【東南アジア27】駅、王宮、ムエタイ
一人になった気楽さから、9時過ぎまで寝ていた。
映画『戦場にかける橋』の舞台になったカンチャナブリに行こうと思っていたのだが、これでは電車に間に合わないかもしれない。
バンコクでは渡し船が公共機関になっている。チャオプラヤ川を船で渡り、トンブリー駅へ向かった。
やはり遅かった。すでにお目当ての電車は行ってしまっていた。仕方ない。予定を変更して、王宮にいくことにした。
とぼとぼと歩いていたら、タイ人が話しかけてきた。
「リーと申します。銀行員です」
僕に何の用があるのか。
「私は将来ガイドになりたいと思っています。あなたのガイドをさせてもらえませんか? もちろんお金はいりません。私の経験のためですから」
ガイド志望の素朴なおじさんだ。ガイドだけなら別にいいですぞ、とお願いすることにした。
確かに、ガイドは下手だった。
名所を前にアピールすべきことが、すっと言葉になって出てこないのだ。あー、えーと戸惑いの時間が流れる。
素人ガイドを前にすると、いかにプロが淀みなくガイドしているかがよくわかった。やはりどの世界もプロはプロたる所以がある。
リーさんは何度も言い直しながら、僕をガイドした。適切な言葉が見つからず、苦々しい顔をする姿からは、この人真剣なんだなあと思った。ひとまわりも年下のくせに大変失礼だが。
ガイドはスラスラといかなかったが、王宮近くのワット・ポーのお釈迦様には驚いた。
お釈迦様が寝ちゃっているのも驚きだが、そのサイズがまたすごい。寝ているのに高さが15メートル。横たわる長さは、なんと46メートルだという。ウルトラマンよりでかい。
巨大な足の裏には、108の宗教画が描かれている。右下の人の頭が米粒くらいに見える。
そもそも何で寝かせちゃったんだと不思議だったが、お釈迦様の入滅の時だそうだ。多くの弟子に囲まれながら最期を迎えたそうで、なんとも安らかな表情なのがいい。僕もこんな最期を迎えたいものだ。
その後、すぐ近くにあるタマサート大学でご飯を食べた。
日本同様タイでも学食は安いらしく、学生以外でも普通に食べていいそうだ。女子大生に囲まれながら、昼食をいただき、リーさんとおわかれした。
ガイドはたどたどしかったが、終始親切なリーさんだった。ぜひガイドになる夢を叶えてほしい。
夜は念願のムエタイ観戦に行った。
ルンピニーより格上? とも言われる、ラチャダムノン・スタジアムへ。
試合前からすごい人だかりだ。
チケットは金網の3階席。
通常、外国人観光客は1階のリングサイド席を案内されるそうだが、希望すれば、3階席でも問題ない。もちろん安い。
3階から、リングを見下ろす。この段階では外国人観光客もちらほらいたのだが、試合が始まりだすと誰もいなくなっていた。現地の人たちは賭けをしているので、ヒートアップするから危険だと言うことらしい。
試合開始。
賭けた選手が攻撃するごとに歓声があがる。試合中も賭けができるようで、賭けを仕切っている男だけは、リングを背に忙しなく騒いでいた。
後半の強豪選手が出てくると、試合前のワイクルーの踊りから大盛り上がり。噂通り観客の熱狂はすごかった。
ただ、肝心の試合は、地味だ。
防御技術が発達していることもあるだろう。首相撲があるので、選手が密着している時間も長い。あと多分賭けの対象になっているから、賭け金を引っ張り上げるため、試合を長引かせる傾向にある気がする。KOはほとんどなかった。
昨日までと違い、一人になると行動が途端に質素になった気がする。
そしていよいよ明日で、東南アジアの旅を終える。
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