診。
よって、同じ子がもう一巡してきても、思考力の低下してきた状態で先ほどと全く同じ結果を言えるかどうかは恥ずかしながら自信がないのである。
それに黒ゴマやったらもう取れてるかも知らんやん。ねぇ。

ちなみに一番面白かった学校検診。ブースに入ってくるなり
両目コンタクト入ってます！
と元気に言われたこと。

＊　＊　＊

先日友人の結婚式に出席するため、ヘアセットを式場に近い美容院で予約した。
ホットペッパーで探して初めて伺ったのだが、めちゃくちゃオシャレでキラキラした店内…今ドキって感じの美容師さんばかり。うぅ、ちょっと尻込みしてしまう。あと、めっちゃ良い匂いしてる。
案内された椅子に座り、ふと鏡越しに目が合ったのは。
背中合わせに座っておられる70代ぐらいの、、おじいちゃん。残存するのはサイドの髪のみ。
どこまでも失礼なのを承知で申し上げるのだが、明らかに浮いておられる。
最初はお孫さんか誰かの付き添いかな？とも思ったのだが、カット台に座っておられる姿は堂々たるもの。
やがて担当の美容師さんが来られたので耳ダンボで聞くと、いつもの様にとにかく短くして下さい、とのご注文。
分かりましたー、ちょっとこの辺は刈り上げる感じにしますねー。
何とも常連感のある会話であった。

この感じ何かに似てるな。

あっ、リコールのおじいちゃんやわ。

勤務先の医院にて、残存歯1本で月1回律儀に口腔ケアに来られるのだ。
何とも意識が高くて素晴らしいのであるが、ケアの時間よりも義歯を超音波洗浄にかける時間の方が長くて気まずい、と衛生士さんがいつも嘆いている。