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とあるAVショップで外国人と涙を流した話

女風セラピストのサイと申します。今回は、AVにまつわるエトセトラをお話していこうと思います。※創作ではありません

大学2年生の頃でした。

医療系の講義のテスト勉強で生体分野の専門書が必要になり、駅前の書店に探しにいったんです。でも探しても探してもまったく見つからない…。何軒も回って疲れていたのを覚えています。

明日までに見つけなきゃならないのに、どこにもないから自棄になって萎えていると、ふと目の前に怪しげなAVショップがあるではないですか。(そのころ住んでいた街には大きな夜の繁華街があったんです)

AVはよく見ていましたが、意外とAVショップには行ったことがなかったんですよね。全部FANZAでみれるし。なので、興味本位で入ることにしたんです。

入ってびっくりしたのは、裸の女たちが苦しげな顔をしているAVのパッケージではなく、そこに外国人がいるシュールな空間の方でした。

何やら喋っていますが、英語は前から得意だったので、彼らが何を話すかはだいたい理解できます。

外人A「おお、この女優、ネットで見たことあるぜ。オーラルが得意なんだよ」
外人B「ジャパニーズガールも悪くないな、今夜はたのしめそうだぜ」

わざわざ日本にまで来てAVか、と馬鹿馬鹿しくなり店を出ようとすると、隅のほうに外国人が一人、一本のAVを手にとって眺めていました。目頭を押さえ今にも泣きそうな顔をしていたのを覚えています。

がっちりとした体格の、30歳くらいのその外国人は、AVを手にするというよりも、大きな掌で握り潰しそうなくらいの勢いに見えたので、僕は不審に思って少しそばに寄ってみました。

"What’s the matter?"(どうしたの?)

僕が英語で話しかけます。外国人は大粒の涙を流しながら、

"Do you know her? This is my wife."(彼女を知っているか?俺の妻なんだ)

と言って、AVのパッケージに写る、大口を開けて精液を顔にあびた格好の外国人女性を指差しました。

詳しく話を聞いてみると、この外国人は、自分の妻が日本でAVに出ているという噂を母国の友人から耳にし、おどろいて来日したのだと言う。きっと自分の稼ぎが悪いから、異国の地でこんな仕事をしているのだろう、といよいよ号泣しながら彼は語っていました。

僕も人間です。一緒に泣きました。世の男たちは、こういうものを見て興奮し、満足するのだろうが、オカズにされる本人の気持ちを考えたことはあるのだろうか。いくら金のためとはいえ、汚らしい男優に好きなようにされ、一生懸命演技をする。そこに人間の尊厳などあるのでしょうか。彼の奥さんは、汁男優に精液をかけられている間、おそらく夫の顔を頭に浮かべていたであろう…それを思うと、涙が止まらなくなりました。

心配した店員に声をかけられ、われに返った僕は、むせび泣く彼を慰めようとして、

「人生山あり谷ありですよ。いいこともあれば悪いこともあります。次はきっといいことがあるから、前を向きましょう!グッドラック」

というようなことを言い、コーヒーをおごるから外に出ようと促し、涙でぬれた手で握手を交わしました。

彼の妻が出演したAVを購入して処分するつもりでレジに持っていった僕が、パッケージに写った汁男優が知っている男優であったことに気づいて閉口したことも、その後連絡先も交換せずコーヒーも飲まずに帰ったことも、そんなことはどうでもよいのです。

大切なのは、東京のAVショップで異国人との間に新たな友情が生まれたこと。それで十分ではないでしょうか。

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