見出し画像

この国のお手洗い

日本のトイレは世界一だと思っているのは、私だけではないはず。海外の知人とも、“日本のトイレはハイテクだよね”って会話することさえある。汚いところを綺麗にしようとする、その心は素晴らしい日本の文化の一つだと思う。今日は、私が足繁く通うこの国のトイレ事情についてお伝えしたい。

まずどんなお手洗いか。種類は3つ。

1つ目:どっぽん便所 これはローカルのお手洗いで1番見かけるタイプ。穴があるだけというよりかは、白い便器があるが日本の和式トイレの前のカバー部分がないような形をイメージしてもらうとよいかと。カバーがないので、便器の周りが排泄物で汚れやすい。水が流れないせいか、トイレの脇に蛇口とバケツが置いてあって自分で流す式であることもあり、兎に角足元が濡れていて不衛生。このタイプのお手洗いに遭遇した時は、個室に入った瞬間から密かに私とお手洗いの戦いが始まっている。因みに… 個室の鍵を閉めた瞬間と書きたかったが、鍵がかからないこともしばしば…

2つ目:洋式トイレ ローカルお手洗いでこのタイプに出会うことは滅多になく、ホテルのお手洗いはこのタイプが殆ど。見た目は、読んで次の通り洋式トイレ。日本でも見たことのあるトイレ。但し、日本の様にハイテクではない。

3つ目:洋式トイレwithout便座 これは、ローカルお手洗いで偶に遭遇する。どのように使ったら良いのかわからないので、これしか選択肢がない時にしか使ったことがない。私は、腰を浮かして座ったような体制で使ったが、これが正しいかはわからないし、できれば使いたくない…

この国で1つ目のトイレを使う時、私は毎度何故このような不衛生なトイレであり続けるのか考えてしまう。これまでに私が出した要因は2つ。

1つ目は、外界からの視点の欠如。お手洗いは汚く、使い勝手が悪いのがデフォルト。海外のお手洗いを使用した経験がないから、使い勝手が悪いとも思わないし、改善しようと思わない。

2つ目は、ジェンダー。お手洗い環境を設計したり、便器を設計したりするのが男性ばかりで、ユーザーである女性が意見が欠如している。女性は不便で、不衛生と思っていてもその声が届かない。

私はこの2つの要因が相互に関係しているとも思う。外国人も利用するようなレストランや空港、外資系のホテルは洋式の綺麗なお手洗いであることが多い。それに、この国には先進国へ留学・出張・旅行する人もいる。女性も然り。だからこそ、快適なお手洗いの経験のある一部の女性は現地でノーマルのお手洗いが、不便であることに気づいているのではないだろうか。しかし、不衛生で不便なお手洗い環境に責任のある人たち(男性も女性も)には、その意識がないから変わらないのではないだろうかと推測している。

一方で、私がこのようにこの国のトイレ事情を残念に思うのは、こちらの価値観の押し付けなのだろうと思う点もある。ショッピングセンターなどでは、トイレ掃除用員が常駐しており、かなりの頻度でトイレを綺麗にしてくれていることも珍しくない。ある時、移動中のガソリンスタンドでお手洗いをお借りした時、例の如くトイレ掃除用員の方が私が使う前に掃除をしてくれた。トイレの個室に向かって、ざばーんとバケツいっぱいの水をぶっかけると、何食わぬ顔で"ready"と案内をしてくれた。衝撃である。これが掃除なのだ。確かに、ぶっかけた水は、便器の周りの汚れなどと一緒に便器の穴へ流れていく。確かに綺麗になってはいる。

確かにトイレ掃除用員さんの立場で考えたら、このお手洗いの方が勝手が良いのだろう。私は、このお手洗いを使い勝手だけの観点だけで評価してはいけないのだ。代わりに、とは言え、物事の評価視点を多様化させること、自分の知っている方法を多様化させることは重要だよね、と自分に言い聞かせ納得させた。

とは言え、私はこの国のお手洗い事情に発展があると期待したい。
私が小学生だった頃、即ち15〜20年前は、駅も学校も高速道路SAのお手洗いも公園のお手洗いみたいに暗くて汚いイメージだった。しかし、今はSAも駅も公立の学校でも綺麗なお手洗いは珍しくないと思う。この国が経済発展するにつれ、トイレ掃除用員さんの仕事は悲しいが消えてゆくだろうし、代わりに日本のTから始まるトイレメーカーさんも進出する可能性もあるだろう。どんな発展を遂げるか非常に楽しみである。

P.S. 
私は経験したことがないが、この国のお手洗いで生理を経験しなければならないと思うと本当に大変だと思う。ほとんどのローカルお手洗いには、トイレットペーパーが設置されていないし、個室内にサニタリーボックスも設置されていない。現地の女性はくるぶしも隠れるぐらいの丈で、着物の様に体に巻きつけたボトムスを着ているので、経血が服につかない様になどと気を回さなければならないだろうと推測する。
こうした大変さは男性に伝わるのだろうか。現地の女性も当たり前と思っているのかもしれないが、これは当たり前ではないと気づいてもらえると私は嬉しい。そして、男性には女性のそうした見えない大変さに気づいてもらえると、非常に嬉しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?