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小松未歩さんの『あなたのリズム』は変われていない弱さがあると気づく話

 前回の『手ごたえのない愛』からだいぶ時間が空きました。書きたいことはあるけど、不思議なことに書いてるとしっくりこなくなってきて、また考えては書き直し、を繰り返し…。自分でも困ってしまいました。

 そんな今回のテーマは小松未歩さんの2ndアルバムの6曲目である『あなたのリズム』です。

 さて…。この曲で何が困るかというと冒頭のこの歌詞。

 もし目が覚めたら世界中の秘密握ってて

いきなりの仮定の話から始まります。しかもなぜそんな事を言い出したのか。全くもって意味不明。まあ、続きを見てみましょう。

 心の通わぬ会話から 欲しいものを強請る  神様ちゃんと罰を下してよ ダークグレイの空を見上げ

ときます。「強請る」と書いて「ねだる」漢字で表記するほうが何というか迫力ありますね。脅している感があるというか。世界中の秘密を握ってる人間が「ねだる」のなら漢字表記が似合いますね。

 で、秘密握っている側からしたらそれを材料に強請るなんて容易いこと。なんの感情もなくできます。そのうえで、神様に罰を下してよと「ねだる」のです。神様の秘密までも握っているという、とんでもない「もしも話」です。

 ただし、妄想はここまで。続く歌詞は悟りに入ります。

 いつもなにかから逃げ出してた 見つけられない この時空じゃ もう

 世界中の秘密を握るなんていう妄想は、現実(何か)からの逃避なわけです。でもそんな妄想(この時空)に身を置いても答えは見つけられない、と気づくわけです。

 では答えて何か、というとあなたと仲直りする方法。何かの拍子で軽くとはいえ喧嘩になり、あなたに対して面白くない気持ちになり、つい妄想の世界に逃げてしまったわけです。1番におけるサビの前はこんな感じですね。では2番はどうか。

自分以外の誰もがみな輝いて見えて 間の悪い事ばかりして 弱音を吐いた 妬嫉み誹られるくらいなら 孤独のほうが100倍まし 自由って実はこんなもんだね 簡単すぎて見落とすところよ

2番の始まりもなんだか楽しくないですね。弱音を吐いてます。そのうえ「妬嫉み誹られるくらいなら〜見落とすところよ」と強がってます。弱音を吐いてしまったけど、あなたに弱いところを見せたくないと思い、つい出た強がり。1番ではなにかから逃げ出し、2番では他人との比較で落ち込み、虚勢を張る。

 出逢えたから変われたの

と曲中で言ってますが、1番、2番のサビ前の歌詞において主人公は自分の中にはまだ弱さがあるという現実を知らしめられているわけです。

 ならば、変わったと言ってるけど変わってないかといえばそうではなく、あなたに出逢えていなければサビ前の状態で終わっていたのが、妄想から飛び出して現実を生き抜こうとしたり、弱いところを見せまいと虚勢を張っていたのが、その弱さを受け入れてくれるあなたがいることで虚勢を張らず自然に素の自分を出すことを良しするように思えるようになったわけです。

 恐らく、この二人はまだ出逢ってからそんなに時間が経っていない、フレッシュな彼氏彼女の間柄だと思います。なのでまだ主人公は変われた部分とそうでない弱い自分とのせめぎあいに悩むことがあると思います。

 ただ、付き合いを深めていくうちに変われた自分の強さが、変わらなくある自分の弱さを凌駕する時がきっと来る。この曲はなんだかそんな雰囲気があります。

 変われたと思っている自分とまだ弱さを抱えている自分。そのバランスが個人的には大変面白く感じますがいかがでしょうか?

 今回の『あなたのリズム』は以上です。次回は『1万メートルの景色』で語ります。よろしくお願いします。

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