第32回あはき療養費検討専門委員会 議論まとめ(2024年4月26日開催)

あはき療養費の令和6年改定の基本的な考え方(案)について
配布資料は以下。
第32回社会保障審議会医療保険部会 あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会配布資料

あくまで公開された資料のみを基にした考察です。

あはき療養費の令和6年度料金改定(案)について

①改定率
②往療料の距離加算の廃止
③往療料の見直し及び訪問施術料の創設
④往療料と施術料の料金包括化の推進
⑤離島や中山間地等の地域に係る加算の創設
⑥同一日・同一建物への施術
⑦物価高騰等への対応
⑧その他の見直し
⑨引き続き検討事項

①改定率

改定率は+0.26%。慣例通り医科の半分である。柔道整復の方でも書いた通り、すでに厚生労働省内で予算が決まっている以上、慣例を破ることは難しいと考えている。ただし、あはきについてはこの慣例を破ろうという意見はあまり聞かれない。

②往療料の距離加算の廃止
③往療料の見直し及び訪問施術料の創設
④往療料と施術料の料金包括化の推進

1.往療料の距離加算は廃止
2.往療料は施術料と包括化され、訪問施術料に
3.突発的な往療が発生した場合に算定できる「往療料 1回2,300円」が新設
→医師との連携が必要であり算定の要件は資料には未記載
4.往療内訳表はなくなり、記載内容はレセプトに反映
※10月1日施行

往療料は料金改定ごとに見直しが進められてきた。議論の根底には施術料よりも往療料の方が高くなってしまっており、往療料を稼ぐために往療施術をしているような、本来のあり方とは違ったものとなっていたことがあった。このため、徐々に距離加算がなくなっていったが、令和6年の料金改定ではついに廃止に至った。
また往療料の距離加算の廃止とともに議論されてきたのが、往療料と施術料をセットにした訪問施術料の創設である。詳細な料金は資料をご確認いただきたい。

訪問施術料の創設に伴い、往療料は突発的に発生した場合のみの算定できることとなった(以下、新往療料 1回2,300円)。これまでの議論で指摘された新往療料の算定にあたって医師と連携すべき、という点は資料には見当たらないため、おそらく委員会の中で議論され、通知発出の際には盛り込まれるだろう。

④は往療料と施術料の料金包括化である。厚生労働省の資料のままだと、今回の料金改定では見送られた部位数による料金包括化と混同する可能性があるので追記している。また訪問施術料創設により「往療内訳表」の記載内容を支給申請書に反映させ、支給申請書のみで審査できるようにすることとなった。このため、療養費支給申請書のレイアウトが大きく変更される。
施術者にとっては支給申請書に添付する様式が減るのはうれしい。だが、ここまで大きな変更となると、これまで様式変更の際の定番だった、移行期間を設けてその間は従来の様式を取り繕って使用することは難しい。施行となる10月1日までに、多くのレセコン会社が新しい支給申請書に対応させる必要がある。

⑤離島や中山間地等の地域に係る加算の創設

・特別地域加算 1回 250円
※10月1日から施行

往療料の距離加算が廃止されると、離島や中山間地等で医療を受けられない患者が出かねない。このため、必要な施術を受けられるように創設を検討してきた。
特別地域加算(1回 250円)として創設され、訪問施術料+特別地域加算、または施術料+往療料+特別地域加算となる。あくまで往療料の距離加算廃止にともなう創設のため、患者が通院する場合は加算できない。

⑥同一日・同一建物への施術

・2人目からも訪問施術料として算定可能に
※10月1日から施行

同一日・同一建物で施術を行った場合、往療料は1人分のみ算定でき2人目や3人目の患者分は算定できない。これを訪問施術料を導入した際には訪問診療や訪問看護を例に、2人目からも訪問施術料を算定できるようにすることが検討されてきた。
訪問施術制度の導入されることにより、往療した人数に応じて1人、2人、3~9人、そして10人以上で区分けされ、新たな料金体系が設定されることとなった。
なお、料金の詳細は資料をご覧いただきたい。

⑦物価高騰等への対応

保険施術分は、物価や燃料費が高騰しても価格に上乗せできない。このため、医科と同様に物価や燃料費高騰対策として料金改定に盛り込まれた。
また、あはきの施術所でも令和6年4月からスタートした、オンライン資格確認などの医療DXへの人件費などとして料金改定に反映された。
なお、料金の詳細は資料をご覧いただきたい。

⑧その他の見直し

あはきの施術管理者の更新制は、柔道整復で導入されていないことから実施しないこととなった。

⑨引き続き検討事項

次回に向けて、今回見送られた部位数による料金包括化が検討・議論される。この部位数による料金包括化は、1部位の施術だろうが、5部位の施術だろうが同一の料金に包括してしまおうという考え方。
調査時点での平均部位数で金額が決まると言われている。例えば平均が4部位だった場合、少なくとも次の料金改定までの2年間は1部位のみの施術であろうが、4部位の料金で固定される。
このため現状は平均部位数が多いことから、施術者側は今回の料金改定で導入したかったようだ。
一方で、支払い側である保険者側は平均部位数が少ない時点での導入を望んでおり、今回の料金改定での導入には反対してきた。
結果としては、訪問施術料の新設という大きな改定を行うことを考慮し、厚生労働省は部位数による料金包括化は見送った。次回の改定時はこちらがメインテーマとなるだろう。

また引き続き物価や燃料費の高騰による影響、訪問施術の実態を調査していくことなどが含まれている。

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