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ミュージカル「おとこたち」

 なんだか…、人生をいくつも生きた気分。でも「人生」って、最後まで行きてみなければ、それが、本当にいい人生か?なんてこと、分からないよな。

 「社会」で勝っているように見えても、その「人生」がほんとうに素晴らしいのかは分からないし、一見負けてるような「人生」も、それは、ほんとに自分らしい生き方なのかもしれない。

 要は、その人が、それでいいと思えば、それでいいということだけど、なかなか、そういうわけにもいかない。

 やりたいようにできる、自分のすきなように上手くいくなんてこと、そんなにありっこないから。

 なんか、そういう、なるようにならなかったり、踏んだりけったりなんだけど、でも、そういうのが「人生」なのかもしれない。

 ってことを思った舞台だった。


 「おとこたち」という題名なんだけど、「おんなたち」の人生もあって。

 ユースケ・サンタマリアさんは、淡々とした人生の「山田」なんだけど、やはり、主人公としての存在感があって。岩井さん曰くのラッピー(ラップじゃなくて、ラッピー。ラップだとノリノリの感じ過ぎちゃうから、ラッピーって言って、語りの中から生まれてくる音楽のイメージ)のセリフが、ずっと頭から離れない。

 その山田が、老人フォームに騙されて入ってくるシーンから始まるんだけど、「男の人」って、自分から老人フォームが必要だと思う人が少なくて、老人フォームのボランティアすると思って入所してきて、いつの間にか自分が介護されてるパターンが多いんだって。岩井さんがその実話を元に再現したらしい。こういう、ちょっとした「人生」のヒズミが散りばめられている感じ。

 どっからどこがジェンダーの問題で、どっからどこが個々人による問題なのかわからないくらい、いろいろなものが重なりあっていて、よくわからなくなるのだけど。

 アルコール中毒も、DVも、不倫も、自殺も、信仰も、愛への依存も…社会のヒズミから漏れ出てきている訳だから、やはり、問題は確実にそこにたくさんある。

 そういうのをどかっと渡されて、「じゃ、どうする?」って言われている感じ。どうしようかな。このまま受け入れることもできるし…でも、捨てちゃうこともできるよね。みたいな。

 「混沌」とした社会を、単純化してわかりやすく秩序をつけると、とても安心なんだけど、そのまま「混沌」として描くのって、逆にすごくないか?

 

 たまたま、吉田鋼太郎さんも観劇にいらしてて、最後ひとりでスタンディングオベーションして、「素晴らしい、ブラボー!!」って言って拍手されていて。なんだか、それはそれで、舞台の続きみたいで、美しかったな。



 

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