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探究テーマ(2020年)

研究テーマ
1)社会のパラダイムシフト(社会変革)論
2)コモンズを媒介とした協働と連帯を育むような社会統合論(物質面からのアプローチ)
3)規範(べき論)からの自由論(心理面からのアプローチ)
4)方法論としてのインパクト投資・社会的連帯経済・社会運動・市民運動
5)社会契約論における企業
6)仕事の未来(Future of Work) 人間、労働、土地の脱商品化


研究の動機
・前職ILO・現職SIIF、そもそも学生時から探究してきたことで、社会をより良い方向に変革(transform)するために、学術面でも知の生産者となりたい。社会哲学・社会思想・社会契約論をベースに、学際的な環境に身を置きたい。理論面での研究では、なにかの問いへの答えを得るよりは、社会に対して投げかけるような思索的(Speculative)な問いを産出することを目的としたい。
・目指す社会像(ビジョン)は、
最終:人間中心で、多様な在り方に寛容で、一面的な社会規範を生成・内面化しない社会
中間:社会正義に立脚した成熟した、連帯的市民社会(Informed Citizen based on Solidarity)
初期:多様な在り方が可視化・価値化され、あらゆる資源が循環する社会(Ecosystem Building)
・社会構成員(人間)を中心としてあらゆる作用が有機的に機能することで、多様な価値が可視化され、あらゆる資源が循環し、成熟した市民に支えられるような社会が形成されていくように思う。人間中心の仕事の未来でいえば、さまざまなライフイベント(出産・子育て・疾病・高齢化等)や、さまざまな属性(女性・高齢者・外国人・障害者・LGBT等)に対して、仕事の世界が包摂的になる、誰もが働きやすい生きやすい社会の実現ということになろう。

研究のテーマ
1)社会のパラダイムシフト(社会変革)論
問い:社会のパラダイムシフト(社会変革)が起きるための条件やプロセスはあるのか?
研究要旨:トマス・クーンの科学のパラダイム論との対比で、社会のパラダイム論を考えたい。社会のパラダイム(常識の総体)に対して、どのようにしてアノマリー(変則性)を伴った事象が起きて、パラダイムシフト(大転換)が起きうるか。目指す社会像(ビジョン)の初期、中期、最終と到達するための示唆を得たい。
鍵概念:パラダイムシフト、パラダイム、アノマリー、革命、価値観変容、イノベーション、技術革新、規範、逸脱、差異
領域:社会思想、社会哲学、社会学、社会システム理論、新実在論、
キーパーソン/参考文献:ニクラス・ルーマン『社会システム理論』、マルクス・ガブリエル『なぜ世界は存在しないのか』、デイヴィッド・ピーター・ストロー『社会変革のためのシステム思考実践ガイド』、保井俊之(慶應・SDM)、Stanford Encyclopedia of Philosophyの関連記事

2)コモンズを媒介とした協働と連帯を育むような社会統合論(物質面からのアプローチ)
問い:資本主義と共存しつつも、経済的価値以外の多様な価値や在り方が可視化され、あらゆる資源が循環するために、ローカルで非市場経済型でコモンズを媒介とした協働と連帯と民主主義を育むような社会統合の様式はどんなものか。
研究要旨:カール・ポランニーは社会統合のパターンとして、「交換・再分配・互酬」をあげたが、それに「創造・包摂・淘汰(および可視化)」の要素も加えて、地域の持続可能性を念頭に置いた、コモンズを媒介とした協働と連帯と民主主義を育むような社会統合の様式について考察したい。
鍵概念:交換(自助)、再分配(公助)、互酬(共助)、創造、包摂、淘汰、持続可能性、社会的連帯経済、協同組合、労働統合型協同組合、プロシューマー(生産・消費者)、社会統合、ブロックチェーン、スローライフ/スローフード
領域:資本論、経済思想、社会的連帯経済
参考文献:カール・ポランニー『大転換』(Karl Polanyi "The Great Transformation")、堂目卓生『アダム・スミスー「道徳感情論」と「国富論」の世界』、ジェレミー・リフキン『限界費用ゼロ社会』、キャロル・ローズ「コモンズの喜劇」、エノリア・オストロム、Next Commons Lab、Plus Social Investment、ハルキゲニア・ラボ(SIIF)、佐藤優

3)規範(べき論)からの自由論(心理面からのアプローチ)
問い:人が規範を内面化していくメカニズム・プロセスはどのようで、また一度内面化した規範から自由(unlearn)になるメカニズム・プロセスはどのようなものか。
研究要旨:シモーヌ・ドゥ・ボーボワールの言葉、「人は女として生まれるのではなく、女になるのだ」に表されるように、人は生まれてから様々な社会規範・行動規範を学習し、内面化していく、良い面としてはそれによって社会秩序が生まれる、悪い面としては規範から逸脱したときに他者への中傷や自己への非難として作用する。異なる在り方、多様な在り方に不寛容で、一度レールを外れたら自己責任になる社会。そして人々がこんな不寛容な社会規範を学習し、内面化し、また不寛容が再生産されるような社会。そしてこの規範は個々人の学習・内面化を通して、世代を超えて再生産されつつも、時代時代で変容もしていく。人はあらゆる側面で標準仕様にできてはおらず、どこかを切り取れば逸脱をしているものだ。私たちにかけられた長年の呪い(悪作用する社会規範)から自由になるために、多様な在り方を受け止め、ひとりひとりが自信をもって表現していく。
鍵概念:社会規範、行動規範、社会的合意、規範意識、内面化、逸脱
領域:心理学、社会心理学、発達心理学、インテグラル理論
参考文献:Ken Wilber、加藤洋平、Axelrod, Robert, 1986, “An Evolutionary Approach to Norms”, American Political Science Review,
Stanford Encyclopedia of Philosophy https://plato.stanford.edu/entries/social-norms/https://courses.lumenlearning.com/alamo-sociology/chapter/social-norms/

4)方法論としてのインパクト投資・社会的連帯経済・社会運動・市民運動
問い:労働者・投資家・消費者・有権者としての市民からのボトムアップで社会を変革する方法にどんなものがあるか。
研究要旨:民主主義的でボトムアップ型の社会変革の方法論を考えたい。組織論と運動論の観点から、有権者であり、消費者であり、労働者であり、投資家でもある、あらゆる「選択行動」を日々行う市民の諸活動の集積から社会変革に結び付けたい。具体的には、インパクトマネジメント、(個人による)インパクト投資、社会的連帯経済、リテラシー教育を軸に考える。
鍵概念:インパクト・エコノミー、インパクト投資、インパクトマネジメント、成果連動型事業(SIB/PFS)、社会的連帯経済(SSE)、協同組合、人間(労働)・土地の脱コモディティ化、パブリック・リテラシー教育、市民社会
領域:インパクト投資、社会的連帯経済、社会運動論、市民運動論、消費者運動論、組織論、市民教育
参考文献:Peter Utting ”Social and Solidarity Economy: Beyond the Fringe”
http://www.unrisd.org/80256B3C005BCCF9/(httpPublications)/89748F9EB30DE128C1257E0E004889D4
GSG “Impact Investment: the Invisible Heart of Markets”
https://gsgii.org/reports/impact-investment-the-invisible-heart-of-markets/

5)社会契約論における企業
問い:社会契約に企業を埋め込んだときに、本質的な意味での企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility、CSR)とはなんであるか。
研究要旨:ポスト資本主義といわれる中での企業の役割とはなんであろうか。コミュニティ・社会・地球の持続可能性に対して、企業が負っている本質的な意味での企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility、CSR)とはなんであり、企業自身どのように長期志向・ステークホルダー志向への変容を経ていくことができるのか。また、国際開発分野における、これからの企業の役割とはなにか。総じて、企業の未来を考える。変革の方法論としては、資本主義システムを一定所与のものとして、企業の行動変容について①長期志向(Shift from short-termism to long-termins)、②ステークホルダー資本主義(Shift from shareholder capitalism to stakeholder capitalism)の2点をどのように実現させるかの示唆も得る。
鍵概念:社会契約論、企業の社会的責任、企業、企業の未来、Privatization of Development, Business and SDGs, Public-Private Partnership、Business Methodology for UN Projects:Social Marketing/Branding、Future of Work/Enterprises、beyond CSR, beyond conventional PPP, beyond Global Compact, consumer education, reputation mechanism, social investment
領域:社会契約論、
参考文献:“Future of Enterprises – How does it look like? Organizational Structure and Functionality” (in draft)

6)仕事の未来「Future of Work」- 人間、労働、土地の脱商品化
問い:労働の脱商品化につながる、仕事の未来はどのような世界か。
研究要旨:ILOで従事した『仕事の未来』イニシアティブの延長戦
鍵概念:労働の脱商品化、コモンズの脱コモディティ化、労働社会学、人間中心(Human-centred)、国際労働機関、労働・雇用、仕事の未来
領域:労働社会学、産業社会学、労働経済学
参考文献:ILO Future of Work Commission “Work for a brighter future”
https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---dgreports/---cabinet/documents/publication/wcms_662410.pdf
Future of Work in Japan - the applicability of the Recommendations in national contexts
long working time and karoshi -> ULG, time sovereignty, working time convention
declining the share of labour income (cost)
labour polarization ; full time vs part-time on wage and working time
female trapped into irregular and precarious employment
poor integration of labour immigrants (the problem of Technical Intern Training Program)

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