銅の相場がどうしたって?中国の国家備蓄放出が要因ではないですよね
(令和4年4月26日一部内容改訂)
金属スクラップ業界では、この話題『銅の相場、高値から1割低下しちゃったね。どうやら、中国政府の備蓄を放出したことが、関連ある“らしい”』が耳目を集めております。
なぜならば、スクラップ自身の値段も、金属製品同様、国際相場の影響を受けるからです。そして、銅の取引価額は、他のベースメタルのそれに比べ割高です。つまり、おそらく巷の一般スクラップ業者の売り上げの多くを占めているわけです。(鉄を除く、いわゆる“非鉄”カテゴリーにおいて。)
具体的には、国際相場に対し、為替、スクラップとしての取引料率、歩留まり率を考慮した上で、諸掛り(加工費、輸送費、保管費)等々を差っ引いたものが、スクラップの流通単価として機能しています。そこに様々な思惑やら駆け引きが存在し、実際の“相場”が形成されます。
中国のせいじゃないよね
確かに、中国が「戦略物資としてのベースメタルを“相当量”備蓄しているらしい」とは、常々言われてきました。2019年3月頃、中国で製造された電気銅(きれいな銅板)は、盛んにシンガポールや米国向けに輸出されていたと記憶しています。足元の状況に関しては、そこまで懸命に、電気銅の輸入に力を入れていないような情報を見聞きします。
https://www.michiru-resources.com/2019/03/pour-water.html
そう考えると、中国政府が、電気銅を備蓄することに執心していたのは、おそらく2020年前半ではないでしょうか。同年後半以降は、銅の精錬コスト(きれいに磨き上げるためのコスト)が劇的に下がり、アフリカを中心とした権益鉱山のプロジェクトが花開いていました。その当時、銅相場は、現在の半分程度。そこまで泥臭く動かなくても、ある程度の“玉”を確保できる状況に持ち込むことができていたと思います。
https://www.michiru-resources.com/2019/10/oneroad-africa.html
彼の国は、現物在庫を積み増し、有事に備えるという“建前”ありながらも、がっつり儲けたわけです。国内経済に落ち着きが見え、インフレ傾向が見えたところで、利益の確定している備蓄在庫から、一定量の現物を放出する。至極当然の動きがなされています。
一部の業界関係者の中には、「たかが〇トンだろ。相場に影響与えないし」と豪語される方もおりますが、筆者としては、「影響がないと知って、そこまでやるか?」と考えざるを得ません。そして、次回の放出は、日程と物量まで、前もってアナウンスされています。明らかに、なんらかの“思惑”があって、このような施策をとられているわけです。
もうひとつ、斜に構えた言い方をしてしまえば、「これまで、中国政府がベースメタル在庫を放出したことはなかったのか?」ということです。前例のないことであれば、“要因”であるといった断言も納得できます。ただ、今般の事象に関しては、本質的な部分で、「大国の在庫放出→市中在庫増加→相場下げ」といった短絡的な動きとは、また一味違った展開が、もっと“根深い”部分で繰り広げられていたのではないか、そのように邪推しています。
もうジャブジャブ終わりよ
じゃあ、なんでこんなに相場が動いたのかといえば、世界的に「そろそろ、金融緩和を是正しないとね」という合意形成というか、論調が強まったことで、世界的に「一部の市場関係者が利益の確定に走った」だけに過ぎないのではないでしょうか。ひとつの潮目が終わり、次の潮目に適応できるよう、各々が調整しているわけです。
相場に限らず、当金属スクラップ業界においても、「なんか、これまでとは違う潮風が吹いている」なあと感じるし、「益々、大手の寡占化が進む」なあとも考えています。どんどん検収基準が厳格化し、それに伴って、コモディティ化が加速します。参入者が増え、過当競争に陥ります。
https://www.michiru-resources.com/2018/05/smell-something-bad.html#more
変なハナシ、手前筆頭に、中小零細企業は、この“ジャブジャブ相場”に生かされていたわけです。これまでは。今後、現物スクラップ、資金一般においても、流動性が悪くなることは容易に想像できます。相場が上がっても、競争に勝たなければならないし、売れなければ、在庫として積み増さなければならない。おそらく、これ以上、無尽蔵に相場が高止まりすることは考えにくい。そして、相場が下がっても、今ある在庫は売ることができない。
近い将来、「本当に儲かっている事業」と「そうでないもの」の選別が明確になされると思います。正直、怖いですね。